青い夏〜初めまして見知らぬ友達
自分の書いている小説に「SOULEATER」というものがあります。
それの数年後のお話です。
とくに過去作品を読む必要もありません。
一応知識程度ってことで。
夏の暑いある日。
黒い服を着た集団がひとつの石の前に佇んでいた。
全身を目の前の・・・・・いや、周囲に同じように佇む長方形の石に合わせたような真っ黒な服装。
普段の生活では早々見ることの無い光景。
いや、職業によっては飽きるほど見る光景だろう。
あるものは、ハンカチで目元をぬぐい、あるものは呆然と石を見つめる。
またあるものは何かを堪える様に空を仰ぐ。
その空は、青かった。
底なしに青かった。
夏の日にふさわしく清清しいほど突き抜けるような青さで彼らを見下ろしていた。
カッカッカッ…
場に似つかわしくない単調に、しかし軽快に鳴らされるリズム。
最初は小さくそして徐々に大きくなるベースの音。
流れるように刻まれる歌うようなキーボードの音。
存在感を出しながらも、全体を支えるドラムの音。
ばらばらに各々の楽器を演奏する青年たちは、何かを待つように一心不乱に各々の楽器を奏でる。
「初めまして…こうして皆さんの前に出るのは初めてですね…」
澄んだような女性の声。
それは、長方形の黒い石の上におかれたラジカセから流れる電子音。
三人の楽器の音の中でもしっかりと聞こえる。
その声を聞き、さらに嗚咽を堪える人々。
それでも三人は演奏を止めない。
「じゃぁ、聞いてください!最初の曲は、私たちの名前を取った…」
そこで、三人楽器は始めてひとつの音を出した。
空は青く、吸い込まれるように彼らの音楽は空へと向かって奏でられる。
―Names less―
4月某日
東京都渋谷駅。
銀色に黄緑色のラインを引かれた山手線は、相変わらず大量の人々を運ぶ。
押し合いへしあい各々の目的地までどうにか自分の陣地を守りながら進む。
「渋谷〜渋谷〜」
間延びした男性の声と共に開いたドアからまさしく「ドッ」という感じで流れ出す。
「毎回思うが、この人はどうにかならんのか」
黒縁の眼鏡をかけた男性がハンカチで汗をぬぐいながらぼやく。
「さすが、東京って感じだよねぇ…」
その横にいた青年が少し疲れたような声で返事をする。
「クソっ何度も足を踏みやがってあんのオヤジ!」
こちらは怒り心頭!といった感じで髪の毛を金髪に染め上げた男が声を荒げる。
そんな三人を気にも留めず人々は川の流れに身を任せるように、せわしなく歩んでいく。
「なんか、忙しないねぇ…」
その流れを見ていた青年はボソリとつぶやいた。
「おれ等引きこもりには関係ない罠w」
眼鏡が大げさに肩をすくませるジェスチャーをする。
「それはお前だけだ。」
即座に金髪が反論する。
立ち止まっていた三人もいつしか回りの流れに乗って、改札口を出た。
アナウンスに負けないぐらい大きな騒音に閉口しながら歩いたのは言うまでも無い。
渋谷駅
ハチ公前
「で、ユイはまだ来てないのか。」
金髪は少し苛立った口調でタバコを咥えながら青年に聞く。
「まだみたいだね。バスが少し遅れてるみたいだ」
そんな金髪に臆することなく青年は携帯電話で時刻を確認しながら返答する。
「もう少しのんびりできないのか、田舎モノw」
黒縁眼鏡のおちょくるような口調にピクリと金髪の血管が浮き出す。
「このッ…!」「まぁまぁまぁ!人が多いしおとなしくしててくれ…」
今にも飛びかかる勢いの金髪を諌めながら周りを見渡す。
平日にもかかわらず、忠犬の周りに集まっている人、人、人…
スーツ姿の人もいれば、普段着姿の人、はたまた高校だか中学校の制服を着たままの人。
または、それ以上に存在感を放っている数こそ少ないがメイドのような服を着た人ナドナド。
うんざりしそうな人の海を眺めていると、ふと青年の携帯電話が着信を告げた。
「ん…ユイからだ」
左耳に携帯電話を当て、右手で反対の耳をふさぐ。
「もしもし…」
金髪と眼鏡の二人はその様子をじっと見詰めている。
青年は、ゆっくりと向きを360度動かしながら会話をしている。
どうやら「ユイ」という人物は近くにいるようだ。
「―ッえ?だから、忠犬ハチ公の前…」
「だから、忠犬の前に私もいるってば!」
「いや、だからどこに…」
気が付けば携帯電話を使いながら目の前で話をしている男女が二人。
「あ…」
「え…」
「アホだな」「バカかとw」
顔を赤くする二人に対し、様子を見て笑う二人。
「初めましてだね。ギターパートやってたカズキです」
「ドラムを叩いてたテツヤだ」
「キーボード弾いてたタイル」
三人が各々勝手に自己紹介をし、遅れて女性が自己紹介をした。
「初めまして。歌詞を書いてたユイです。よろしく」
少し茶の入ったショートカットの髪の毛が高く上った太陽の光を浴びていた。
『よろしく』
男三人は予期せず声を合わせてそう言った。
四月某日
暖かい日差しどころか、少し暑くさえ感じるこの。
日遠くて近くにいた四人は初めて出会った。




