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決意

朝靄の中、まだ陽が昇り切らぬ森の小道に、二つの影が並んでいた。

一人は旅人風の青年――レオン。そしてもう一人は、粗末な外套に身を包んだ少女――アメリア。


「本当に、もう行くのか?」


レオンの声には、名残惜しさが滲んでいた。

アメリアはこくりと頷く。手には、小さな革袋と、荷物を包んだ布。彼女のすべてがそこに収まっていた。


「……世話になりました。レオンさんにも、フェンリルにも……」


フェンリルが小さく鼻を鳴らし、アメリアの手に鼻先を寄せる。

その温もりに、アメリアは自然と微笑んだ。


「生きていけるかどうか、不安だけど……でも、立ち止まってばかりじゃ、きっと変われないから。」


その言葉に、レオンは静かに頷いた。


「このお守りをやる、きっとお前を守ってくれるはずだ。」

レオンは赤い宝石のついたピアスをアメリアにつけた。

アメリアは驚き、そしてはにかみながら、ぺこりと頭を下げた。


「……ありがとう。」


少女は背を向け、小道を歩き始めた。その背中は小さく、細く、けれど、しっかりと前を向いていた。


(……これでいい。あの子は、“あんな世界”に戻るべきじゃない)


レオンは腰のベルトに手をやり、そこに隠した小さな通信石をそっと握りしめる。


(グレイスフィールド伯爵家。お前らの罪、必ず暴いてやる……)


あの屋敷で、少女にした仕打ち。

捨てられ、飢え、殴られ、嘲られ――それでも希望を捨てなかった少女を、レオンはもう“他人”だとは思えなかった。


(アメリア……お前は知らなくてもいい。だが俺は、お前のために動く。あの笑顔を、二度と曇らせたくない)


「……行ってこい、アメリア。お前の人生は、これからだ」


小道の先、朝日が雲間から差し込み、アメリアの歩む先を照らしていた。

レオンはその光を見つめながら、静かにその場を後にした。



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