5人娘の日常 - 深夜のおやつ
夜のとばりが下り、街は黄昏色の灯りの下、静寂に包まれていた。
「なんだか夜食が食べたくなっちゃったな……」雛は抱き枕を抱きしめ、ソファにだらりと身を預け、猫耳をぴくりと動かした。
「太るの平気?」梨子は腕を組み、少しからかうような口調で言った。
「むにゃ……でも、お腹がちょっと空いちゃって……」雛は尻尾を揺らし、葛藤している様子だった。
「こんな時間に、本当に外出するの?」葵は眉をひそめた。「最近、学生が連れ去られるって噂があるじゃない?」
詩桜はその言葉を聞くと、たちまち真剣な表情になった。「それって……黒いもの、のこと?」
「そうよ。以前の目撃者は、二人以上で一緒だった人たちだけが見ていて、黒い影が友達を掴んで、そのまま消えちゃうの」梨子は声を潜めて付け加えた。
「わあ……なんだか怖いニャ」雛の猫耳は少し垂れ下がり、尻尾がそっと揺れた。
「早く行って、早く帰りましょう。あまり長く外にいないように」詩桜は言った。
結局、詩桜と葵は一緒に夜食を買いに行くことにした。
「何を買おうかな?」詩桜は提灯が連なる小路を見渡した。黄昏色の灯りに照らされた沿道の木造建築は、静かでどこか懐かしい雰囲気を漂わせている。
「焼き団子なんてどう?」葵が提案した。
「甘すぎるわよ。夜食はもっとお腹にたまるものがいいわ」詩桜は笑って、通りの両側の屋台に目をやった。
「じゃあ、おにぎりは?簡単だし、お腹も満たされるわ」葵はそう言って、前方に提灯が下がった「深夜小食」と書かれた店を見つめた。
店主は、優しそうな老爺で、伝統的なエプロンを着け、炉で醤油団子を焼いていた。空気中には、ほのかな炭火の香りが漂っている。
「おにぎり三つと、団子二串ください」詩桜は微笑んで注文した。
しばらくして、おにぎりと団子は包まれ、二人の手に渡された。二人は熱々の夜食を持って店を出たが、夜の街は依然として静寂に包まれていた。
「帰りましょう――」詩桜はそっと呟いた。しかしその時、遠くの街灯が一瞬点滅し、夜の色はさらに重くなったように感じられた……
帰りの道は、行きよりも一層陰鬱に感じられた。数本の街灯が弱々しく光を放ち、まるで今にも消えてしまいそうだ。
「ここ、学生もよく通るのに、どうしてまだ直さないんだろう……」詩桜は不満げに言ったが、その声にはかすかな不安が混じっていた。
「考えすぎだよ。早く行こう」葵は詩桜の肩を軽く叩き、安心させようとした。
しかし、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、詩桜は突然顔面蒼白になり、震える手で前方を指差した。「あ、あれは……何……?」
前方の道には、黒い塊が無音で蠢いていた。まるで黒い霧が凝縮してできた異形のようだ。
葵は心の中で警鐘が鳴り響き、体が本能的に反応した。詩桜の手を掴むと、低い声で急き立てた。「走る!」
二人は振り返って猛ダッシュし、黒い影もまた勢いよく動き出し、追いかけてきた。
詩桜の足取りは乱れ始め、すすり泣くような息遣いで言った。「ど、どうして追いかけてくるの……?」
葵は歯を食いしばり、素早く決断した。手に持っていた夜食を詩桜に押し付け、躊躇なく詩桜を横抱きにすると、さらに足を速めた。
「え!何するの!」詩桜はたちまち顔を赤らめ、緊張して葵の服の襟を掴んだ。
「今は恥ずかしがっている場合じゃない!」葵は低い声で言い、前方の道を見据えた。
どれくらいの時間走ったのかわからないほど走り続け、二人はようやく息を切らせて五人の共同住宅に駆け込んだ。背後の通りは再び静まり返り、まるで先ほどの光景は錯覚だったかのようだ。しかし、見られているような不安感は、依然として拭い去れなかった。
葵は勢いよくドアを閉め、「ドン!」という大きな音を立てた。その衝撃で、家の中のガラスが微かに震えた。
その音で目を覚ました雪羽は、眠そうな目をこすり、狐耳を不機嫌そうにぴくりと動かし、起き上がって玄関の方を訝しんだ。「どうしたの……?」
リビングでは、それまでトランプをしていた雛と梨子も手を止め、玄関に飛び込んできた二人に視線を向けた。
しかし、目に飛び込んできた光景に、他の三人は一瞬にして言葉を失った――詩桜が葵にしっかりと抱きかかえられ、まだ状況が飲み込めていない様子で、頬を赤らめ、言葉も 제대로話せないでいる。詩桜の手はまだ葵の襟をしっかりと掴んでおり、まるで先ほどの危険な状況からまだ抜け出せていないかのようだった。
「ちょ、ちょっと……あなたたち、一体どうしたの?」梨子が先に口を開き、眉を少し上げ、二人を交互に見た。
雛は目を丸くして、驚きのあまり尻尾を大きく膨らませた。「にゃ?お姫様抱っこ?!こんな時間に一体何をしに行ってきたの?」
雪羽はそっと空気の匂いを嗅ぎ、狐耳を微かに動かし、眉をひそめた。「外に……何かあなたたちを追いかけてきたの?」
葵は詩桜をそっと降ろし、大きく息を吐き出した。その声にはまだ動揺が残っていた。「あのものが……現れたんだ……危うく……捕まるところだった……」
詩桜はごくりと唾を飲み込み、まだ恐怖で震えながら付け加えた。「あ、あれが私たちのすぐ後ろにいて……ほんの少し……ほんの少しで触られそうになったの……」
部屋の中の空気は一瞬にして張り詰め、誰もが息を潜めた。リビングの照明は異様に暗く感じられ、窓の外の夜色はさらに不気味さを増し、まるで黒い影がまだ暗闇の中に潜み、この家をじっと見つめているかのようだった……
どれくらいの時間が経ったのかわからなかったが、その陰鬱な気配は徐々に薄れていった。まるで追いかけていた獲物が逃げ切り、狩人も諦めたかのようだ。
二人がもう大丈夫だと確信してから、自分たちがすでに冷や汗でびっしょり濡れ、心臓がまだ激しく鼓動していることに気づいた。互いに顔を見合わせ、無言で頷き合い、疲れた体を引きずってリビングに戻った。
「やっと……ご飯にできるかな?」詩桜は努めて明るい声を出そうとしたが、声は少し震えていた。
「少し落ち着こう」葵はそう言いながら、二つのコップに水を注ぎ、詩桜と自分に手渡した。
しばらく休憩した後、皆はテーブルを囲み、おにぎりと団子の入った紙袋を開け、この恐怖の夜の後の夜食を食べ始めた。
「ふう……こんな夜には、やっぱり温かい食べ物が合うニャ」雛は団子を頬張りながら、猫の尻尾を揺らし、ようやく安心感を取り戻したようだった。
「食べたらお風呂に入ろう。汗だくのままだと気持ち悪いわ」雪羽は目をこすり、狐耳を無意識にぴくりと動かした。
詩桜と葵は顔を見合わせ、黙って立ち上がり、浴室へ向かった。
二人が風呂から上がり、部屋に戻ると、夜はすでに更けており、皆もそれぞれのベッドに戻っていた。しかし、詩桜は寝返りを打ち続け、どうしても眠ることができなかった。
詩桜は一人部屋で寝ていた。夜の闇の中、先ほどの光景が何度も脳裏に浮かんだ。最後にため息をつき、薄いブランケットを羽織り、こっそりと雪羽と雛の部屋へ向かった。
「……ちょっとだけ、入れて」詩桜は小さな声で言い、そのまま二人の布団に潜り込んだ。
「にゃあ?!何するの!」雛は驚いて目を大きく見開き、猫耳を立てた。
「しーっ、少しだけいさせて」詩桜は枕に顔を埋め、慣れ親しんだ二人の匂いを嗅いで、気持ちを落ち着かせようとした。
雪羽は目を細めて詩桜をちらりと見ると、尻尾を軽く揺らし、最後にため息をついて、少し横にずれた。「好きにすれば……」
雛はぶつぶつ文句を言いながらも、本当に追い出すことはせず、三人はこうして一枚のベッドに身を寄せ合い、夜が静かに更けていくにつれて、ようやく眠りについた。




