↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/149

■ プロローグ

 ふと気がつくと、なぜか体の感覚がなかった。

 地面を踏む感触もない。風も感じない。

 それどころか上下の感覚すらない。


 辺りを見渡す。

 右を向いても、左を向いても。どこまでも真っ白だった。


 ――え? ここどこ?

 状況が分からず呆然としていると、背後から声が聞こえた。


「あっ起きましたかぁ? ちゃんと意識戻ってますよねぇ?」


 振り返ると、白い衣をまとった女性が立っていた。

 金色の長い髪に、薄青の瞳。

 可愛らしく、それでいて神秘的な雰囲気をまとっている。


「……誰?」


「残念なお知らせです。あなたは亡くなってしまいましたぁ」


「……はい?」


 いや、軽すぎない? なんかコンビニで『お箸付けますか?』くらいのテンションで死亡宣告されちゃったんですけど?


 だが、病院のベッドで過ごしていた日々を思い出し、少しずつ現実を理解する。

 あぁ、そっか。あのまま死んじゃったのか、俺。


「それであの、ここはどこなんでしょうか?」


「ここはですねぇ、いわゆる天国的な場所だと思ってください。私は女神ティリスと申します」


 女神を名乗った女性はぺこりと頭を下げた。


「えっ、女神?」


 これは、もしかしてよくある異世界転生とかさせてもらえるパターン?


「なんと! あなたには今の記憶と知識を持ったまま異世界に転生していただきまぁす」


 おお、やっぱり!

 ……いや待て。


 転生するのはいいんだけど、問題はその後だ。

 魔王を討伐しろとか世界を救ってこいとか言われても困る。 


「あの、異世界って何をすればいいんでしょうか?」


「自由に生きてもらって大丈夫ですよぉ。無理に何かをさせたりはしません!」


「自由に、ですか?」


「ええ、もちろんです。好きなように生きてちゃってくださぁい」


 ふむ、思った以上に好条件なようだ。

 でもその前に、どんな世界なのかしっかり聞いておかないと。


「ちなみにどんな世界なんでしょうか? 魔獣とか魔王とかがいる危険な世界だったりします?」


 せっかく転生してもすぐに死んじゃったら意味ないし。


「皆さん憧れの剣と魔法のファンタジーな世界ですよぉ。まぁ魔獣もいますが、ちゃんと気をつけてればたぶん大丈夫です!」


 そう言ってティリスはにっこり笑った。

 ……今、たぶんって言った?


 その一言で安心感が全部吹き飛んだんだけど?

 本当に大丈夫なんだろうか?


「何百年か前に魔神なども現れましたが、勇者に討伐されてますので今は平和ですよぉ」


「はぁ……」


 勇者とかもいたんだ……ふむ、平和だけど魔獣はいるのか。

 ってことはあれかな? 

 もしかして、よくある転生特典みたいなのを貰えたりするのかな?


 チラッとティリスの方を見る。

 ぽわぽわした感じの優しそうな女神さまだし、一応聞いてみるか。


「あの……平和なのは分かりましたが、魔獣とかに襲われたら死んじゃうと思うんですが? 何か特殊な能力とか貰えたりとかするんでしょうか?」


「はぁい、あなたの魂は少し特殊な肉体に宿っていただきます。特別に私の加護も付けちゃいますしぃ。他にもちょっと盛っておきますので、そうそう死んだりはしないと思いますよぉ」


「盛る、ですか?」


「ええ、盛っちゃいますぅ」


 ティリスは穏やかに微笑んだ。

 何かいろいろ気になることはあるけど……それなら安心かな?


「あと特殊な肉体って、もしかして普通の人間ではないとかですか?」


「人間種ではありませんが見た目は同じですよぉ。あっ! 言葉やあっちの世界の知識なんかの初期設定はこちらで入れておきますので、安心してくださぁい」


 いや、初期設定ってなんだよ……全然安心できないよ。

 ってか人間種じゃないってどいうことだ? 


 しかし、見た目は同じ……なんか気になる言い方だな? 

 あっ、異世界で人間以外ならやっぱりエルフとかかな?

 そういえばエルフって、美男美女ばかりってイメージだよな。


 いや、もしかして俺もイケメンになれたりするのかな?

 なんて、さすがにそれは欲張り過ぎか。

 でも期待ちょっとくらいはしてもいいんじゃないか?

 なんたって転生特典なんだし。


 それに転生させてもらえるだけでもありがたいことだ。

 覚悟を決めて女神さまに視線を向ける。


「わかりました、お願いします!」


「はぁい、それでは送っちゃいますねぇ。新しい人生を楽しんできてくださぁい」


 次の瞬間、白い光に包まれる。

 意識が遠のいていく中で、ティリスの声がまた聞こえた。


「あっ、あとぉ――」


「もし向こうの世界で困ったことが起きたら……少しだけ手伝ってあげてくださいねぇ」


 うっすらと微笑むティリスの姿が見えた。

 いや、絶対それメインクエストじゃん。


「それはなんの伏線ですかぁー?」


 そんな魂の絶叫も虚しく、俺の意識はそこで途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。