第九章 夏の終わり
重要なお知らせ:本作の文章はすべてGPTさんが翻訳しています。翻訳に誤りがありましたら、どうかご容赦ください。
話し合いが終わり、キャンプでは新たな仲間を迎え入れることが決まった。
ネトパン族。かつて寒冷な高山地帯で暮らしていた、羊に似た亜人たちだ。
ネーヤは先に出発し、野外で待機している仲間たちを探しに向かった。
時刻は、すでに日没が近づいていた。
職人たちは地下室の建設を終え、今は大きな倉庫と新しい住居の基礎骨組みを組み立てている。
これまでの経験もあって、彼女たちの作業はすっかり手慣れたものになっていた。
すでに、それぞれの建物の基礎ができあがりつつある。
陽は窯の様子を確認しに行った。
完全に冷めていたので、蓋を開けて中を確かめてみる。
すると、焼成の成功率が上がっていた。
相変わらず陶器の素地は半分以上が割れてしまったものの、新たに二十個以上の陶碗を回収できた。
全体としては改善している。
ただ、窯にはすでにかなりの数の亀裂が入っていた。粘土で埋めて修繕するしかないが、どうやら焼成設備の改良を急ぐ必要がありそうだ。
陽は新たに二つの陶罐の素地を作り、窯の中へ入れた。
木炭を追加し、火をつけて蓋をする。
窯から細い煙が立ち上るのを見届けると、陽はその場を離れた。
あとは運任せだ。
自分専用の小さな家のところまで歩いていくと、瑞泊はちょうど屋根を仕上げているところだった。
陽も手伝い、木材や楔を渡していく。
それから十数分ほどで、ついに建物が完成した。
瑞泊は屋根から降りてくると、誇らしげに陽へ見せつけた。
「ほら、どう? 四角くて、きれいに整ってるでしょう? 隙間も、あなたが言っていたとおり粘土と木くずで塞いでおいたわ。これで今夜はぐっすり眠れるわよ!」
「ありがとう、瑞泊。苦労をかけたな。でも……たぶん、今日はこの部屋で寝られないんだ」
陽は感謝と申し訳なさが入り混じった顔で瑞泊を見て、頭を掻いた。
「ん? どうして? 何に使うの?」
「もっと長く保存できる食べ物を作るためさ。燻製室だよ」
陽は瑞泊を連れて材料を取りに行き、簡単な骨組みを作ってから、それを完成した小屋の中へ運び込んだ。
そして、瑞泊に組み立て方を説明する。
燻製棚の構造は非常に単純だ。
何本かの木の棒で、物干し竿のような構造を組めばいい。
重要なのは頑丈さと、燻煙源から十分な高さを確保すること。そして、できるだけ多くの食材を並べられるだけの空間を確保することだ。
簡単に説明しただけなのに、瑞泊はすぐに作業を始めた。
気がつけば、陽はすっかり補助役に回っている。
もしかすると今の瑞泊は、木工経験が数年ある職人よりも手際がいいのではないだろうか。
瑞泊に任せておくことにして、陽は燻製を担当する人を二人探し始めた。
昼夜交代で、絶え間なく燻製品を作り続けてもらうためだ。
キャンプ内を適当に歩き回っていると、自ら名乗り出てくれた蛇人が二人見つかった。
陽は燻製作業の利点と注意点を説明した。
二人とも煙にはそれほど敏感ではないらしい。ここ数日の炭焼き作業でも、煙の近くを通ることがあったという。
三人で地下室から生肉を運び出し、資源置き場から砕石、木材、そして枝を加工した際に残しておいた松の針葉を持って、燻製室へ戻った。
扉越しに中を覗くと、瑞泊はちょうど火床を作るための浅い穴を掘っていた。
それにしても、この子は本当に仕事が速い。
陽は、もしかして六本も腕が生えているのではないかと疑いたくなった。
「瑞泊、戻ったぞ。さあ、まずは火床の周りを囲って、それから薪を入れて、松葉を敷いて……」
三人で肉を燻製棚いっぱいに並べ、いよいよ火をつける。
熱が加わると、水分をたっぷり含んだ松葉から煙が立ち上った。
濃煙は瞬く間に燻製室の中へ充満していく。
「扉を閉めてくれ。煙が薄くなるか、完全に消えてから中に入って、薪と松葉を追加してくれ。それと、燻製の進み具合も確認するんだ」
「肉の表面が黄金色になって、触ると硬くなっていれば、だいたい完成だ。三、四日くらいかかるかもしれない」
「ああ、それから、火は必ず弱火にすること。松葉は水分の多いものを選んでくれ。少なくとも、枯れて黄色くなったものは使わないように」
二人の蛇人は頷いた。
「任せてください。ここは私たちにお任せを」
「うん、頼んだぞ。それと、煙が少ないときに入ること。鼻や喉に違和感があったら、すぐに俺のところへ来てくれ」
【安定して燻製品を生産する能力を獲得しました】
陽と瑞泊は燻製室を離れた。
陽は、今後さらに何棟か燻製室を建てるつもりだと伝えた。
一棟だけでは、キャンプ全体の消費量をまかなうには明らかに足りない。
瑞泊は自分が担当すると答えた。
陽は頷き、二人は手を振って別れた。
まだ、それぞれにやるべきことが残っている。
そろそろネーヤたちも到着する頃だろう。
まさか、仲間たちをそんなに遠くに待機させているはずもない。
それに、もうすぐ日が暮れる。
夕食の準備を始めてもいい時間だった。
ただ、料理に取りかかる前に、陽はもう少し食材を探しておくことにした。
肉類だけでなく、ビタミンやミネラルなど、キャンプの食生活に不足している栄養素も補いたい。
今は、とにかく手に入るものを活用するしかない。
それほど遠くへ行く必要もなかった。
キャンプの入口にいる守衛たちの視線が届く範囲で、陽は白樺の幹に生えているキノコを見つけた。
名前は分からない。
だが、食べられるキノコだったはずだ。
いくつか採取し、さらに若い松葉も二つかみほど集めた。
こちらはお茶にして飲める。
最近、陽は身体に力が入らないだけでなく、歯茎まで腫れぼったく感じていた。
ここしばらくの食生活を振り返れば、原因は栄養不足だと察しがつく。
おそらく代謝の違いもあるのだろう。蛇人たちは、人間ほど塩分を必要としていないようだった。
(そういえば、山羊の中には岩塩を舐めて塩分を補給するものもいるんだっけ。ネーヤたちも塩を探す方法を知っているのかな。夕食のあとに聞いてみよう)
「あっ、この菊も少し摘んでおこう。菊花茶もなかなかいいしな」
陽が腰を屈めて花を摘んでいると、背後から声がかかった。
「こんにちは、陽。仲間たちを連れてきました」
ネーヤの声だった。
立ち上がって振り返る。
すると、ネトパンたちが一か所に身を寄せ合い、何人かは怯えた様子でネーヤの後ろに隠れていた。
(ああ……なんて大人しそうな羊娘たちなんだ。ネーヤの怪力を知らなかったら、本当に無害な種族だと信じていたところだよ)
「ちょうどいいところに来たね。今から夕食だから、一緒に戻ろう」
陽は彼女たちを招いた。
ネーヤは真っ先に陽の隣まで歩いてくると、振り返って仲間たちに手招きした。
その顔には、抑えきれない笑みが浮かんでいる。
ここへ来るまでの間、ネーヤはキャンプの寛容さや友好的な雰囲気を仲間たちに説明していた。
臆病なネトパンたちも、少しずつ安心して近づけるようにするためだ。
「すみません、陽」
ネーヤは、身を寄せ合って歩く仲間たちのせいで進みが遅くなっていることを気にしていた。
陽は気にする様子もなく、歩調を緩めている。
「気にしなくていいよ。料理なんてすぐできるし」
「ところで、この辺りにはもう君たちを脅かすような生き物はいないはずだけど……どうしてネトパンたちは、そんなに怖がっているんだ?」
陽は顔を上げて尋ねた。
ネーヤは答えた。
「私たちは一年中、標高の高い雪山で暮らしてきました。あそこでは、私たちでさえ身を寄せ合って暖を取らなければなりません」
「それに、雪山の夜はとても危険なんです。長い間、私たちは日が暮れると三人、五人と集まって、互いに身体を寄せ合うようになりました」
(これも、長い年月をかけてネトパンたちが築き上げてきた文化なのかもしれないな)
少し歩いただけで、詳しく話を聞く間もなく、二人はキャンプの外周にたどり着いた。
そこには、形になり始めたばかりの木製の防壁があった。
一行はそのまま中へ入っていく。
守衛たちは笑顔で手を振り、彼女たちを迎えた。
その様子を見て、ネトパンたちの緊張も少し和らいだようだった。
「ネーヤ、みんな、こっちへ来てくれ。これから料理をするところだから、よかったら見ていくといい」
「これからは君たちも料理をする機会があるだろうし、先に見ておくといいよ」
実際には、陽は焚き火と食べ物の香りに囲まれているうちに、彼女たちが少しずつ緊張を解いてくれればと思っていた。
何人もの蛇人が集まってきて、羊娘たちに声をかける。
その口調には、好奇心と友好の色があった。
彼女たちは、他種族の亜人と顔を合わせる機会が長い間なかったのだ。
陽は鍋を火にかけ、豚バラ肉を炒めて脂を出した。
そこへ刻んだラズベリーと若い松葉を加え、炒め合わせる。
苦味と酸味、甘みがほどよく混ざり合い、草木の爽やかな香りが残った。
さらに細かく切ったキノコを入れ、水を注いで蓋をする。
あとは煮込むだけだ。
陽は皆に陶碗を持ってくるよう頼み、料理をよそう準備を始めた。
陶碗はかなり増えてきたものの、それでも全員にスープを行き渡らせるには三回ほど交代する必要がある。
(やっぱり、陶器を専門に作る職人が必要だな)
食事が近いと分かると、ネトパンたちは焚き火の上で湯気を立てる鍋の蓋に目を向けた。
蓋はグツグツと煮立つ鍋に合わせて小刻みに揺れている。
そのとき、彼女たちは自分の羊毛の中から、食べられる果実やキノコをいくつも取り出した。
そしてネーヤは、半透明の小さな石まで取り出した。
「これは何だ?」
陽は、ネーヤがその石を差し出してきたのを見て尋ねた。
「舐めてみてください。きっと、あなたならもっと上手に使えると思います」
「何だそりゃ……」
陽は舌先を伸ばし、石に触れてみた。
その瞬間、猛烈な塩辛さが脳天を突き抜けた。
「これ、塩じゃないか! どこで手に入れたんだ?」
陽は大喜びした。
もう何日も、十分な塩分を摂取できていない。
陽は、蛇人たちが獲物の血液に含まれるわずかなミネラルと、祖巫の加護だけを頼りに、どうにか健康を保っているのではないかとすら考えていた。
「それほど遠くない場所です。低い山があって、そこで手に入れました。ほかにもたくさんあります」
「でも、いつも持ち歩いていると肌が痛くなってしまうので、これだけ持ってきました。私たちが食べたいときには、取り出して互いに……」
「いや、もういい! 分かった! どうやって料理に使うか考えさせてくれ!」
陽は興奮を抑えきれないまま、笑みを浮かべた。
「とんでもなく重要な情報だよ、親愛なるネーヤ同志!」
陽はハンマーを持ち出し、岩塩の結晶を砕いた。
それを水を張った碗に溶かし、焚き火で加熱して沸騰させる。
数分後、火から下ろして冷ました。
水面と碗の底に沈んだ不純物を取り除き、塩水を新しい碗へ移し替える。
(今の段階では、ひとまずこれで処理するしかないな。あとで、もっと本格的に濾過する方法もあったはずだけど……)
陽は、それ以上考えるのをやめた。
後で工程を改善することも、ネーヤが自分と大勢のネトパンたちの間接キスを成立させてしまったことも、いったん忘れよう!
「塩だぞ、塩!」
陽は彼女たちを手伝い、キノコと肉を交互に木の串へ刺して、火床のそばで炙り始めた。
時折、指先で塩水を少しずつ弾き、肉に振りかける。
残った塩水は、何度かに分けて複数の鍋へ入れるつもりだった。
「これで、ようやく食事が完成した……!」
ネギ、生姜、ニンニク、シナモン、八角、各種香辛料、ローリエ、唐辛子、ゴマ、クミンなどは、まだまだ先の話だ。
それでも、塩が手に入っただけでキャンプの食事は格段においしくなる。
魔物娘たちも、低ナトリウム生活から脱却できる。
これで、もっと力が出るようになるはずだ。
陽の様子を見ていたネーヤは、彼が何をしているのか分からず、周囲の蛇人たちに尋ねた。
「ねえ、皆さん。ずっと一緒に暮らしているんですよね? 陽はいつもこんな感じなんですか?」
いつの間にか、シルルも焚き火のそばに来ていた。
手にはキノコとウサギ肉の串焼きを持っている。
楽しそうに焼きながら、にこにこと答えた。
「陽は時々、変なことを言ったり、変なことをしたりするんです。でも、しばらくすると元に戻りますよ!」
「それに、そういうことが終わったあとって、大抵何か新しいものができるんです!」
シルルは心の中で歌っていた。
(ふふふ~ん♪ 早く焼けてね~♪ ウサギさん~♪ 早くおいしくなあれ~♪ いい匂い~!)
ネトパンたちは、思わず何度も唾を飲み込んだ。
いや、彼女たちだけではない。
蛇人たちも、もう我慢できそうになかった。
肉のスープにキノコと塩が加わったことで、濃厚な旨味と香りが一気に広がっていたのだ。
魔物娘たちの味覚を刺激するその香りは、ついに長老まで引き寄せた。
「あら、長老! ここにも座れますよ。そろそろ食事ですよ!」
蛇人の一人が声をかけた。
長老は外側から蛇身を伸ばし、頭を持ち上げて様子を窺った。
そして手を振り、皆に先に食べるよう促す。
集まったネトパンたちがすっかり緊張を解き、食欲に夢中になっているのを確認すると、長老は満足そうに陽へ頷いて笑いかけた。
そのまま手に持っていた編み物をいくつか抱え、住居などの建築状況を視察しに向かった。
追加で建てる五棟の住居は、すでに二棟が完成していた。
倉庫も半分近くまで建設が進んでいる。
何しろ倉庫はかなり大きい。
長老もそれを理解しており、口をすぼめて納得した。
自分には手伝えそうにない。
持っていた草縄の籠を二つ、倉庫の床へ置く。
それから身体の向きを変え、神龕の方へ進んでいった。
「いい香りだね。これからも頑張っておくれ」
長老は指を上へ向けた。
目には見えない気流がキャンプの周囲から巻き上がり、食べ物の香りを夜空へと運んでいく。
神龕の前に着くと、長老は身を屈めて礼をした。
そして祖巫に近況を報告し、しばらく昔話をする。
やがて陽たちの食事も終わった頃だろうと考え、二巡目のスープを受け取りに行くことにした。
狩人や職人たちは三巡目になるだろう。
それでも、全員が腹いっぱい食べられる。
以前なら、こんなことは夢にも思わなかった。
それでも長老は、祖巫のそばを守り続けたことを後悔してはいない。
むしろ、蛇人たちは皆、それを誇りに思っていた。
「どうか、私たちをお守りください。皆をお守りください」
【ビトーヤ】
ふと振り返ると、長老は狩人たちが戻ってきたことに気づいた。
彼女たちは大小さまざまな獲物を抱えている。
長老は迎えに向かった。
自分の名前を呼ぶ、礼儀知らずな仲間が誰なのかは気にしないことにした。
何しろ、部族の中で自分をそんなふうに呼ぶ者は一人しかいないのだから。
「収穫はどうだった? かなり遠くまで行ったんだろう?」
「はい。近場の獲物はほとんど逃げてしまいましたから。今回は少し遠くまで足を延ばしました。でも、ご安心ください、長老。無理はしていません。自分たちでも分かっていますから」
「怪我はなかったかい?」
「ありません。この数日、皆の調子もいいですし、鱗もずいぶん丈夫になりました」
全員が食事を終えた頃、陽は調理器具を洗っていた。
水袋一袋分の水を使い切り、地面に座ってひと息つく。
どうやら、料理担当にも人手を増やす必要がありそうだ。
夕食後、キャンプの入口を守る数人の蛇人を除き、全員が集まった。
神龕の前に、蛇人と羊娘たちが入り混じって立っている。
総勢百十四人。
なかなかの大所帯になった。
長老は神龕の前に立ち、ネトパンたちの正式な加入を歓迎した。
そして、新たな大家族の誕生を宣言する。
人口が増え、複数の種族が共に暮らすようになった。
住居も防壁も整い始めている。
そこで長老は、このキャンプを正式に「村」と呼ぶことを提案した。
「村? いいね! もっと家って感じがする!」
「どんな名前にする?」
「いっそ蛇羊村とか? いや、違う違う。羊蛇村?」
「あなた、そろそろ寝た方がいいわよ」
「亜人村じゃ駄目なの?」
「亜人村、いいと思う。賛成!」
長老は投票で決めることにした。
いくつかの候補が挙げられたが、「亜人村」が圧倒的な票を集め、新しい村の名前に決まった。
蛇羊村と羊蛇村も候補に挙がり、それぞれ一票ずつ獲得した。
どうやら、あの天才と同じ趣味を持つ者がいるらしい。
長老は木板を手に取り、木炭で「亜人村」と三文字を書いた。
そして皆に見せる。
後ほど職人たちが文字を彫り込み、色を塗って、村の入口の防壁に掲げる予定だ。
(長老、字がうまいなあ)
深夜。
新しく来たネトパンたちに住居を割り当てることになった。
しかし、三十八人の魔物娘たちは、今完成している二棟だけで十分だと答えた。
それどころか、まだ余裕があるという。
どうやら、彼女たちは皆で身体を寄せ合って眠る方が好きらしい。
守衛たちも一時的に持ち場から下がらせた。
陽は彼女たちが風邪をひくことを心配していた。
先ほどの集会の頃から、気温と湿度がどうにもおかしいと感じていたのだ。
それに、空を見上げても黒雲がいつまでも消えない。
空は厚い雲に覆われ、雨が激しく降り始めた。
大雨は一晩中続くことになった。
住居の扉や窓は閉められ、側面の排煙口から火床の煙が立ち上る。
だが、その煙もすぐに雨に打たれて散っていった。
今夜、陽はネーヤたちの共同住宅で休むことになった。
一つには、まだ新しい環境に慣れない羊娘たちを安心させるため。
もう一つは、ネーヤに聞きそびれていた情報を、改めて確認するためだった。
火床を囲んで座る。
木がパチパチと音を立てて燃えていた。
ネーヤは明らかに火から距離を取っている。
彼女の話によれば、これよりずっと寒い場所でも暑く感じることがあるらしい。
陽は、雪山がいったいどれほど寒い場所なのか気になった。
そして、ネーヤの身体を覆う厚くふわふわした毛を見る。
問題は熱を逃がしにくいことだけではない。
これほどの毛があれば、動きやすさにも影響するはずだ。
「君たちって、普段は毛を刈ったりしないのか?」
陽が尋ねた。
「ああ、時々、木に身体をこすりつけて毛を落とすことはあります。でも、手で引き抜くのと同じくらい痛いんです」
「汗も不快ですけど、皆で我慢してきました」
ネーヤはそう説明した。
生きていくだけで精一杯なのだ。
亜人たちは、生存に直接関係しない快適さを求めることが少ない。
陽は服の羽飾りにいつも留めている黒曜石のナイフを取り出し、ネーヤへ手を差し伸べた。
「ちょっと試してみよう。うまくいくか分からないけど」
「痛いかもしれないから、ちゃんと言ってくれよ。我慢はしないでくれ。ほら、手を貸して」
二人は少し近づいた。
ネーヤは腕を陽の前へ伸ばす。
陽はようやく、じっくりと彼女の毛を観察することができた。
密度が高く、厚みもある。
しかも、かなり弾力があった。
これは常に最高級のカシミヤのコートを二枚重ねで着ているようなものだ。
暑くないはずがない。
自分の身に置き換えて考えれば、陽なら暑さで気が狂ってしまいそうだった。
ネーヤの手を取り、自分の膝の上へ置く。
小刀を握り、念を押した。
「動かないでくれよ。俺だって髭を剃った経験くらいしかないんだ。傷つけたら大変だからな」
ネーヤは頷いた。
うつむき、そっと目を閉じて、陽が作業を始めるのを待つ。
冷たい火打石の刃が、まずはネーヤの手のひらに触れた。
温度に慣れてもらってから、刃を斜めに当てて、少しずつ毛を削ぎ落としていく。
皮膚を傷つけないように、慎重に。
作業はゆっくりと進んだ。
陽は火の明かりを頼りに、毛と皮膚の境目をじっと見つめていた。
(もっとゆっくり……傷つけないように……焦るな、焦るな)
額から流れ落ちた汗が目に入った。
痛いほどしみて、目を開けていられない。
陽はようやく手を止め、目をこすった。
顔を上げると、ネーヤはずっと静かにこちらを見つめていた。
陽は成果を確認する。
ネーヤの前腕の毛は、すでにきれいに剃り落とされていた。
その下から現れたのは、日焼けしたような黒い肌だった。
ネトパンの皮膚は、弾力も強度もかなりあるらしい。
刃を皮膚に沿わせて毛を削いでも、傷つけることなく、きれいに処理できている。
「まあ! ありがとうございます。こんなに涼しくなるんですね!」
ネーヤは腕を持ち上げた。
普段は毛に覆われていて、日の光に触れることのない前腕の皮膚を、興味深そうに撫でている。
一方の陽は、刈り取った羊毛を手にして、すでに次のことを考えていた。
亜麻を使った織物だけではない。
今の段階なら、羊毛も非常に有用な資源になる!
「陽、よければ、もう片方の腕と脚もお願いできますか?」
ネーヤは微笑んだ。
「あなたのやり方を、もっと覚えたいんです」
「もちろん。よく見ておいてくれ。自分でできるようになれば、ほかの仲間にも教えられるだろう?」
「あとで瑞泊たちに頼んで、専用の刃物もいくつか作ってもらおう」
陽はネーヤからもう片方の手を受け取り、毛を剃り始めた。
すべての作業が終わる頃には、夜明けが近づいていた。
陽は疲れ果て、部屋の隅で丸くなって眠ってしまった。
今夜は、いつも以上に体力を使った。
ネーヤが何度も蒼鷲をどうやって狩ったのか聞いてきたうえ、大量の羊毛を処理しなければならなかったのだ。
次に目を覚ましたときには、すでに昼だった。
朝食を逃してしまったが、陽は心配していなかった。
寝坊する者のために、誰かが焼いた干し肉を残しておいてくれるはずだ。
「うう……ちょっと寒いな!」
陽は首をすくめた。
秋の雨が一度降れば、また一段と寒くなる。
今朝、村は初秋の濃い霧に包まれていた。
誰も村の外へ出ず、村内でできる仕事を片づけていたらしい。
「あっ、陽が起きた! この寝坊助さん!」
珍しく村に残っていたシキアが、陽の腕に絡みついて引っ張った。
寝起きの陽に抵抗できるはずもない。
彼はふらふらと引きずられ、村の中央にある「旧資源置き場」へ連れていかれた。
そこには、すでに完成した倉庫が建っていた。
すべての物資に専用の保管場所が設けられ、屋外に余計な資材が放置されることもなくなっていた。
広場では、ネトパンたちが集まっていた。
彼女たちは、健康的な褐色の肌を互いに見せ合いながら、爽やかな古風の心地よさを楽しんでいる。
ネーヤは両腕を広げ、涼しい風が肌の一つひとつの毛穴を通り抜けるのを感じていた。
極端な暑さでも、極端な寒さでもない。
ちょうどいい、心地よさだった。
「えっ……ちょっと待って。全員、剃り終わったのか?」
陽は困惑しながらネトパンたちを見回した。
どの子も、巨大な毛玉のような姿から、すっきりとした体型へ変わっていた。
余分な毛をすべて剃り落としたらしい。
彼女たちによれば、どうせまた生えてくるのだから、こまめに剃ればいいだけだという。
そこへ、瑞泊が歩いてきた。
身体には、いくつもの羊毛の塊をぶら下げている。
彼女は大きく口を開け、両腕を広げて、大げさに身振りで伝えようとしていた。
まるで、こう言っているかのようだった。
――うわあ! こんなに大量の羊毛が手に入ったよ!
どうやら瑞泊は、さまざまな物資を保存しておく習慣がすっかり身についたらしい。
羊毛を捨てずに取っておいてくれたのだ。
陽は、ほっと胸をなで下ろした。
「ありがとうございます、陽! 仲間たちは、みんなずいぶん快適になりました。もう暑さに苦しめられることもありません!」
ネーヤは興奮した様子で陽に抱きついた。
大きな熊のような抱擁に、陽は息が詰まりそうになる。
彼女は、人と交流することがこれほど大きな変化をもたらすのだと、少しずつ理解し始めていた。
自分たち一族の生活習慣さえ変えられるのだ。
「ぐ、ぐるじ……いや、どういたしまして! だから、離して、離してくれ!」
昼食――陽にとっては朝食――を済ませると、陽は長老のもとへ向かった。
そして、村の中央広場に全員を集めてほしいと頼んだ。
これから、いくつか重要な計画と役割分担について話し合う必要がある。
(さあ、技術を次の段階へ進めるぞ!)




