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ソーラ:終わりは太陽の下で!!

ソーラEND

 太陽が真上に輝く時刻・・・・外にいるだけで煮えたぎりそうなのは近年の地球温暖化の所為に違いないだろう。そんな日に好んで外の公園にいる子どもたちはいない。今頃クーラーの効いた涼しい室内でゲームなり何なりしているに違いない。アスファルトに卵を落とせばおいしい目玉焼きの完成が期待できそうな公園に二つの人影があった。


「・・・・零時君、どうかしたの?今日は暗いけど・・・・?」


「ああ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ・・・」


 二人して汗をかいておらず、この真夏の太陽も彼らを取り巻く景色の一つでしかなかった。太陽は静かに輝いているだけだ。


「言えないのなら話さなくても・・・。」


「・・・これをいえないとさ・・・俺、迷っちまう気がするんだよ。」


 少年はそう答えて座っていたブランコをこぎだす。まるで自分の考えを更に揺らしていくかのように・・・・。


「・・・・そう?それなら一緒に私も迷ってあげる。」


「・・・・いや、俺が迷ってるのは・・・。」


 少年は口ごもり考えをまとめる。それに共鳴するようにブランコも動きを止め、そして再び話は振り出しに戻った。少年はまた、黙り込んでしまったのだ。


「・・・・・二人で迷えば一人のときより早く答えに向かえると思う。私に話してくれないかな?私、何でも出来るよ!!だって、私は魔法使いだから・・・・。」


 ブランコに座る隣の少年を見て少女は告げた。その答えに少年の優柔不断な心は動きを止めようとしているブランコになっていた。


「・・・あのさ、ソーラは俺とずっと一緒にいてくれるのか?」


 少年は隣に座る少女の顔を見ることが出来ないでいた。なぜなら、拒否されたときに自分の表情を相手に見られたくないから・・・・


「・・・ダメって言ったら零時君、どうする?」


「俺は・・・・・さぁ、わかんない。」


 少年は再び黙り込んだ。そんな少年を太陽は明るく厳しく照りつける。


「でもさ、それって所詮はifの話だよ。」


「え・・・?」


 ブランコから少女は飛び降りてゆっくりと少年の前に歩んできた。不思議そうな顔をする少年に答える。


「もしはないよ・・・・・今は今なんだから・・・零時君は聞いてるんだから・・・私は答えなきゃいけないんだ。当然、私はずっと零時君の隣にいるつもり。」


 はにかみながらも少女は少年に告げた。少年には赤く染まった少女の顔が暑さのためなのか恥ずかしさからくるものなのか判別できなかった。それほど、彼は混乱していたのだ。


「あ・・・俺・・・・」


 少年は普段は微妙に鋭い目を大きく開けて相手を今日はじめてはっきり見た。


「零時君がようやく見てくれてうれしいよ。朝から、目、あわせてくれなかったからさ。」


 少女はその目をしっかりと見据えたのだった。その目が太陽のように輝いていたと感じる少年はしばし見詰め合って目を逸らした。


「別に逸らさなくてもいいのに。」


「い、いや・・・・なんだか・・・昨日からおかしくなってさ・・。」


 少年は首をかしげながらブランコから立ち上がり逃げようとした。勿論、少女がそれを許すはずも無い。


「ほら、詳しく話して?全部、私が聞いてあげるから・・・・。」


「・・・わかった。」


 普段から真面目である少女の前では微妙にあきらめ気味の少年も素直になるしかなかった。言葉を多く知っているわけではないが少年は信じることが出来ると思う少女に胸のうちを告げたのであった。


「・・・俺がまたそう思うようになるなんて思わなかったよ。」


「まぁ、確かに・・・でも、私が初めて零時君に会ったときはそうだったよ。」


「・・・・俺はもうあまり記憶が無いけどな。」


「そうだろうね、あの子・・・セレネももうほとんど覚えてないっていってたから・・・・でも、私は忘れることは無かったよ。だってさ・・・・」


 少女はふと見上げた先に輝く太陽を見つけ、目を細めた。少年は彼女の言葉を静かに待った。


「・・・・あれから少し大きくなって・・・・零時君を探すのをやめようと思ったことがあったんだけどさ・・・魔法使いならそんなことぐらいできると思ったんだよ。」


「・・・・・それで?」


 少女はどこからか古ぼけた写真を取り出し、少年に見せた。そこには少年の幼き頃のあどけない微笑が写っていた。


「・・・あの時写真なんて撮ってたのか?」


「ううん、瑞樹君から譲ってもらったんだ。私、小さい頃の零時君を知らないからね。」


 少年から大事そうに写真を返してもらい、少女は続けた。


「私さ、小さい頃は外を知らない子犬みたいだったんだ。太陽が出ている間は遊びまくって・・・といっても遊んでくれる相手は一人もいなかったけどね。だからさ、独りで遊ぶの。勿論、一人で走り回るだけ・・・・。」


 暗い話だが微塵も感じさせずに少女は続けた。


「でも、それでよかったんだ。ずっと独りでいるうちに太陽を知らなくなって夜中に遊ぶことが多くなったの。だって、友達いてもいなくても、独りならいつでも遊べるよね?」


「・・・・そうだったのか・・・。」


「それでね、泣き虫のセレネと遊んでいるときに瑞樹君にあって・・・私、零時君に会ったんだ。私はさ、独りで遊んでいてよかったと思う。」


 そう語る少女の瞳を少年は虚ろな自分の記憶の中のものと共有することが出来た。そして、呟く。


「ま、そのおかげで俺もソーラに会えたのかな?」


「・・・そうかもね?それでさ・・・今度、二人だけでどこかに行かないかな?こんな太陽の下でさ?」


 少年は頷いていった。


「・・ああ、でも・・・」


 そういった少年の前で立っていた少女はふらりと倒れ、受け止めた少年の腕の中で呟く。


「・・・帽子は持っていかないといけないみたいだね?へへ、受け止めてくれてうれしいよ。」


「このぐらいは当然だ。」


 少年は笑い、少女も笑った。輝く太陽の下、幼き日々を思い出す二人がいたのであった。


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