好物
「パクパクパク....! もぐもぐもぐ....! んー! 美味しいー!」
机の上には色々な貝料理が並べられて、あたしはその全部を食べる勢いで口の中に入れる。
「そんなにがっつかないの。料理は逃げないから、もっとゆっくり食べなさい?」
「んんー....はーい!」
ヒガサちゃんに口元を拭いて貰って、あたしはまた料理を食べる。だって美味しいんだもーん! 料理の種類で言えば、そんなに多い訳じゃない。調味料とか、そんなにこの船には積まれていなかったから。
「あらあら」
「だって美味しいんだもん! ヒガサちゃんの料理は、ぜーんぶ美味しいだもーん!」
「ふふ、嬉しいじゃない。けれど、私の分も残しておいてよね?」
「....! 結構、無くなってるっ!」
あたしそんなに食べたっけ??
「だから言ったでしょう? もっとゆっくり食べなさい」
「はーい!」
それでも、貝を獲る手は止まらなかった。
「ふー....ごちそうさま。お腹いっぱーい....」
「ごちそうさまでした。....すごく眠そうね?」
「んー....くふあぁ....」
頭フワフワして....あくびも出る。動いてお風呂入ってご飯も食べて....今日はもう寝るだけ....
「ヒガサちゃん....一緒に寝よー」
「食器の片づけを手伝ってくれたら、一緒に寝てもいいわよ?」
「はーい....」
眠い目を擦って、机の上のお皿やコップをシンクに運ぶ。ヒガサちゃんはお皿を洗って、貝殻を詰めた袋をあたしに渡して来た。
「貝類も立派な資材よ。少し重いけれど....これ、運んでくれるかしら?」
「はーい」
ぎっしり詰まった袋を両手で持ち上げて、あたしはエニィクラフトへ向かう。
ガラガラと音を立てて、物資搬入口へ貝殻を入れる。何でも、石鹸とかチョークになるらしい。これで前に取って来た学校セットと合わせて、授業を再現することができる。
「楽しみー」
....? ふとエニィクラフトの画面を見ると、見たことの無い項目が追加されていた。....あー、何か、ごはん中にヒガサちゃんに言われてたかも?
「んー....何だろう? 紐みたいなアイコンだ....金属類とゴム類? ワイヤーとかかな?」
まあ、後で聞けばいっか。
「ふあぁ....んー....眠い、早く戻ろう....」
少しふらつく足取りで、あたしは給湯室へ戻って行く。
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半ば眠りかけのアマガサを連れて、仮眠室へ来た。今日はアマガサの布団で一緒に眠る。
「ふわふわー....」
「貴方、結構ぬいぐるみが好きよね?」
「うん。特に猫さん、ふわふわだよー」
真っ白な猫のぬいぐるみを抱き、顔を埋めてグリグリと左右に動く。
「あとヒガサちゃんも好きー」
「....。ふふ、そう」
布団の中に入り、アマガサが私の胸の中に顔を埋める。フリルの装飾はアマガサ的には気持ちが良いのか、スリスリと頬を擦って可愛らしい笑みを浮かべている。
「今日もありがとうね。ゆっくり、おやすみなさい」
「んー....おやすみ、ヒガサちゃん....」
ほんの少しして、アマガサの小さな寝息が聞こえて来る。幸せそうに、心地よさそうに、ぐっすりと眠っている。
「....本当、可愛い子ね」
「んん....」
アマガサの頬を指で突くと、アマガサはくすぐったそうに寝返りをうった。....私はゆっくりとベットから降り、極力音が鳴らないように部屋の扉を開けて外に出る。
「おやすみ、アマガサ」
アマガサが外で頑張る分、私は船の中で仕事をする。やって来たのはエニィクラフトのある合成室。けれど、アマガサが寝ているのにこの騒音問題の塊のような機械は動かせない。
「....構造は分かっているの。後は、技術が追い付くか....」
第一倉庫から破損したレコードを持ち込み、私ははんだごてを構えてレコードの修復作業に取り掛かる。
アマガサの取って来たアップデートモジュールは、船舶用アンカーの設計図が入っていた。船同士の結合や、海底人工物を引き上げるためのクレーン船の設備だ。もちろん、エニィクラフトを使えばこの船にも取り付ける事ができる。用途は....かなりありそうね。
「さて....始めましょう」
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【…月....日、最初の記録を始める。僕は....灯台勤務のエンジニアだ。....ここに閉じ込められて、もう....くらいか。救助は....恐らく....。もしもの為に、僕の知っている事をここに....。誰かの役に....】
【灯台の木箱に....が入っている。もし....を見つ....のなら、ぜひ有効に....くれ。民間でも....でも使えるはずだ】
【....の観測結果では、この海面上昇の....は、南にある。....があった場所....。今も稼働しているかは分からないが、もしそうなら人が居るはず....。原因の排除か、原因その者かは分からないが....誰かは....】
【(破損)】
【もし....もしでいいんだ....。僕が死んで、誰かがここに来てこれを聞いてくれたのなら....僕の死を、北に居る祖母に伝えて欲しい。....のは、可哀そう....。氷海地帯の....】
【(損壊)】
【この声が、誰かの希望に....】
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操舵室の計器をなぞり、航海マップを開く。私達がこの3年間で進んできた航路が、事細かに記録されている。
「…南には、もう誰も居無いわよ....」
北上して来たこの船の航路が、はっきりと記されている。




