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男:さよなら、僕の魂よ・・・・ぐふぅ。

今回で第二章は終わりです。

十八、

 なんだかんだで屋上へとやってこれた俺たち(何故か知らないが、今日はやたらと見回りの人が多かった。)は屋上への扉を開けてみる。暗いだけ・・・だ?


「・・・・零時、校舎内で満月は確認できたよね?」


「ああ、綺麗な満月だったぞ?」


「通り雨かな?もしくは私の目がおかしくなったのかなぁ?」


 俺たちの目の前に広がっている状況は大雨警報を出したほうがいいのではないかと問いたいぐらいのスコールだ。だが、いまさら気がついたのだが・・・・俺たちはぬれているが床はぬれてはいない。座って確認までしたのだ。


「・・・・・それに、不思議と視界は良好だし、誰かがいるみたいだな。」


「!あれが零時がいってた奴?」


 俺とセレネの目の前に姿を現したのはあのときの黒い影だ。そしてその手には細くて世界で一番輝いているような剣が握られている。相手は剣をこちらに向ける。やる気満々?僕たち、一般市民でぇーす!!そんなの向けないで!


「零時、がんばって!!私は応援サポートしてるから!!」


「・・・・セレネ、ちょっと試して欲しいことがあるんだが?いいか?」


 相手は待ってくれているようだったので俺はとあることをセレネに話した。それを聞いたセレネは頷き、もう一度だけ俺に激励の言葉を投げかけてくれた。


「零時、それなら出来るだけ時間をかせいでくれる?」


「わかった。頼んだぞ、セレネ?応援なんてしなくていいからな。」


 俺は水の大剣をその手に握って相手の出方を伺っていた。正直、この均衡がセレネが俺が頼んだことを終わらせるまで続いてくれたら俺的には嬉しいなぁ。ほら、相手が俺の実力を測っていたりするならちょっとは様子を見るだろ?


「・・・・・・。」


 そんな考えをしていた俺は相手がいきなりいきり立って剣を振り落としてきたのを見て慌てて防御。そして俺は思い出した。


「ああ、そういや俺って以前こいつと戦ってたんだな。うん、これは油断していた。」


「・・・・。」


 剣をはじき、相手に激流を飛ばす。それを相手は一閃のもとにあっさりと撃破。見ているこっちもすっきりするような感じだ。うん、自分がこうなったら大変だね。すっきりと二つばかりにおろされるかもしれない・・・・・。


「・・・・ちっ、それならこれだ!!」


 相手に剣を飛ばし、更に避けたほうからも無数のナイフの形をした水を飛ばす。これを相手はそれって盾っていえるのって言うぐらい細い盾で攻撃を防いだとあるガンダ○みたいに細い剣で全部防ぎやがった。ナイフは全て霧消。


「まだまだ!!俺のねたは切れないぜ?」


 俺を打つ雨を収束させて相手に向かわせる。結果は先と同じく、あっという間に空気中に霧散。うん、俺の目の前にいる相手は化け物だね。強すぎるよ。


「・・・・・。」


「くそっ!!」


 振り落とすスピードもほとんど分かりませ〜ん。あんなの剣で防いだら俺の剣があっという間に折られた挙句に校舎もついでに切ってしまいそうな勢いで〜す。ぶっちゃけ、逃げたいね。いやいや、既に足は震えてます。

 鍔迫り合いなんて馬鹿らしい。いや、俺としてはドラマのような見せ場を作ってみたいのだが、この相手は恐ろしいほど強い。そんなことしたら相手の見せ場。


「・・・・。」


「しまった!!!」


 雨のせいで剣が滑ってしまった。結果、相手の鋭い剣が俺の肩を捕らえようとしたとき・・・・突如として雨は降り止み、月光が俺たちを包み込んだ。


「ぐはっ!!」


 奴の剣は俺の右肩辺りを直撃。見事貫通してしまった。めっちゃ痛いねん。


「零時、間に合った?」


 既に相手は戦う気力が失われたのだろう。俺の肩から剣を引き抜き(もっと優しく抜いて欲しい。)夜空に現れた満月を眺めている。黒い影ではなかった。


「・・・・はっきりいうが、遅い。肩に剣が刺さったぞ?血が出てるし・・・・。」


「か、かすり傷だよ!!零時が避けないのが悪いの!!私が遅かったわけじゃ・・」


 あんなスピードの突きをかわせる連中がどこにいるんだ?俺の肩からは血が流れ出し・・・・責任転化したセレネは俺に近付いてきて肩を触ろうとした。


「・・・まず、興味深そうに触ろうとするな。俺は痛くて涙も出ないんだぞ?」


「ご、ごめん・・・大丈夫?」


「大丈夫だと思うならセレネは鈍感だな。魔法で治癒とか出来ないのか?」


「ええと、私はちょっと・・・そういうのは苦手かな・・あはは」


 この人、本当に何も出来ないんですねというのをこらえて俺は痛みを忘れるために満月に魅入っているお化けのほうに視線を動かす。その顔は幸せそうだ。


「・・・月さ・・・。」


 何かお化けが喋った気がしたのだが、さて、なんと言ったのだろうか?俺にはよく聞こえなかった。そして、満月のほうからドレスを着たかなりの美少女が屋上に降り立った。二人の仲はとてもいいに違いないと俺とセレネはしんみりと眺めていたのだが・・・・なんと、やってきた女の子は先程の影(既に形は人間に戻っており、この高校の制服を着た男子となっていた)に延髄蹴りを喰らわした。


「・・・・セレネ、お化けって延髄蹴りが出来るだな?ほら、あいつ苦しんでる。」


「そ、そうみたいだね。あとさ、あの男の子・・・あの人に頭上がらないのかな?」


「さぁな?俺が思うに意外といい奴かもしれないな。未だに苦しんでるからな。」


 ここからは話をほとんど聞くことが出来ないのだが・・・・なにやら話している。男子のほうはドレスの女の子に頭を下げて(土下座)ばかりだ。そして、そのドレスの女の子がこちらに歩いてきた。いや、飛んできた。


「いやぁ、うちのおばかが迷惑を掛けてすみません。謝りますね?」


 見た目は外国人?なのだが、とても日本語がうまい幽霊だ。きっとこちらでの生活が長いに違いない。俺とセレネはどちらともなしに首を振った。


「いえ、たまたまこうなっただけです。あの、失礼ですが・・・あいつ・・・じゃなかった、あの人は一体全体何なんですか?」


 俺の質問にその女の子は軽々と答えた。微妙に笑っている。


「私のナイトですよ。普段は頼りがいのあるお節介なのですがね。彼の生前、色々ありましてね・・・魂が縛られていたんでしょうね。」


 途中でちょっとばかり悲しそうな顔をしたのだが、直に明るい顔に戻った。そして、今度はセレネのほうを見てこういった。その目は何かを見ている。


「私と同じ心の持ち主ですね。」


「え?」


 満月のお姫様のような人はそういった後にこちらに頭を下げて影の男子生徒とともに姿を消した。そして、俺たちに残ったものは俺の怪我だけであった。


「・・・静かな月のような人だったな?セレネもあんな人と同じ心の持ち主って事はないだろうな。うん、『五月蝿い月』って異名でも自称でつけたらどうだ?」


「どういう意味よ?それより、ほら、怪我した肩を見せてよ。」


 そういってセレネは強引に俺の負傷した部分を消毒したあとに絆創膏、包帯をしていった。意外と手さばきがいいのは自分がドジした時のための練習か?


「さ、これで充分でしょ?さて、ここにいる理由もなくなったわね。」


「ああ、そうだな。じゃ、ソーラたちのところに帰るか?」


 空に浮かんでいる満月ではない月を見ながら俺たちは屋上を後にしたのであった。二人は校門前でなにやらニヤニヤしていたのであった・・・・・。

 そして、次の日のことである。時間帯は朝だ。


「ねぇねぇ、零時!!面白い話を用務員の人に面白い話を聞いたんだ!!」


 怪我した部分をさすりながら俺は机を枕にして寝ていたら瑞樹が俺の元にやってきた。朝っぱらから五月蝿い野郎だな。朝というものは静かに、そして優雅に過ごすものだと俺は信じているのであって、静寂なる朝をこのような感じにぶち壊されてしまっては朝のコーヒーがまずくなってしまうだろう?因みに俺はコーヒーなどは飲んでいない。飲んでいるのはでがらしだ。


「何があった?また怪談か?」


「うん、これが面白いんだよぉ?僕に話してくれた人も昨日、その怪奇を知ったんだってさ。何でも、満月の夜に屋上に続く階段を寄り添うような格好で男女の幽霊がいちゃいちゃしながら歩いていくんだって。そしてさ、窓の外をふと見てみると女の子の幽霊が他にも二人いて用務員さんの視線に気がつくと消えたんだってさ!!」


 その話を聞いて俺はピシリと固まった。


「へ、へぇ、それのどこが怪談って言うんだ?ほら、何か崇りとかがあったりするだろ?実害あったのか?」


 実害が無ければその話は直に忘れられるに違いない。俺はそう思ってその階段に出てくる化け物の今後を考えてみた。自分的にはさっさと忘れてもらいたいものだ。


「それがさ、その用務員さんは窓から見ていた女の子の幽霊に追いかけられたらしいよ。」


「・・・・・。」


「何でも、『見ているのなら、仲を引き裂いてください!!』とか『おじさん、さっさと追いかけていきなよ!!』って言いながら追いかけてきたんだって。」


 それを聞いて俺は仲良く話しているソーラとノワルの元へと無言で近付いていった。その後、学校に用事があって無断で校内に入ったことをその用務員さんに全員で話に行ったのであった。

 用務員さんはいいひとで、俺たちにトイレ掃除で許してくれた。


今回で第二章が終わってしまいましたね。いやぁ、意外とあっさりしていたような・・・・まぁ、途中で出てきたあの二人が幸せになったことを祈りましょう。さて、次回からはちょっとした波乱の話になります。そうですね、ある意味次の章は休憩みたいなものでしょうね。

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