偶然の新素材
コンドウ家定例会議。
徐々に工房の建設が進み、人も増え、自ずと報告事項も多いのだが......相変わらずカレーを食べながら呑気に会議している面々。
「カツミのとこは人足りてるか?」
「うん。村の人も来てくれてるし、そろそろ本格的にラーメンいける」
「ほなグラニオスとの交渉に入るで」
「はいはーい」ナターシャが手を挙げた。
「それ、わたくしが担当いたします」
「大丈夫?」とルーク。
「皆さんが大変な時期に、わたくしだけのんびりしていられませんわ」
「まあ大変やー言いながらカレー食ってるけど」
「じゃあ任せてみれば、タケシ。僕もフォローするから」
「ほな任せよか。あんじょう頼むわ」
「じゃあ近いうちにわたくし、グラニオスへ参ります」
「あほ、ここに呼べ。こっちの方が上」
「まぁ。そうでもそうですわね。わかりました」
「ルーク頼むな」
「そうじゃ。こんなもんをね」と、バルザが取り出した固まり。
「職人が持ってきたんです。変なもん出来たって」
「何や?」
タケシが触っている。
「カメスラパウダーに、ビールこぼしたらしくて」
「おいこれ.......」
形こそ歪だが、よく見ると気泡が細かく入っている。
「サーシャ。これすぐ検証や」
「何ですか?」
「これなー。べちょっとしてて分かりにくいけど.....スポンジみたいになってる」
「??」
「スポンジって何です?」
「いやだからな、ここ、隙間」
引っ張って割った。
「ほら、小さい穴。ぎっしり」
指でつまむ。
「な、押したら戻る。アキラわかるやろ」
「うん。スポンジ状だね、薄くてわかりにくいけど」
「アキラ、ナターシャに指示してわかる形に仕上げて」
「オッケー」
「またライン増やさなあかんかも」
「またですか」
「何になるんやろ」
「ワシ全然わからん」
「あぁ。もうちょい待って。ちゃんと出来てからな」
と言いつつ冷めたカレーを口に運んだ。
「でさ、何になるの?あれ」
「そうやなー。お前の布団?」
「え?」
「なんちゅうか.....押すと反発するけどゴムみたいにボヨンボヨンせえへんから、マットとかソファーにええな。
んで水にも浮くし、中に空気含むから断熱性とか。
ほんで穴あるからフィルター、つまりろ過する時使うやつ」
「んー。後半わかんない。でもそのお布団待ってる」
「はいはい領主様」
でもーータケシは思う。
ゴムもスポンジも消耗品には出来んしな。
やっぱり本業に使うのがええよなー。
便利よりーー必要。
個人よりーー公共。
難しい........
「タケシさん、スポンジ簡単に行けそうですよ」
「そうかー。ほな畳1枚位の板状で作れるラインだけかんがえといて。次の会議の時にみんなに特徴言えるように整理してな」
「何作ります?」
「いや。まだ決めてない」
「そうっすか。僕もあんまりいいの浮かばないんです」
「まぁうちらの工房で使えるものは優先やからな。そこからみんなで考えよ」
「そうですよね。本当に必要なものって難しくて。ゴムもね。たくさん作れる訳じゃないから......」
そうか。アキラも同じか。
タケシはちょっと嬉しかった。
「そうや。サンプル作っといて。座布団サイズでぎょうさん」
「何するんですか」
「耐久試験いるやろ」
「あー。ヘタリ具合とか?」「そや。あと使用感な。長時間座ったらどないかとかな」
「そうですね」
「乗合馬車に配って、ケツに敷いてもらお。タダでええから。感想だけもらお」
「あー。喜びますね。それ」
「一石二鳥や。データ取れて、宣伝にもなるわ」
スポンジ座布団が出来てくると、ルークはこっそり部屋に持ち込んだ。
「おい。取ったやろ」
「え?お布団でしょ」
「座布団や」
「並べるよ」
「マットとどっちがええ」
「.......返します」
ゴロゴロゴロ。川べりに荷馬車がやってきた。
「あっ、また来た」と集まってくる子供たち。
しばらくすると、荷台から何かがビュンと飛び出してポチャンと落ちた。
何度やってもポチャン。
「今日もあかんかったなー」と、子供たちは帰っていく。
カイエンタイのパチンコ大砲。
大砲とは名ばかりの地味な代物だ。
帰っていく荷馬車を見ながら、タケシとリゥトスがため息をついた。
「子供に笑われてるな」
「笑われてナンボや」
「せっかく様子見に来たのに....がっかりだな」
「まだ発射できるようになっただけまし」
「そうか」
「一発目、木が折れて。鉄に変更したらゴム切れて。ゴム太したら引けんで。その次引っ張っとる奴が飛んで。マジおもろかった」
「なんか、楽しんでるんか」
「いや。俺らもそないして製品化したんや。最初はずーっと失敗するもんや」
「そうか」
「めっちゃがんばっとるぞ。ねぎらってやれよ隊長」
「分かった」
「まーそれにしてもなー」
タケシは、飛んだ男を思い出して笑い出した。
「ギャラリー増えるな、これ」
あ。飛んだ男で思いついた。
「リゥトス、ヘルメットできるかも」
「何?そのヘルメットって」
「頭守るやつ。兜みたいに重くない」
「??」
「そうかー。防具にも使えるぞ」
「防具?」
「大砲出来上がったら、次にやらせるわ」
「え?何を?」
「先に大砲やろ」
「わからんのは気持ち悪いーー」
「あー。めんどくさ」




