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耐える男  作者: 未来
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プロローグ

 私の名前は平田和夫。48歳、妻と2人の娘を養うサラリーマンだ。さして、他人に自慢できるような経歴や地位はもっていない。ごく普通の学生生活を送り、地元の国立大学に現役で入学し、現在の会社に雇われた。結婚したのは27歳の時、親戚のお節介な叔母さんがセッティングしたお見合いで妻の美恵子と出会った。美恵子の第一印象は、「普通」だった。ほっそりとした体つきに控えめそうな顔。見た目も、学歴も、勤めている会社もすべてが「普通」な私は、妻となる女性もこんなものかと納得していた。その後、2人の娘が誕生し、会社でも順調というほどでもないにしろ、まずまずのペースで出世し、現在は課長というポジションについている。

 そんな平凡な人生を送ってきた私だが、唯一、他人に誇れる特技がある。それは、「耐える」ことだ。私は「苦しみ」や「困難な状況」に対して、人一倍の耐性を持っている。中高のマラソン大会では必ず上位入賞していたし、辛い受験勉強にもなんとか耐えてきた。

 しかし、そんな私の「耐える」能力も現在の生活の巨大なストレスの前ではほぼ無力に等しい。このストレスの主な原因は何か。

 第一の要因は妻・美恵子のピッグ化が挙げられる。結婚当初は触れれば崩れそうなほど華奢な身体だった美恵子は三食昼寝付きの生活を謳歌するうちに、順調に肉をつけていった。今では、マツコ・デラックスと見間違えるほどの体格にまで成長してしまった。私は心の中で美恵子のことをリトル・マツコと呼んでいる。私が汗水たらして働いた金がほっそりとしていた美恵子をリトル・マツコに変えてしまったのかと思うとやるせない気持ちになってしまう。

 そして、第二の要因は思春期の娘たちの冷たい視線である。かつては、「こんなに可愛らしい生命体が地球上に存在するのか!」とまで思っていた2人の娘たちも、今では17歳の高校生と14歳の中学生にまで成長した。私からしてみれば、今でも十分可愛らしい自慢の娘たちなのだが、思春期特有のオヤジ・パッシングを始めるようになった。長女の千春とはもう3年近くまともな会話をしていない。それでも、次女で末っ子の美沙紀は心の優しい子で、私の野球観戦に付き合ってくれてたりしたのだが、とうとう、「ちょっと、お母さん!お父さんの洗濯物と私のは別にしてっていってるでしょ!」とか言い出すようになって来たのだ。朝に私が先にトイレに入っただけで舌打ちをしだす始末。ああ、あの可愛かった天使はどこへ行ったのか。

 第三の要因は、部長のヅラだ。私の4つ上の部長には、入社以来ずっとお世話になっている旧知の仲だ。彼は「パーフェクト」な男だった。仕事は誰よりもでき、容姿端麗、またそのおおらかな性格で上司からも部下からも慕われるという、まさに「パーフェクト」な存在だった。ただ一点、「若ハゲ」だという事実を除いて。そんな部長が数ヶ月前に突然「ヅラ」をかぶって出社してきた。何の前触れもなく明らかに不自然なボリュームの黒々とした物体が部長の頭上に現れたのだ。私はこの件をどう対処していいのか、ここ数カ月ずっと悩んでいる。…突っ込んでいいのか?…触れない方がいいのか?部長はあくまでポーカーフェイスを貫いている。私も平常心で接しようと試みるが、ついつい視線は部長の頭部に行ってしまう。それをなんとか自制しようとするのがなんとも大変な作業なのである。

 しかし、私はこの3つのストレス要因をなんとか耐え続けてきた。だが、この日、私は限界を迎えることになる。そう、すべての始まりは、妻の美恵子が変な韓流ドラマにはまったことからである。そのドラマを見て、発情したリトル・マツコはこの夜、私に身体を求めてきたのである!!

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