ローザ:マスターなんて臆病人間
二十八、
その日の夜、俺は与えられている部屋(と言ってもトイレの隣にある物置のような部屋。)に戻って自分の時間をすごしていた。ちなみに、真面目な事をしている。
「しかしまぁ、学校行かない間もきちんと勉強していないとつらいものがあるな。」
俺が休んでいる間に間違いなく授業は進んでいると思うので自分なりに授業を進めておかないといけないと思ったのだ。いつ戻ることが出来るのかわからないからな。
そんな矢先に部屋をノックする音が聞こえてきた。
「マスター、入れてください。」
「開いてるから勝手に入ってくれ・・・ってお前と同じ部屋だぞ?」
俺の返答にローザがやってきた。すでに寝る準備をしている。ここでは俺とローザは同じ部屋なのだ。お手伝い長さんには兄妹だと偽っている。剣山 ローザと名乗っているので怪しまれそうだったのだがまぁ、疑われることなく今のところ安心して生活している。
「マスター、もう遅いので寝ましょうよ?顔が疲れているようですが?変ですよ?」
「へっ、疲れていないし、元からこんな顔だ。ローザが先に勝手に寝ればいいだろう?」
「・・・・マス!・・・おにいちゃーん、早く寝ようよ!」
「・・・。」
ローザが唐突に俺の呼び方を変えた。俺は何かが起こったのかと思ってあたりを見渡す。緊急時は呼び名を変えるらしい・・・そして、扉がノックされ俺は再び返事をした。
「どうぞ、あいてます。」
「失礼します。」
やってきたのはここのお手伝い長さんだった。名前は美奈さんというらしい。
「零時さん、ローザさん、急遽あなたたちに仕事ができました。ご主人様が帰ってきたのでのお手伝いをしてもらいます。それで、至急私とともにその部屋に向かってください。」
「わかりました。行くぞ、ローザ。」
「はい、おにいちゃん。」
彼女たちの前では完璧に猫をかぶっているような感じがしてならないがこれは芝居なのだ。ううむ、俺は素なのにローザ芝居として俺にべったりとくっついてきている。
「ふふ、仲がよろしいのですね?うらやましいですよ。」
「・・・・お兄ちゃんは大事ですから。」
白々しい・・・俺は気がつかれないように流し目を送ってやった。ローザは舌を出して鼻で笑いやがった。まぁ、それはいいとしてお客さんなんて始めてくるからちょっとだけ不安だな。がんばってみるか・・・・。
「では、この部屋にいるので二人ともよろしくお願いします。では、私は食事を取ってきますので。くれぐれも失礼のないようにしてくださいね?」
そういって美奈さんは調理場のほうへ歩いていった。ローザは我慢していた俺にティッシュを渡しながらつぶやいた。俺はせっせと鼻にティッシュを詰め込んでいる。
「・・・おかしいですね?今日の予定に帰ってくるなんて書かれてませんでしたよ?」
俺は更に手渡されたティッシュを詰め込みながら答える。
「確かに、今日の予定表にはなかったな。でも、唐突に帰ってきてもおかしくないと思うんだが?とりあえず失礼のないようにするんだぞ?」
「わかりました、マスター!」
俺とローザは恭しくノックをして扉を開けた。俺の顔はできれば見られたくないのでローザの後ろに隠れるようにして様子を伺った。さて、はじめてみるご主人様だな・・。
「・・・失礼します。」
部屋にいたのはこの前見た三人組だった。どうやらここのゲストであって持ち主ではなかったと思ったのだが違ったか。さてさて、本当にこの三人が本物かどうかそれはさすがにわからないなぁ。でも、まぁ・・・単純明快な問題は好きだな。
「・・・・・ネイ姉さま、私この別荘なんだか嫌いだわ。久しぶりに来たからかしら?」
「そういわないの。この別荘にだって意外とお金が掛かっているんだから。」
「そうだなぁ、私もなんだか気に入らないところあるんだよねぇ。この雰囲気とか・・・。」
「ネイ姉さま、私、『大鏡の間』に行って来ますわ。」
「私も『厳格の間』に行って来る。」
呆然としている俺の目の前で彼女たちはさっさといなくなってしまった。俺たちはさっさと脇によけ、残った少女はため息をついて俺たちを招き入れた。見た目、俺とあまり歳が離れていないような感じを受ける。右手に持っているお札のセンスが目を引く。
「ごめんなさいね、見苦しいところを見せてもらって・・・・。」
「・・・・。」
「私も今から用事があるのでここのお掃除をお願いできるかしら?あと、私たちの仲があまりよくないのは先ほどの光景を見ればわかると思うけど他言しないでもらえるかしら?お給料を上げるように管理している上のものに言っておくから。私は『黄金の間』に行ってるから何か用事があるならそこに来てもらえる?」
「わかりました。」
彼女も俺たちの前から姿を消し、俺とローザだけが残った。ローザは俺を見上げてつぶやいた。俺は鼻からティッシュを取り出してとりあえずポケットの中につっこむ。
「・・・・あっさりと侵入できちゃいましたね?」
「・・・・そうだな。でもまぁ、ここに書類があるかはわからないからな。とりあえず・・」
さて、まず俺たちがするべきことは書類の隠されていそうな場所を探すことだ。俺が中で探している間ローザは部屋の掃除をし始めた。二人で探していると誰かが来たとき対応ができなくなってしまうからだ。美奈さんがまだ来ていないので好都合だ。
「マスター、何かありましたか?」
ベッドをどかして掃除をしているローザが呑気にそんなことを聞いてくる。
「いや、どこにもないなぁ、一体全体、どこに隠したんだろう・・・。」
「ネイという人は失くしたと言っていましたから複雑奇怪なところに管理しているんではないんでしょうか?たとえば、天井裏とか心の扉にしまったとか・・・。」
ローザの戯言につきあってはいられないので考えてみた。この部屋にある家具はベッドが三つにクローゼット、テレビ、大きなテーブルあとは化粧棚ぐらいなものだろうか?どれも物を隠せるようなスペースはないとは言い切れないので念を入れて探している。
「実際、私たちが探すよりも専門の業者でも呼んで探してもらったほうが良いんじゃないんですか?ええと、電話帳はどこにあるんだろう・・・・。」
「それができれば俺たちはこんなところにいねぇよ。ま、ここにあるとは考えにくいからなぁ・・・・ローザ、今日のところはさっさと掃除して部屋に戻ろう。撤収だ。」
「そうですね、この部屋結構使われているみたいですけど・・・きれいですね。私たち、ここにまだ来たことありませんよね?一度でいいからこんなところにすみたいなぁ。」
無駄なことをしゃべっているローザに曖昧に頷いて俺も掃除に加わった。そして、扉をノックする音が聞こえてきた。なんとなく、ベストタイミングという気がしたのだが・・・。
「ネイ様、おられますか?」
美奈さんの声だったので俺が代わりに返事をする。ローザは一人でぶつぶつ言っている。
「あ、零時さんでしたか。」そういう美奈さんに事情を説明した。彼女は唸り俺に告げた。
「そうですか・・・・・すみませんが三人に食事をお持ちしたことを伝えてきてもらえませんか?一人一人がそれぞれに伝えにいけばよろしいのですが?」
「わかりました、俺はネイ様にそう伝えてきます。」
「では、私はティフル様に伝えてきます。」
「じゃ、私は筋肉馬鹿・・・じゃなかった、フォルス様に伝えてきます。」
俺はとりあえず先ほど聞いたこと場所のことを美奈さんに尋ね、その場所に向かうことになったのだがその場所は地下にあるそうだった。しかも、別々の場所から入らないといけないそうだ。なんか、ややっこしい屋敷だな・・・・。それに夜中だからなぁ・・・・。
俺が向かうこととなった『黄金の間』はAの区域の地下にあるそうだ。無駄に広いので駆け足でその先へと向かっていった。既に夜の闇に包まれているので探すのにちょっとだけ手間取ったのだが入り口は伝えられていた噴水の近くにあり、地下に続く階段が口をあけて俺を待っていた。そして、この日の夜に俺のお屋敷生活にも変革が訪れた。
「ここか?」
俺はきょろきょろあたりを見渡したのだが暗闇に包まれた辺りには誰もいなかったので確かめることもできなかった。まぁ、それはいいとして懐中電灯が壊れてしまってなかったのでちょっとだけ怖かったが暗闇の中に一歩を踏み出したのであった。懐中電灯は先ほど落として壊してしまったのだ。それがなんとなく恨めしく思ったのだがしょうがない。
音も立てずに石で作られた階段を下りていく。途中から完璧に辺りが見えなくなってしまい俺は学校の屋上のことを思い出した。あれ以来、暗い場所はだめになってしまったのが悲しいものだ。暗いところにはあのお化けが・・・・と考えてしまう。
階段もようやく終わったところで足元に明かりが見える場所へと到着した。黄金に輝いている足元のものはなんだろうと思いながらとりあえずネイの姿を探したのだがそこにはいなかった。あるものすべて、黄金に輝いている。もしかしてお金だろうか?
「・・・・『黄金の間』ってことはどこかに部屋でもあるのかな?」
暗闇の中とても不安だったので誰かに尋ねるように足を進めた。そして、ようやく黄金に輝く扉を見つけて俺はほっとため息をついた。これはまちがいないだろう・・・。
扉をノックしようとした俺の耳に
「・・・・いち・・・に・・・・」との声が聞こえてきたのはそのときだった・・・・・。そして、俺の足が震え始めたのであった。
皆さん、お久しぶり?ですね。今回の章はいつもより?魔法に関係しているような事を書いてみました。それと、見てわかると思いますがローザの登場頻度がひたすら多いですね・・・。今のところこの章の終わり方は曖昧にしたいと思っています。では、皆さんまた今度お会いしましょう。




