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セレネ:終わりは月の下で!!

え〜ENDシリーズ第一弾です。どのENDがよかったか教えてくれたらその人での続きのENDをもう一つ、書きたいと思います。

セレネEND

 夕方の海岸にはそこまで人がいなかった。既に月が出ているのでどっちかと言うと夜だろう・・・それなのにとある少年が未だに水の掛け合いをしているバカップルを眺めている。そんな彼に一人の少女が水をかけた。


「うわっぷ!!」


「ちょっと!きちんと人の話、聞いてる?」


 その場には不釣合いな存在で彼らは制服を着ており、砂山を椅子に座っている。微妙に場違いである二人をカニが無遠慮に見上げて去っていった。


「ええと、なんて言ったんだ?」


「あのねぇ・・・何で今日の補講が終わって急に海に行こうとか言い出してここに来たの?既に夕方だったのよ?よくよくみたら月が顔を出してるわ!」


「ほらまぁ・・・月が綺麗だし・・・。」


「・・・・これ、デートのつもり?」


「ええと、多分、デートだ。・・・・・なぁ、セレネ・・・・かけっこ、しないか?」


 いきなり提案した少年に隣に座っていた少女は変な顔をする。


「何でよ?デートでそんなことする?」


「ええとだなぁ・・・結構前に負けたのが悔しかったから特訓したんだ。それを試したい。」


「砂の上を走るのは得意なの?」


「いや、正直初めてだ。デートも初めてだ。バカみたいに緊張して、苦しいものだ。」


「じゃ、なんでそんなことするのよ?」


 不審者を見るような目つきで少女は少年を見やる。少年はためいきをつく。


「なんとなく・・・・だ。」


「全く、今日の零時はどうかしたの?いきなりデートなんかに誘って・・・・」


「・・・・ええと、ダメだったのか?」


「・・・・ま、いいわ。で?どうするの?」


「勝ったら負けたほうの心の悩みの話を聞く。」


「何か困ったことがあるなら私が話を聞くわよ?当然のように無条件でね。だって私は零時の師匠だから。」


 少女はそういって胸をドンと叩いた。少年は先程より暗くなった気がする。


「ドジだけどな・・・。」


「何か言った?」


「いえいえ、何も言ってません。」


「かけっこなしで構わないわ。早く話しなさい。」


「・・・・師匠を弟子が超えたら・・・・師匠は弟子からいなくなるものなのか?」


 少年はそういって傍らの少女を見る。少女は少しばかりぼうっとしたような感じでそれを見ていたが呟いた。


「そうね、いなくなるわ。教えられることがないからね。」


「・・・そうか。」


 少女は肩を落とした少年に再び水をかけた。


「・・・・うわっぷ!!・・・・へへ、涙の味みたいだな。」


「零時、あんた少しばかり悦に入ってない?」


「何でだ?俺がうれしそうにしているようにでも見えるか?」


「あんたが私を超えることなんてありえないわよ。なんでだって?簡単なことよ・・・・・私が再び零時を越えてしまえばそれで構わないからね・・。」


「・・・・・言ってることがわからんのだが?」


 少女は再び涙の味がする水を少年の顔にかけた。その目は燃えている。


「零時、あんたは私を超えることが出来ると思うの?」


「・・・・うん・・・嘘嘘!!俺にはちょっと無理かな?」


「そうよね。」


「ああ、そうだ。・・・・セレネ、悪かった。」


「わかればいいわ。さ、帰るわよ。デートなんて今度からいつでも行ってあげるわ。」


「そうだな・・・・・ありがとうな。」


 少年と少女は同時に立ち上がり、月の方向に歩き出した。いつもより月を大きく感じた少年は隣の少女に尋ねた。


「なぁ、月ってなんで綺麗なんだ?」


「簡単なことよ、大体の人は見上げてため息をつくわ。それで、今見えるあの月のこと、好き?」


「まぁな・・・。」


 少女は月がバックになるように少年の前に走り振り返った。


「・・・・それなら、今零時の目に映ってる月は・・・・好き?」


 少年は首をかしげ小さな声で言った。


「・・・俺はそんな風に輝いてる月が大好きだ・・・・。」


「え?なんていったの?」


 あからさまにからかい口調の少女に少年はそっぽを向いて黙って少女を追い越した。少女はそれを追いかけ、耳元で告げた。


「・・・弟子に師匠が甘えたって大丈夫だよね?」


「・・・さぁな?とりあえず弟子が師匠に甘えても罰は当たらないと思う。」


 月光に照らされた影はいつの間にか二つではなく大きな一つになっていたのであった。


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