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少年たちは、それを探して旅に出る。  作者: イヴの樹
第十二話 南シグルス
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一問一答ゲーム


 次はジャックが質問をする番だ。



「では逆に、お前たちはギン副隊長とどういう関係だ?」

「旅の途中、アルバ王都で乱闘騒ぎになった時にギンさんに助けてもらいました。こちらの質問ですね。ギンさんが副隊長をつとめていたその組織は、何を目的に作られた組織ですか」

「……」



 暗に、お前はどこの組織のもんだと聞いてみた。

 男は一瞬だけ迷ったようだが、ミサキのほうをちらりと見て「隠すようなことでもないか」と独り言をもらした。



「シグルスとジパール帝国の同盟を阻止し生物兵器の開発を止めることだ」

「……同盟」



 チラッとミサキを見てみた。

 が、ミサキは物憂げに考え込んでいるようで、その心情は読めない。


 同盟か。

 シグルス大国はかつてジパール帝国の植民地だったこともあり、良い意味でも悪い意味でも深い関わりがあったことは知っているが……。

 シグルスは先進国ではあるが、他国からの侵略に備えるには軍事力にやや不安がある。結ぶとしたら軍事同盟だろうか。



 彼の立ち位置がわかったところで、ミサキとの関係図を整理しよう。

 生物兵器の開発を阻止したいジャックが、ミサキを襲ったということは……ミサキは開発側の人間ということになるのだろうか。だが、彼女は記憶の断片から「生物兵器を止めなければいけなかった」と言っていた。矛盾している。



「次はこちらの質問だったな。先ほど『探し物』と言っていたが、お前たちは何を探しているんだ?」

「……」



 直球の質問をぶつけられて、返答に迷う。

 お前も手の内を見せろ、ということなのだろう。


 しかし探し物と一言で言っても、セナとミサキでは探しているモノが違うのだ。

 これは少々、小ズルイが……『嘘は言ってない』作戦でいこう。



「ここにいる弟とは血がつながっていないので、彼の本当の親を探している」

「……そうか。それはデリケートな問題だった。もしも気分を害したなら謝ろう」

「「え?」」



 まさかそこで謝られるとは思わず、兄弟は間の抜けた声を出してしまった。

 理性的な様子から粗野な人物ではなさそうだとは感じていたが、思ったより情に厚い人なのかもしれない。



「おまえ、良心が痛まねえか」

「ちょっと……やりにくくなってきた」



 兄弟でヒソヒソ話し合っていると、彼に「次はそちらの質問の番だろう」と催促されてしまった。


 さて。少しだけ彼の人柄に触れてほだされてしまいそうになるが、そうは言っていられない。彼がミサキの命を狙っていることは事実なのだ。

 そろそろ、そこらへんの事情を知りたいところ。



「あなたは出会った時に彼女を『仕留め損なった』とおっしゃいましたが、最後に彼女を見たのはいつですか?」

「はっ。それはその女が知っていることだろう」

「ではペナルティということでよろしいでしょうか?」

「ぐ……。取り消す、答えよう」

「まあ、いいですよ。セーフで」



 どうやらミサキのことになると冷静ではいられなくなるらしい。よほど恨みがあるのだろうか。



「五年前にその女が乗った馬車を襲い、たまたま現れたリヴァーレ族のせいで見失った時が最後だ」

「……っ」



 ギュッと、ミサキの手がクリンの左手を握った。その手は震えているようだった。



「ではこちらも聞かせてもらおう。その女がよりにもよって聖女様と一緒にいるのは、いったいどういう了見だ」



 よりにもよって、とはどういうことだろう。まるでミサキが聖女といることが好ましくないように聞こえる。

 マリアとは友達だ、ということは伏せておいたほうがいいだろうか。



「彼女は聖女の付き人としてプレミネンス教会から聖地巡礼の旅に出ました」

「……なに? そんなばかな!」

「こちらの質問の番です。彼女のことをご存知のようですが、人違いだと困りますので彼女の名前を確認させてください」



 これならば、相手に記憶喪失ということは気取られないだろう。

 そんな目論見ばかりに目がいっていたので、彼が返した予想の斜め上をいく回答に、受け身を取れなかった。



「人違いなわけがない。彼女はジパール帝国を統べるヴァイナー皇帝の第一皇女(おうじょ)、ミランシャ・アルマ・ヴァイナーだ」

「……」



 四人、全員が言葉を失う。

 うつむいたミサキの顔は真っ青だった。クリンは無意識に、つないでくれた彼女の手を強く握り返した。

 


「こちらからも尋ねよう。ミランシャ・アルマ・ヴァイナー皇女。あんたは帝国で聖女撲滅運動の第一人者だろう。なぜ聖女と関わり、こんなやつらといるんだ。いったい何を企んでいる!?」

「やめてください!!」



 ミサキの叫び声が屋内に響き渡った。



「もう聞きたくありません! 知りたくない! お願いだからもうやめて!」

「ミサキ! 落ち着いて」



 マリアがぎゅっとミサキを包み込む。

 まだ色々と聞きたいことはあるが、彼女の精神がもちそうにない。クリンはこのゲームを終わらせることにした。



「彼女の名前はミサキ・ホワイシアといい、その皇女のことは存じ上げません。以上、こちらからの質問はすべて終了したので、ここでゲームセットです」

「待て! まだ聞きたいことがある」

「しつこい」



 ジャックが動き出そうとしたので、セナが剣を構え直した。その構えを見て、彼は鼻で笑った。

 


「なんだ、その下手くそな構え方は。剣に覚えがないと見える」

「ねえよ、そんなもん。でも、喧嘩で負けたことは一度もない」

「ふん。お前の生きてきた世界はずいぶんと小さいようだ」

「……はぁ?」


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