ローザ:マスターなんて駄目人間ですね。
二十七、
唖然としている俺に(先ほどから鼻血が止まらない。面白いぐらい出ている。)店長がティッシュを渡して告げた。俺は服に掛かっている鼻血を拭くことにした。
「・・・零時君、ローザ君とは知り合いだろう?」
「あ、はい。そいつは機械です。」
鼻血が唐突に止まった。とりあえず詰められるだけ鼻にティッシュを詰め込んで話しかけた。今度は口の中がかすかに血の味がしていたりこれだけの量の鉄分はつらい。
「あのう、それで俺はどこに行けばいいんですか?」
「・・・・ちょっとした偵察をかねて出張サービスをしてもらいたいんだ。」
俺は首をかしげたのだが話はこれまでだという風に店長は立ち上がった。
「さて、後はローザ君にでも聞いてくれ。私は用事があるからね。」
「あ、はい。」
店長はそろそろ勤務時間が再び始まるので俺の前から姿を消した。そして、残された俺はとりあえずローザを見た。俺の視線を感じたのかローザは部屋の端っこに逃げている。
「・・・・お前、何でこんなところにいるんだよ?」
「も、元マスターからの最後のご命令です。なんでも、零時を手伝ってやってほしいということで私は零時さんの部下となったのですよ。ええと、よろしくお願いします。」
「じゃ、公認でばらばらにしても構わないんだな?」
「って、いつの間にドライバーとか握ってるんですか!!」
俺は右腕に取り出したドライバーでローザを追い詰める。だが、追い詰められたねずみは猫に牙を向けたりするらしい・・・・。猫側の俺としては嫌なものだな。
「ていっ!!」
俺に引っ付き、俺は鼻血を出してしりもちをついた。返り血を浴びたローザは勝ち誇ったように眼を白黒させている俺に告げた。その表情、頭にくる。
「私を分解しようなんてするとやらしいことしますよ?マスター?」
おかしいな・・・ローザのことは機械だと思ったんだが・・・・何故、鼻血が出てしまったのだろう?俺の疑問に答えるようにローザはふんぞり返って俺の疑問に聞いてもいないのに答えてくれた。
「えっへん、私は女の子ですが機械です。機械ですが女の子なのです!マスターの脳内では一瞬の混乱が生じ、見た目が女の子なので言葉では理解できていても追いついていないのです!!」
とりあえず今の状態ではどうすることもできないようだ。ちっ、しょうがないな。
「ばらさないと約束しよう・・・・で、俺は何をすればいいんだ?」
「ええとですね、とりあえずあなたが私の新しいマスターですので教えますがどうやら潜入調査のようですね・・・・。何でも、魔法使いたちの重要書類が何者かに盗まれたらしくある程度容疑者は絞られているようなのですがはっきりとはしていないそうです。それで、その容疑者でもあるとある三人のお屋敷がお手伝いさんを募集しているそうです。そこに私たちは向かいます。」
簡単に言ってくれてはいるがそれのどこが出張サービスだ?俺は憮然としながらも頷いた。
「やれやれ、どうしたもんだ?ローザ、他に何か聞いていないのか?」
「ええと、その書類を取り戻してくれたらマスターの魔法を解除してくれるそうです。」
「よっしゃ、わかった!!」
こんな不便な体では何もできん!!俺が悪いわけではないがここはちゃちゃっと終わらせてしまおう!!
「行くぞ、ローザ!!」
「了解、マスター!!」
こうして俺とローザは容疑者である人物の屋敷に向かったのであった。俺は公式に魔法使いと認められていないのでそのような書類はないらしい。ローザも魔法使いではないので潜入はちょっと時間が掛かったのだが楽に潜入することができた。
「・・・・・しかしまぁ、本当に出張サービスだな。」
俺がやっていることは彼女たちが食べ終わったものの後片付け、皿洗い、洗濯、掃除、ペットのお世話・・・etcとさまざまだ。
「しょうがないですよ、これも任務です。マスター、お皿洗うのうまいんですね?」
俺たちが潜入を開始して約一週間がたった。
あれから三人には全く会っていない。
学校には大怪我をして意識不明の重態ということでバイト先が手を打ってくれたのだが正直、悲しい。そして俺の格好もちょっとだけ変わっていた。エプロンにバンダナ、後は普通の学生服なのだ。女性のお手伝いさんを要求していたらしいので男の俺はだめだったのだが人手不足なので今回は許してもらったのだ。いや、全くうれしくないのだが・・・・。
お屋敷は馬鹿みたいにでかく、お手伝いさんも他にいるにはいるのだ。何でも、このお屋敷は四つのエリアに分かれており、A、B、C、Dに分けられている。俺とローザが頼まれているのはCエリアでこのお屋敷に住んでいる三人の持ち主の部屋がある区域でもある。俺たち以外の人たちはここにはおらず、俺たち自身もまだ主の面も拝んではいない。
「やれやれ、いつまでこんな生活が続くんだ?」
「マスター、誰か来ます!」
二人して車も軽く通れる広さの廊下の先を隠れるようにして眺める。Cエリア区域長だったらどやされるので姿を消さなければならない。
「・・・はじめてみる三人組ですね。」
俺とローザの眼には三人の姿が映った。一番左の少女は鏡でしきりに自分の顔を眺めており、一番右の女の子は筋力トレーニングをしながらこちらに悠然と歩いてきている。そして、真ん中の美少女はお金のセンスで仰いでこちらにやってきていたのだ。
「とりあえず隠れておくか?」
「そうですね、姿を消しておきましょう。」
わからない相手の前に姿を現すのは危険なのでここは姿を消すことにした。消すといっても扉の陰に隠れるだけなのだが・・・・・。
「・・・・全く、あの書類をどこに隠したのかを忘れるなんてネイお姉さま、何をやっていらっしゃるの?」
ナルシストの少女が口を開いた。今度は一番右の少女が口を開いた。
「しょうがないさ、姉さんだって大変なんだからよ。それより、ティフル・・・この屋敷にスパイが入り込んだって?」
そして、ネイと呼ばれた一番ケチそうな少女が流れ眼を口を開いた少女に注意する。
「・・・・・フォルスそのようなことをここで言ってはならないのよ。どこで聞いているのかわからないからね。」
す、鋭い・・・ここに二人ほど存在しています。だが、あのフォルスという名前の少女のおかげで助かった。あとはなくなった書類を捜し終えて店長に返せばそれで終わりだな。俺が頭の中でどのようにしてことを進めるかと悩んでいると三人は通り過ぎてしまった。ローザに確認してみる。
「ローザ、お前もきちんと聞いたよな?」
「ええ、彼女たちの生まれた順番はわかりました。私の予想では一番上がネイと呼ばれた守銭奴で二番目がフォルスという筋肉馬鹿で三番目がティフルのナルシストですね!」
「違うだろ!!あいつらの生まれてきた順番なんて関係ないの!」
そうですかといわんばかりに俺を見てくるローザだったので俺はため息をつきながらもローザに説明したのであった。ようやく理解したのかああ、なるほどと頷いている。
「ローザ、失せ物探しをできる機能はついてないか?」
「いやぁ、ついてないです。大体、もっと具体的な情報がないと無理だと思われます。」
たしかに漠然としすぎたなぁ。まぁ、今回は容疑者である三人の顔をようやく拝めたのでそれだけでも十分の収穫だ。
「ローザ、これからは攻めに入ろう。」
「ええと、マスター・・・夜中にこっそりと彼女たちの部屋に入り込んで・・・」
「違う、彼女たちがいたらだめだろ?いなくなったら掃除道具を持ってとりあえず書類を管理していたネイの部屋に侵入しよう。」
「わかりましたぁ!!」
なんとなく間抜けな返事だと思わなくもないがそれは性格なのだろう・・・・。相棒としてはとてつもなく不安が残るのだがここではローザだけが頼みの綱なのだ。
「しかしまぁ、お前は基本的に何をするために作られたんだ?この際詳しく自己紹介してくれないか?」
「ええと、わかりました。『R−000』パーソナル・ネームは『ローザ・ローゼ』です。主に戦闘をするために作られたみたいですね・・・あと、和むためです。この前あったときよりも改造がされています、マスター!!あ、言い忘れてたけどモデルは『竜』です!!」
この世の中に戦闘という仕事などないのではないのだろうか?見た目めちゃくちゃ弱そうだし、和むためって大体何なのだろうか?そういえば、竜の形態に移行したりできたんだったなぁ・・・どうせなら蛇とかそういうのになれればよかったのだが・・・・。
「ま、今のところは計画立てるしかないか・・・。」
俺は笑っているローザをその部屋においてモップをもって出て行ったのであった。勿論、俺の後ろからはローザがついてきてこけていたのであった。・・・・・不安だ。
以前言ったとおり、この章はいつもより少ないです。中途半端な感じがしますが今のところはそれで我慢してもらえるとうれしいと思います。お暇な方、感想を書いてもいいなぁと思っている方はできましたら感想をいただけるとうれしいです。では、また次回でお会いしましょう!




