ローザ:マスターなんて鉄分不足人間ですね。
今回は自信作・・・・だと思います。
二十九、
俺のちょっと運動不足な足が震え始めた。こ、これはお約束のお皿が足りないやつか?井戸に出てくる美人の幽霊さんなのか?あ、あわわわ・・・・。
洞窟のようなところなのでどこから聞こえてくるのかはわからない。俺はとりあえず扉をそっとだけ押してみると音もなく開いてくれたので急いで猫のように滑り込んだ。
そこにも金ぴかに光っているものがいっぱいあるところだった。カラスが見たら喜んで巣に持ち帰りそうだ。さて、これだけのものを売ったらいくらになるのだろう・・・・なんてことを考える余裕もなく俺は逃げそうになっている足を引きずるようにして奥へと進んでいった。足元は色々なもの(主に黄金色)が転がっていたりもする。
チャリ
「・・・・。」
俺の足が何かを踏んだようだ。音からお金のようなものだったのだが・・・・俺は右足をどかしてみるとそこにコインのようなものが転がっているのに気がついた。
「・・・・?」
それはナイフのようなもので傷がつけられており、そこには『7676』と削ってあった。不思議に思いながらもそのコインをポケットに忍ばせて俺は奥へと進むことにした。
奥までは一本道で奥に進むごとに両脇を占領している黄金の量が増えていっている。少量の光がかなりの反射をしており、普通の黄金ではない気がする。なんとなく・・・だ。
一番奥に巨大な金庫があった。その前にネイと思われる後姿が見えたので俺は声をかけようとしたのだがもしかしたらこの金庫の中に重要な書類があるのではと思い、黄金の脇に隠れた。隠れた黄金の仏像のモチーフはマッチョな人だったことを教えておこう。
「・・・・・お金は何も言ってくれない。そう思わない・・・?」
彼女の前にあるのは巨大な金庫だけだ。誰に話しかけているのだろうか?お皿幽霊?
「・・・・・金庫だって鍵がなければすべての敵・・・・でも、金庫は金庫なの・・・・黙っていないで何か答えたらどうかしら・・・・そこに隠れている剣山 零時?」
しっかりばれていた。さすがにこのマッチョ(うれしそうな顔)では無理だったか。
「・・・すみません、誰かと話していたと思ったので話しかけませんでした。」
「・・・・・あなた、この金庫の中が気になるんじゃなくて?」
「ええ、気になります。」
「正直で結構だわ。でも、残念なことにこの金庫の暗証番号はなくなってしまったの。記憶を消されちゃってね・・・・その番号を残しておいたものもいま私の手元にはない・・・。」
「地道に番号を探してみたらどうですか?」
「残念ながらこの金庫には魔法が掛かってて三回間違えたら二度と開かないわ。残り、一回なの。」
がっくりと肩を落として悲しみのため息をつくネイを見て俺はなんとなくセレネがクビになったときの光景を思い出した。どうやら心の中から悲しんでいるようだ。しかし、残酷のような話だが俺が何かできるようなことはない。出来ることは皿洗いぐらいかな?
「この金庫に入っているものって何ですか?」
「重要な書類よ。それだけ。」
それだけしか言わなかった。
「それで、私に何か用事があってきたのでしょう?」
「え?ええ、お食事ができたのでお呼びしました。」
「そう、それなら今から向かうわ。だけど・・・・・。」
そう彼女がそういうと右手を上げた。なにやら殺気立っているのがわかる。
「・・・・・奴らのスパイは必要ないの。悪いけどここで落ちてもらうわ。」
「!」
辺りの黄金が動き出し(マッチョも)・・・・彼女の右腕にまるで従順な犬のように急速に集まっていく。まるで魔法のようだ・・・・あ、そういえば相手は魔法使いだったかな?
『かねぇぇええあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
あっというまに俺の目の前に大きな竜(当然黄金)が姿を現した。体は黄金に輝いており、目は銀色に輝いているダイヤモンドでできているのだろうか?なんともまぁ、売りさばいたら面白いようにお金になるに違いがない。あひゃひゃひゃひゃ!!
「・・・・消えなさい。」
竜は右腕を俺がいる場所に振り落とし、俺は慌ててよけた。先ほどまであった黄金がすべて無くなっているのでようやく気がついたのだがこの洞窟はとてつもなく大きい。
「金に溺れし者の化身である貪欲なる黄金の竜よ・・・・そなたの欲を満たすものが目の前に・・・・・」
なにやら魔法使いが呪文のような台詞を言うと先ほどまで俺がいた場所にいた竜がさらに光りだした。こ、これが金に目がくらむという奴なのだろうか?
『かねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
全く持って嫌な叫び声だ。その声自体にも貪欲さが求められているな・・・・
「さぁ、お前の欲望を満たせ!!一瞬にして己の心を映し出せ!!」
『かねぇえぇぇえぇぇぇええ!!』
俺に向けて竜は右腕を振り落とす。慌ててよけたのだが俺がいた場所は今度は黄金に変わっている。もしもあたった場合は俺が黄金に?うわぁ、あのマッチョももしかして・・・
「価値は気にしないわ。あなたは単なる黄金に変わるの。一生、私のものになるわ。」
少しばかり憂いが混じった微笑をしながら俺を見てくるネイ。じょ、冗談じゃないぞ!!体が黄金になったら絶対に売っちまうに決まってる!!
「剣山 零時等身大黄金ver 一個限定」そんな感じに決まってる!!もしくは
「三号続けて付いてくる付録の黄金をすべてくっつけると等身大の剣山 零時が完成する!」っていう可能性だってある。もしかしたらここは下ネタに走って
「これが本当の○玉」っていうのかもしれんな。まちがいなくそのときは数量二個限定だろうな・・・。うう、考えただけでおぞましい・・・・。
「いやだぁあぁぁあ!!そんなことされるならもっと別なことして欲しいぜ!!」
こんなところで黄金にされてたまるか!!俺の価値はそこまで高くないぞ!!
「くそ、普通の魔法使いだって言うなら・・・」
かなり前の話だが普通の魔法使いは一つの魔法を使役中は別の魔法を使用することができない。つまりこの成金ドラゴンの攻撃をかいくぐってネイの元へ行って一撃の元に倒せばそれで終了!!よし、それでいこう!!つまり、特攻ってことだな。
俺は走り出した。夕日ではなく黄金に向かって・・・・ちょっとだけなら削っても文句は言われないに違いない・・・じゃなくて、ネイを倒すために・・・・。
「・・・・そこよ、お前の力を見せてあげなさい。貪欲なる心の持ち主!!」
お金=力・・・これは基本を忠実に守っている力関係の図式に違いない。しかし、俺的には次のような図式になる。金≦心=力。金っていうのは心を満たすものだと俺は信じている。つまり、金ではないものが心をしめればいいのではないのだろうか?
まぁ、世の中そううまくいかないかもしれないが・・・・気休めにはなるさ。
『かねぇぇぇぇぇぇ!!』
口から黄金の液体を俺に向けて吐き出す。俺はそれを傘を差して防いだ。あっという間に傘が黄金へと変わっていく・・・・だが、傘のおかげであっというまにネイの目の前へと着いた。後ろからは常に黄金の液体がかけられており傘を解くことはできない。
「・・・・さて、私の前までこれたのは褒めるけどどうするの?既に魔法使ってるわよ?」
「・・・・俺、残念ながら魔法使いじゃないんだよ。」
「ま、まさか・・・・」
「そ、魔法が同時に複数使用できる省エネアンド時間短縮できる古代魔法の使い手なんだ。残念ながらまだ正式に魔法使いってわけじゃないらしいけどな。」
俺は驚いているネイに左腕を向けた。地面から鎖が出てきて彼女を拘束する。そして後ろの黄金の竜にも同じように鎖で拘束する。相手を油断させるために今まで使わなかったのだが努力が報われた瞬間だと思われる。出し惜しみしたまんまじゃ意味ないからな。
「・・・・チェックメイトってやつだな。さて、これからどうする?」
「さすがマスター・・・やりますね。影から見てたけどこの前より強くなってます。」
いつの間にか俺の脇にはローザが来ており、うんうん頷いている。って、なんでここにいるんだ?ローザは別の場所に行っていたと思ったのだが・・・・・。
「何でお前がここにいるんだ?お前、他のご主人様のところに行かなかったか?」
「マスター、この姿を見てもわからないんですか?援護しに来たんです。」
メイド服ではなく黒竜の口から顔を出しており背中からは羽が生えていたり、腕にはつめのようなものがつけられている。この前見たときよりも人間に近づいているような感じだった・・・・ああ、なるほど・・・これが瑞樹がたまにつぶやいていた
「擬人化」という奴なのかもしれないな。何故、ボディーのみスク水を付けているのだろう?防水?
「・・・マスター、鼻血出てますよ?この姿に萌え〜を感じたんですか?」
「・・・そんなことよりティッシュ持ってないか?近頃鉄分足りてない気がするんだ。」
「残念ながら・・・・・ティッシュは持っていません。この爪を突っ込みましょうか?」
俺はなんとなく過激な格好のローザを見ないようにして縛っているネイを見た。相手も俺を見下ろすような目つき(いや、実際に鎖で上に上げているので見下ろされている。)で見ている。しばし睨み合った結果・・・・・彼女はため息をついたのであった。
「ふ、あなたの勝ち。好きなようにするといいわ。でもさっき言った事は本当だから・・・。三つのコインを見つけ出さないとわからないわ。」
そう、あの暗証番号がまだわからない。そして今度は俺がため息をついたのであった。
さて、どうだったでしょうか?前にも宣言したとおり、今回の章は短めですね。あと、気がついた方もいるかもしれないですがお手伝い長さんは別の小説に出ていた人です。まぁ、どうでもいいことですね。それでは、皆さんまた今度!




