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■第147話 エピローグ

 その後、モニカたちが夕食を乗せたワゴンを引いて戻ってきた。


「うわぁ、なんか凄い量だね」


 テーブルの上には大量のステーキとサラダ、そしてスープが並んだ。


「はい、ブラッドホーンのお肉がたくさんありましたので」


「これ食べ切れるのかな?」


「案ずるな、余ったら我が食べる」


 クロがナイフとフォークを握りしめ、嬉しそうに料理を見つめていた。


「それからクレアさまにはこちらを」


 モニカが私の前に差し出したのは、お茶碗に盛られたお米であった。


「おお! 久しぶりの聖公国のお米だ」


「ふふっ、クレアさんは本当にお米が大好きなんですね」


 ルーナはお茶碗を抱える私を見て、くすりと微笑んだ。


「うん、やっぱりお米が一番だよ。いただきまーす!」


 まずは、ステーキをお米の上にのせる。

 タレが染み込んだところを、お肉と一緒に口に放り込む。


「うーん、最高! やっぱりこれだよね」


 噛むたびに肉汁とタレの旨味が広がり、その後を追いかけるようにお米の甘みが口いっぱいに広がる。


 すると、それを見ていたアリスが声を上げる。


「その食べ方うまそうだな。モニカ、私にもお米を」


 お姫さまに教えるにはちょっと下品な食べ方かもしれないけど。

 美味しいからいいか。


「はい、どうぞ。アリスさま、お野菜もちゃんと食べてくださいね」


「うっ、わかってるよ」


 アリスはしぶしぶサラダの皿を手に取る。

 すると。


「うん。この葉っぱ、シャキシャキしててすごく美味しい」


 その隣でセレナは葉物野菜に夢中になっていた。


「セレナ、じゃあ……これも」


「ダメですよ」


 アリスがサラダを渡そうとしたがモニカに阻止されていた。

 そういえば前に聖公国に来た時もこんなやり取りしてたな。

 私は思わず笑ってしまった。

 そんな感じで、久しぶりに何も気にせず食事を楽しめた気がした。


 ◇ ◇ ◇


 そして美味しいご飯の次は温泉である。

 聖公国に来たなら、これを楽しまない手はない。


 しかし、初めてこの温泉に来たときは心臓バクバクだったけど、もう何回もみんなと一緒に入ってるんだ。


 今さらドキドキなんてしない。

 うん、私も成長したものである。


「クレア、またにやけてますわよ?」


 そう思っていたら、アリスがジト目で呟いた。


「あっ、すみません」


 ……全然ダメだったみたいです。

 頬をパンパン叩きながら必死で表情を取り繕い、脱衣場で服を脱ぐ。


 そして浴場に入り、流れるように洗い場に座る。

 そのまま周りを見ないようにササッと髪と体を洗う。

 いや、実はチラチラ見てるんですけどね。

 だって今日は結構頑張ったんだし、このくらいのご褒美はいいよね?

 泡にまみれたみんなの裸体をしっかり目に焼き付けた。


 そして湯船へ向かおうと振り返ると、ルーナとセレナが先にお湯へ浸かっていた。二人は髪を纏めるために頭にタオルを巻いていた。


 私の髪はそんなに長くないけど、あんなふうにした方がいいのかな?

 そう思い髪をタオルで包もうとするがうまくできない。


「あれ? ほどけちゃう……どうやるんだこれ?」


「わたくしがやりますよ」


 モニカが胸を揺らしながら私の頭にタオルでまとめてくれた。

 うーん、相変わらずモニカは凄いね。


「うん、ありがとうねモニカ」


「ふふっ、これくらいでしたらいつでもお手伝いしますよ」


 準備が出来たのでそのまま湯船に向かい足先で温度を確認してから、ゆっくりと肩まで浸かる。


「ふぁ~、生き返る……。今までいろんな温泉に入ったけどやっぱり聖公国の温泉が最高だね」


 肌を包み込む柔らかなお湯が、大変だった今日一日の疲れを癒してくれる。


「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです」


 ルーナは肩までお湯に浸かりながら、どこか誇らしそうに微笑んだ。

 そして、アリスとモニカ、クロも湯船に入って来る。


「あぁー、やっぱり温泉はいいなぁ」


 そう言いながらアリスが伸びをする。


「うむ、これは悪くない」


 小竜姿のクロは湯船の上にぷかぷかと浮かび、流れるままに漂っていた。

 なんかアヒルのおもちゃみたいだ。


「はぁ、平和だなぁ~」


 思わず呟いてしまった。

 こんな時間がずっと続けばいいのに、そう思った。


「ところで、明日はどうするの?」


「ん? そうだな。まだ諸国訪問は終わってないし、一旦シルフィードに戻るべきだろうな」


 そうだ、まだ行ってない国もあるんだった。


「あっ! ルーナさんはどうするの?」


「えっ、私ですか?」


「あ……その。オスカーの件もあるし一緒に来れるのかな、と思って」


「ふふっ、もちろん私も最後までご一緒しますよ」


「そうなんだ、よかった」


 これでまたみんなで旅が出来る。夜空を見上げると、真ん丸な月が優しく輝いていた。つい数時間前までとんでもない魔獣と戦ってたとは思えないくらい、穏やかな夜だった。


 ◇ ◇ ◇


 お風呂の後は各自部屋に案内され休むことになった。

 部屋に入ると、私はベッドに背中からバフッと倒れ込んだ。


「はぁー、いいお湯だったなぁ」


 さて、明日も早いし今日は早めに寝ないとね。

 シーツを被り目を閉じる。


 ふと、脳裏に先ほどまでの光景が浮かんできた。

 しまった、目に焼き付け過ぎたかも……。

 そういえば、今日アリスの胸触っちゃったんだよな。

 でも……柔らかかったなぁ。


 思わず自分の胸を触ってみる。


「んっ……」


 やば、変な声が出てしまった。

 うーん、問題ごとは大体解決したし……ちょっとくらいならいいかな。

 起き上がり、部屋の中をキョロキョロと見回す。


 うん、誰もいない。

 私は明かりを消してシーツに頭からくるまる。


 その夜は――。

 ノーコメントとさせていただきます。

 ただ一つだけ言えるのは、とてもよく眠れたということだけです。


 ◇ ◇ ◇


 そして翌朝。

 朝食を済ませると、私たちはみんなで馬車に向かった。

 またクロに運んでもらうのでそんなに時間はかからないだろう。


「さぁ、行きますわよ」


「待ってくださいアリスさま」


 アリスが馬車に乗り込み、モニカが後に続く。


「さっ、セレナも行きますよ」


「うん」


 ルーナとセレナも乗った後、私も馬車に乗る。

 馬車の中には、いつもの仲間たちがいた。


 お姫さまと優秀なメイドさん。

 聖女さまと元四大魔獣のセレナ。

 そして黒龍であるクロは外で馬車を掴んでいる。


 なんと言うか、おかしなパーティーだよね?

 それでも私はみんなの事が大好きだ。


「じゃあ、クロちゃん。行こう!」


「うむ、わかった!」


 そして、馬車は空へと飛び立っていく。


「よし、クロ。飛ばせー!」


「いや、飛ばしちゃだめだよー! 馬車が壊れちゃう!」


 邪教徒の件もまだ終わっていない。

 吸血鬼の街とかいう絶対に行きたくない場所の話もある。

 正直、嫌な予感しかしない。


 でも――。

 馬車の中で笑うみんなの顔を見ていると、不思議と不安はなかった。


 たぶん何とかなる。

 というか、何とかならなかったらみんなで何とかする。

 私には最高の仲間たちがいるのだから。


 こうして私たちの旅は、まだまだ続いていく。

 きっとこれからも、楽しいことがたくさん待っているはずだ。


 ……まぁ、面倒ごとも同じくらい待ってそうだけどね。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

 これにて一旦【完結】とさせて頂きます。


 沢山のブクマ登録、評価・リアクションありがとうございます。


 プロットすら作らず見切り発車で書き始めた作品なのですが、皆様の応援のおかげで最後まで書ききることが出来ました。


 途中で何度も励まされ、皆さまの反応が執筆を続ける大きな力になりました。

 改めまして、心よりお礼申し上げます。


 クレアたちの旅はまだまだ続いていきますが、ひとまずここで一区切りです。

 少しでも楽しんでいただけたなら、とても嬉しく思います。


 感想、コメントなども頂けると嬉しいです。

(※現在、未ログインの方でもコメントできる状態にしてあります)

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― 新着の感想 ―
毎日コツコツ、お疲れ様でした。 誤字も少なく、適度な分量でするする楽しませていただきました。 ブックマークは残しておこうと思うので、また筆を取った時には読ませていただきたいです。
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