昭和の残光、鬼童の契約
時代は遡り、昭和の終わり。
バブル崩壊前夜の熱狂の中で、
人々が吐き出す「ゴミ(怨念)」の量は、
江戸時代の数万倍に膨れ上がっていた。
当時、野心溢れる若き
テレビディレクターであった鬼童は、
ある「ロケ」のために、禁足地である
この里へ迷い込んだ。
そこで彼は、システムの管理者である
「コトシロ」と対面する。
「今の日本は、かつての石の蔵では足りぬ。
電波を、網ネットワークを、
九地無の結界にする必要がある」
コトシロは、鬼童に一つの提案をした。
それは、究極の「演出」だった。
「お前に、この世で最も輝く『器』を
見つける権利を与えよう。
そいつに日本中の注目を集めさせろ。
そして最後にお前の手で、
その器を壊して、すべての呪いをそいつと共に、
この村へ持ち帰れ。
成功すれば、お前は
この国のメディアの王になれる」
鬼童は、地下の石室で何百体もの
「石化した子供たち」を見た。
彼らは不気味に、
だが正確にリズムを刻んでいた。
そのリズムは、彼が毎日向き合っている
テレビの同期信号クロックと、
完璧に一致していた。
「……面白い」
鬼童は、かつてハクの唇を縫った
あの黒い糸で契約書に署名した。
署名した瞬間、
鬼童の右目の視界は失われ、
代わりに「人間に蓄積された呪い」を
可視化するフィルターが備わった。
彼は都会へと戻り、
狂ったように「器」を探し始めた。
美しく、脆く、
そして最も多くの「愛」を「呪い」へと
変換できる、究極の原材料。
そして、彼は見つけたのだ。
公園のベンチで、
この世の終わりのような声で歌っていた、少年。
有馬蓮を___。




