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朱色のゲートウェイ ー境界ー  作者: 此花 陽
第4章:禁忌の淵
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下顎の墓標と案内人


 村の入り口には、門番のように二本の巨大な柱が立っていた。

 それは鳥居の形をしていたが、一番上の横木(冠木)がない。


 まるで、空を仰ぐことを禁じられた「口」のようだった。


 足元に違和感を覚え、蓮が視線を落とすと、そこには砂利の代わりに、

 無数の**「人間の下顎したあごの骨」**が敷き詰められていた。


 数百年、あるいはそれ以上の年月をかけて積み上げられた、沈黙の残骸。



「……ようこそ、有馬蓮さま。お待ちしておりましたよ」



 霧の奥から、聞き覚えのある湿った声が響いた。

 狐の面を被り、泥一つついていないスーツ姿の男・コトシロが、

 一軒の朽ちかけたやしろの前に立っていた。


 蓮は震える左手でコトシロを指し、問いかけようとした。

 

 だが、声は出ない。


 コトシロは面の下で、蓮の醜悪な姿を愛おしむように目を細めた。



「ああ、言葉は不要です。この村では誰も『声』を持ちませんから。

 ……ご覧なさい。あなたが憧れた、栄光の先人たちの姿を」



 コトシロが社を囲む鳥居の柱を指差した。


 蓮が目を凝らすと、その朱色の柱の表面に、無数の「顔」が浮き出ていた。

 それは見事な彫刻などではない。

 

 かつてこの国で「神」と崇められ、

 絶頂の中で姿を消したスター、政治家、時代の寵児たちの、

 生きたまま石化した本物の顔だ。


 彼らの口は、一様に朱色の泥で塗り固められている。

 

 彼らは今も、この柱の中で生きている。

 自分たちを消費し、使い捨てた大衆の呪いを吸い込み続ける

「フィルター」として、永遠にこの場所で晒されているのだ___。



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