ゴブリンの正体
藤原を始めとした喫茶店の従業員達が退勤した後、俺はゴブリンの言う通り更衣室で待機していた。
他の従業員には店長と相談があると言って誤魔化したが、俺が喫茶店を辞めるのではないかと話が大きくなり、誤解を解くのに少し時間がかかってしまった。
時刻はもう少しで23時を回ろうとしたとき、更衣室の扉からノック音がする。
『待タシタな。 付イテキテくれ』
警戒しながらもゴブリンの後ろについていく。
喫茶店は1階と2階で経営されており、1階がキッチンとカウンター、そして数個のテーブルがあり、2階は全体的にテーブルが設備され全部で30人ほどのお客さんが訪れる事ができる。
そして3階には店長が暮らされている家となっているのだが・・。
「キッチン?」
ゴブリンが連れてきたのは1階のキッチンにある奥の部屋。
従業員の誰も知らない開かずの扉とされているその部屋は、ここにバイト入った時に加納さんに聞いた事がある。
(あぁ、あの部屋? 昔、この店を建てた店長の旦那さんが元々使ってたみたいなんだけど、旦那さんが亡くなってから使わなくなって物置になってるみたい。 私の予想ではおそらく旦那さんが残したお宝が眠ってると思うんだけど、タケルンどう思う?)
そんなくだらない予想と共に、店長の旦那さんが関わっているからあまり気にしない方がいいと思って忘れていた部屋に、ゴブリンは当たり前のように扉を開ける。
『コッチだ』
部屋だと言われていた扉の奥は、地下へ繋がる階段となっていた。
誰もいない店内。
夜も遅い時間。
そして凶悪なモンスター。
これだけの関わっていけない内容が揃っていると流石に足が竦む。
明らかに人気のないところで人を殺す手口そのものじゃないか。
だけどまるでその気持ちを汲み取ったかのようにゴブリンは扉を開けっ放しにする為に近くに荷物で扉を支え閉められない状態を作った。
『安心シロ・・と言ウニは難シイダロウガ、お前二危害を加エルツモリはナイ』
「・・・」
返事はしない。
だけどゴブリンは俺の顔を一度見上げるとそのまま地下へと降りて行った。
緊張が走る。
心臓の音も頭の中で響くようにうるさい。
「・・ふぅ~・・」
落ち着く為に小さく息を整えて、俺はゴブリンの跡を追いかけた。
◆
地下の階段は思ったよりもすぐに終わり、降りた先にはまた1つ扉があった。
先にゴブリンが先に入ったからか、すでに開けられており、上の扉同様で開けっ放しとなっている。
部屋に入るとそこは確かに色々な物が置かれており、加納が言っていた通り物置として扱われているようだ・・が、なんとも不思議な物が色々と置かれている。
頭の骸骨をしたガラスの置物に、ボロボロの箒、他にも埃が被った無数の本に何に使うのかも分からない道具らしきもの。
遠慮なく言葉にすればガラクタだらけの物置だ。
『足元気ヲツケロ。 ココに人ヲ呼ブことにナルトは思ッテイナカッタから掃除シテいない』
「それはいいけど、いい加減に話ってやつを聞かせろよ。 昨夜は問答無用で殺そうとしてきたのに今度は話をしようなんて、正直こっちは信用してないんですけど」
するとゴブリンは『フッ』と笑みをこぼす。
『信用もシテイナイ相手の言う事ヲ聞イてココまで付イテきたのか? 少シ平和ボケがスギルんじゃないか?』
「ぐっ」
モンスターに正論を諭されて反論できないでいると再びゴブリンはクスリと笑みを浮かべた。
『まァ、コレだけ平和な世界ナンだ。 警戒も薄レルとイウものか』
ゴブリンはそう言いながら埃の被った椅子を雑巾で軽く拭くと、1台を俺に渡してきた。
『マズハ、謝罪からサセテくれ。 昨夜は襲いカカッテスマナカッタ。 コチラノ都合でお前には一度死んでモラワナければナラナかった』
やはり殺す気だったんじゃねぇか。
『ソシテ改めて自己紹介カラ。 オイラの名前はアグリー。 コノ世界とは別ノ異世界カラ召喚サレタ勇者の仲間の1人だ』




