青の隊
ウカミー家の広間。タケシとアキラ、ルークが並んで座っている。後ろにウカミー。
ウカミーは村で米を作っている神で、商業ギルドの副長もやっている。先日商業ギルドに行った時に頼み込んだ。
宿舎と商会の建屋がほぼ出来上がり、王都から人が派遣されて来たのだが.....
「村に変な奴来たら困るやろ。念のため。な、ウカミー。頼むわ」
「しゃあないな。見るだけやぞ」
面接会である。以前、王都から派遣された中にもスパイがいた。最初に弾きたい。
タケシは男神連合に頼んで、裏スキルのチェックをすることにした。ざっくり不穏分子が分かれば、オモジイの本音飴で吐かせる。黒確定したら強制送還だ。
「ほんっと神様便利だね」
「いや便利って言うな。そんなつもりない」
今日は文官、鍛冶師、木工師で15名。
当たり障りない会話で全員を面接して、タケシはウカミーを見た。
「これな」
ウカミーが紙を出した。
「変な奴はおらんかったわ」
紙には名前と一言メモ。
「これは?」
「あぁ、スキルと仕事が合ってないやつ。文官でも手先器用な奴とか、リーダー出来そうなんとかな」
「うわー。ウカミー様ー。神ー」
「ワシ正真正銘の神じゃい」
タケシがアキラの頭をはたく。
「助かります。短時間で適正見るのは難しいので」
「あぁ。わかっとる。まぁ頑張れ」
次は町でも求人だ。
商業ギルドを通して募集したら、殺到してしまい、総勢100人近くなった。
ミナセは今、移住者も増え、準国営工房の仕事となると、当然だろう。
仕方なく、職種ごとに分けて数日かけて面接することにした。
もちろん、男神連合から誰か1人付いてくれている。
「ねぇタケシ、今日の神。チャラいけど大丈夫?」
「あ?クニオか?今日は鍛冶師やから大丈夫やろ」
「タケシー。なんで僕、鍛冶師なんだよぉ。事務員さんとかが良かったのにー」
「適材適所や」
面接が終わると、クニオがメモを出した。みんなで見る。
「んー。1番、5番」「6と10、12もいいな。「クニオこの15番の▲何や」
「あぁそれねー。鍛冶の腕はすっごくいいけどさ......手癖がね」
「マジか」
「うん。僕は、男を見る目は厳しいよ」
「だよな。ちょっと、サーシャ」
タケシがサーシャに耳打ち。サーシャは合格者と▲を部屋に通して座らせた。
「アピールでお疲れじゃありません。これ、どうぞ」と、飴を配る。
美人にそう言われると、みんな顔を緩めて、ポイッと飴を口に放り込んだ。
「あー。合格や良かったぁ」
「これで親に仕送りできるー」
「へっ。入れたらこっちのもんや」
「??」
▲が口を押さえた。
全員の目が▲へ向く。
「君、帰っていいよ。不合格」
タケシが指をさすと、▲は口をモゴモゴさせながら、部屋を出た。
「タケシさん、オモジイの飴ですよね」
「便利だねーそれ」
「まぁ滅多に使わんけど」
「サーシャさん?かわいいね。僕クニオってーー」
アキラが慌ててクニオの服を引っ張った。
「え?なにアキラ」
クニオはアキラの顔とサーシャを交互に見る。
「あ、そういうこと。アキラ頑張ってねー」
と、サーシャに手を振って帰って行った。
男神連合の面々が集まっている。
「はーいお待たせしましたー」
カツミとアキラが配っているのはーー
カツミ特製チャーシュー麺だ。
「うっほー。いっただっきまーっす」クニオだ。
「旨いなぁ」
「カツミ、店出してくれんか」
男神達はご満悦の様子。
「カツミよ、これで今回のをチャラにするつもりか?」と、オモジイ。
「イヤイヤ、そんなことないよ」あ。バレた。
「えっと、クレス工房回数券付ける」
「2冊じゃ」
「もー。わかったわ」
「ハッハ。オモジイそれくらいにしておけ」と、スサノー。
スサノーは冒険者ギルドのギルド長だ。
「タケシよ、冒険者の件はこちらで見て出してやる。任せておけ」
地方にポンプを広げるには、護衛も必要になる。それを冒険者にと、タケシはスサノーに話していた。
「ありがとうございます」
「あぁ、ヤマトが担当するからな。で、おかわり」
「ワシもじゃー」
「カツミさん。ありがとうございます」
アキラが着ているのは、ヒグチポンプ工房の制服。ブルーに細い白のストライプだ。
「うん。いいね」
「はい。めっちゃいいっす」
工房が出来上がった。
最後にアキラが、=ヒグチポンプ工房=の看板を掛ける。
ミルナの木に車輪の意味の円、そこに水を表す3本の波。
アキラの決めた工房のマークだ。
そしてその横に小さく準国営の証が光る。
アキラはしばらく見つめていたが、クルッと振り向くとVサインを決めた。
作業が始まった。
サーシャと馬車工房のベルディが、指導している。王都からスライムコート革も入荷し、少しずつ製品が出来ていく。
井戸で試運転し、漏れや動きのチェックをし、合格すると焼き印を入れる。
最初は不良品ばかりだったのが、1ケ月程で、ほとんど不良は出なくなった。
次はミナセの町に設置していく。
ミナセで実証実験をして、様々な井戸に合わせて設置できるように、職人の訓練をするためだ。
タケシの馬車工房では、地方に出るための馬車や道具カートを作り始めた。
ルークの要望で、折りたたみカートも作っている。
子供たちの水汲みは重労働だから、井戸に1つずつでも配ってやりたい。壊れてもいい。楽できる知恵がつけばいい。
それなら。と、タケシは無償でカートを出すことにしたのだった。
王都からの指令が来た。
優先順位は王都に任せた。地方領主とのやり取りや生活状況を鑑みる。魔法装置のある所は後回し。当然王都には行かない。
アキラは工房の壁に大きな地図を広げて貼った。赤いピンを刺すと、ルークがその辺りの詳細地図を横に貼って、道や施設の確認をする。
設置が終わったら、白いピンにする。
「まぁ、気の長い事業だよね」
「うん。でも多分、早くやってくれって言い出すよね」
「んー。そういうのは別料金にしちゃおっか」
「それもありだねー」
ポンプ設置隊は1カ月程度の滞在予定。2人一組で2組。2台の馬車で40個を設置してくる。
そしてもう1台の馬車にはノマドやソロバンを積み、商会から1人。その地域の商業ギルドにソロバン普及に行く。
3台の馬車に1人づつ冒険者が付いて、計8人の隊だ。
隊は3つ位に増やす予定で準備中だ。
工房の前に、ブルーの幌の3台の馬車。大きなヒグチポンプ工房のマークと横の準国営の証。
前に並ぶ、揃いのブルーの制服。
「じゃあ、頼んだよ。くれぐれも事故のないように」
アキラは全員に声を掛け、がっちり握手する。
「はい!」隊員が馬車に乗り込んだ。
「行ってきます」
ゆっくりと隊は動き出した。
「いってらっしゃーい」
「がんばれよー」
手を振って見送る人々。
その後ろで、サーシャがうつむいて泣いている。
アキラが何やら囁くと、サーシャをそっと抱きしめた。




