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当主の休日

川沿いの道を黒馬車に揺られているタケシとカツミ。

キラキラと川面が光り、時折魚がぴょんと飛ぶ。

「追い出されたな」

「どこ行こ」

「んーーーー」


家で、普通にしていた。

いつも通り朝のおにぎりを作り、カツミはカレーを作りーー

で、ちょっとゆっくりしよかーといいつつ、2人ともゴソゴソ仕事する。いつも通りの休日。

「ええ加減にしてください」アキラだ。

「みんなに休めって言うんなら、自分らも休んでくれないと。僕ら休みにくい」

「そーやそーや」

「もっと言うたれー」

「何がボチボチですか。タケシさんもカツミさんも家におったら結局仕事してるでしょ。どっか行ってください」

「どっか行け言われても、な」

「自分の家やん」

「休みに家で仕事しないでくださいって言ってるんです」

「ほんまやー」

「休みは休めー」

「仕事ちゅうほどの........」

「今日は帰ってこなくていいです。どこか宿取って下さい」


新工房の稼働前。これはスタッフの考えた手だ。

無理やりでも家から出して、工房から離れさせないとあかん。

無理してるとは思えないけど、それでも、たまには仕事を忘れてゆっくりして欲しい。

で、アキラが中心になって追い出したのだ。



「とりあえず今日はテラさんとこに泊めてもらおっか」

「そやな」

離れると......気になる。

横を工房へ向かう馬車がすれ違った。

何が来た?

2人顔を見合わせた。

「まぁしゃあないな」

「うん。しゃあない」


テラに事情を話すと、

「いいわよ。ゆっくりなさい。まぁちょっと反省した方がいいかもね」

「そう言われても、なぁ」「だって、ねぇ」

「たまには頭をカラにして、また頑張れってことでしょ」

「そっかー」「そーねー」

「街に出て、ぶらぶらしたら?」

「そうしよか」「うん」


――で、街へ。


荷馬車の音、人のざわめき、どこかで焼けるパンの香り。

「……何しよ?」

「なんやろな」

やってはいけないことはわかったけど。

でもなんでか.....何する?になってまう。

店先に並ぶ道具に立ち止まるタケシの袖を、クイッと引っ張るカツミ。

「アカンアカン」

「アカンな」

思考が職人仕様に固定されてる。

「なぁ、あれ可愛い」

カツミがウインドウを指さす。

ワンピースか.......服もいっつも制服やった。

「買うたろ」「ええよ」

「たまにはこういうの着て見せてーな」

ちょっと嬉しそうなカツミの顔。

そうやな。忘れとった。

店で、ワンピースに着替えたカツミの笑顔は、初めて会った頃の顔。あぁ、かわいいなぁ.....


広場では、子どもたちの笑い声。

ふと見ると、ガタガタと音を立てて滑っている。子供が乗っているのは小さいゴマの付いた木の板だ。

「……あれ」

少し眺めていた。

子どもが転んで、笑う。また乗って......

あぁ――楽しそうや。

「ああいうのが、ええんかもな」

「やな」

……ただのぼろ板やのにな。

「ええ遊びやん」

そっかー遊びやなー

タケシは近くの屋台で串焼きを2本買った。

「ほれ」

「お、ありがと」

もぐもぐ。

「……うま」

「久しぶりやわ、おいしいー」

「なぁ、なんか昔ようやったけど、白黒で裏返すやつ」

「オセロ?」

「ちょっとやりたいな」


喧騒を離れて、木立の中をぶらぶら歩く。

揺れる木の葉の隙間から差し込む光。鳥のさえずり。

風がふっと頬を撫でーー何も考えてないことに気付いた。

「ええな」

「うん」


「何もせんのも難しいけど」

「できんこともないな」

「散歩とオセロ」

「ふふん。うち強いで」

「よっしゃ勝負や」



翌朝、家に帰ると、何事もなく朝の準備が進んでいた。

「おかえり、これ出して」

ルークが出した大皿のおにぎり。

「あ。すんません」

指の米粒食ってる領主って。


「なぁ、昨日手ぇ繋いで散歩しとったらしいぞ」

「それ、絶対2人に漏らすなよ」

「なんで?」

「ええネタやん。使えるで」

「うっわー、根性わるー」

「そんなもんタケシさんの方が上手やし」

「そやな。貯めとこ」

「うん、貯めよ」





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