灰色の春
五月一日。
「あー…」
目の前には焦げ茶色の木目。
徐々に頭の中の眠気という名の霞が晴れていく。
遠慮なく大きなあくびをしてのそりと体を起こす。
「んー…」
恐ろしいまでの倦怠感。
体は栄養を早くよこせと催促の音を鳴らせる。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…きゅるるるる…
芸術性のかけらもない音が部屋に鳴り響く。
「そんなに催促されてもなぁ」
腹に手を当ててみるがそんなことで、空腹が収まるはずがなくより一層腹は喧しく騒ぎ出す。
ぐるるるるるるるるるるる…きゅるるるるるるるる…ぐごごごごごごごごごごご…
明らかにおかしな音が一人だけの部屋に響く。
早くよこせ、今日一日の活動のエネルギーを早くよこせ。
そう催促するのはわかる。
分かるのだが…
「だりぃ…」
そのエネルギーを摂取するために使うためのエネルギーを使うことすら面倒クサイ。
自炊しようなんてもってのほか。
もっぱらコンビニ弁当ですませている。
「腹、減ったな…」
重い体を起こして俺はのろのろと服を着る。
腹が減ってはなんとやら。だ。
ついでに習慣になっている立ち読みでもしてくるとしますかね。
ふと、部屋の真ん中においてある炬燵(春夏秋冬いつでも出してある)の上においてあるノートパソコンに目がいった。
この部屋の俺の財産の中で一番高価な物
ちなみに二番目はPS2。
パソコンの中は俺の趣味のデータが所狭しと詰め込まれている。
あ、だからって、エロ画像とかじゃないぞ?
いや、少しは入ってますが…。
えぇ、そりゃ健全な男子学生ですから。
「…、心の中で誰に言い訳してるんだ。」
気まずく、一人つぶやく。
そう、俺の身分は世間一般には「学生」
実際は、両親の仕送りで生活していて、大学も休みがちなただの穀潰しである。
アルバイトはやっていない。
趣味は音楽とパソコン。
日がな一日インターネットや、ゲーム、音楽を作って遊んでいる。
「ふぅ…」
なんか、へこんだ。
自分で自分の状況を整理してへこむことも最近は多くなってきている。
それだけ危機感を持っているのだろう。
それでも、楽な生活が染みついた体はまともに勉学に励もうとする心をいともたやすく懐柔してしまう。
「いつまでもあると思うな親と金…か」
両親に昔聞いた言葉だ。
明日からまじめに学校に行こう。
そう思ってずるずる過ごしてしまった。
♪〜!!♪♪!!
独特の音が部屋にこだまする。
携帯電話の着信音だ。
「はい。…ん?あぁ、大丈夫、大丈夫」
両親から。
「学校?ちゃんと行ってるって」
嘘。
「何とかなってるって。平気平気」
嘘嘘。
「ん。友達だっているし、大丈夫一人暮らしも何とかやってるから」
嘘嘘嘘。
「心配性なんだって。何なら様子でも見に来る?俺はいつ来られてもいいけど」
嘘嘘嘘嘘。こられては困るのに来ないことを知っているからこそつける嘘。
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘。。。。。。。。。
「ん。分かった何かあったら電話するから。それじゃ」
さよならと同時に心の中で「ごめんなさい」と謝る。
嘘をついていることに大してなのか。
こんな生活をしていることについての謝罪なのか。
それすらも分からないが、ただ、謝るのが癖になっていた。
「さてと、飯でも買いに行きますかね」
上着を羽織り、寒いのか暑いのかよく分からない5月特有の微妙な朝の世界に身を投じる。
考えてたって仕方がない。いつかこんな生活をぶち壊してくれる何かが起きるさ。
そう心に願い俺はいつものコンビニへと足を運んでいく。
一週間前顔も名前も知らない仲間たちと一昼夜を共にして作った名もない歌を口ずさみながら。




