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閑章三 孤島へ 17 終


「フラン、ありがとうよ。色々と勉強になった」

「ん。こっちも」

「師匠は大丈夫か? なんなら、私が直すが」


 神剣嫌いでも、さすがにへし折ったら気まずいらしい。でも、いくら腕のいい鍛冶師でも、神剣は直せないんじゃないか? いや、直しつつ解析したいとか?


 まあ、どちらにせよ大丈夫。


『自己修復があるから大丈夫だ。オウナの一撃は神気を纏ってたからか少し再生は遅いけど、問題ない。すでに修復が始まってるしな』

「そうか」


 普通の武器なら、神気によって修復困難になっていることだろう。そこらの鍛冶師に持ち込んでも、直せないに違いない。


 だが、俺の場合は修復に神気を使えばいつも通りだ。まあ、修復はちょっと遅いけどね。


「確かに、もう折れたところから直り始めているな。渾身の一撃だったんだが……。これだから神剣ってやつは」


 フランとオウナの一撃のぶつけ合いはほぼ互角だった。しかし、武器同士の差でフランの勝利と言えるだろう。


 オウナの最強武器は失われ、俺はすぐに修復されて再度使用可能。このまま再度斬り合えば、フランが勝つはずだ。


「オウナが使ってたオウカ流って、なに?」

「ああ、あれか。神に認められた独自流派ってやつなんだが、知ってるか?」

「デミトリス流みたいの?」

「そうそう。それだ。オウカ流、デミトリス流、トエルナージ流の3つだな」


 オウカ流は刀術の派生流派で、特徴は武器の強化にあるという。武技による肉体強化は最低限で、魔力を刀に伝導させることを重視した流派なのだとか。


 要は属性剣をより強化し、魔力伝導率を強化するような武技が多いようだ。


 そんな風にオウカ流のことを教えてもらっていたら、遠くから大勢の人の気配が近寄ってくるのが分かった。


 馬に乗っているようだし、非常に綺麗な隊列である。盗賊や冒険者ではなく、騎士や巡回の兵士だろう。


 フランとオウカの技のぶつけ合いは派手だったからなぁ。まあ、近くに居たらそりゃあ確認に来るか。


「私はいく。取り調べなんぞ受けていられないからな。フランはどうする?」

「私も――」

『俺たちは残るよ。さすがに依頼の最中にこれだけの騒ぎ起こして、無視はできん』

「だって」


 フランが残念そうに肩を落とす。まあ、取り調べって退屈だからな。


「そうか。ならここでお別れだな。できれば、私のことは吹聴しないでくれると助かる。面倒ごとはごめんだからな」

「わかった」

『誰にも言わないよ』

「また会った時は、手合わせしよう」

「ん!」


 別れはさっぱりとしたものだった。普段テリトリーにしている大陸が違うから、また会えるかどうかは分からない。それなのに、軽く手を振って互いに背を向ける。


 まあ、この2人らしいけどね。


『さて、俺たちはここに残って説明をしないとな』

「ん」

「オン」


 10分ほど待っていると、10人ほどの騎馬隊が駆けてくるのが見えた。馬の足で10分もかかったのは、彼らが途中で足を止めたからだ。


 気配察知などで、謎の戦闘者たちの情報を集めようとしたらしい。あれだけの魔力がぶつかり合った場所に、ただ突っ込んでくるのはあり得ないよな。


 彼らを待つ間、休憩の時間が取れたからこちらとしても助かった。その間に、どう受け答えするかも考えられたし。


『フラン、失礼な態度とられても先に手を出すなよ』

「もぐもぐ」


 フランはカレーをかき込みながら頷く。まあ、ランクSになってからは、以前に比べて兵士や騎士からの態度は大分変わったけどね。


 だいたいの相手は下手に出てくるのだ。少なくとも上から目線で命令してくるような手合いは減った。


 相手からもすでにフランの姿が見える距離だが、フランとウルシはモグモグタイム実行中だ。これはあえてである。子供と子犬が飯食ってるとなれば、相手も緊張を解くだろうという高度な駆け引きなのである! フランたちは、食事を続けられてラッキーって思ってるだけだがな!


「え? 子供と子犬?」

「何がどうなって……」


 現れたのは、見た感じ真面目な雰囲気の兵士たちだった。これなら険悪な雰囲気にはならずに済みそうかな?


「お嬢さん、少し尋ねたいことがあるのだが、よろしいかな?」

「ん。ここで戦ってたのは私」

「おっと、お見通しか! なら話が早い。何があったのか、聞かせてもらってもよろしいかな?」


 隊長らしき男性が、丁寧に尋ねてくる。うむ、フランの正体が分かる前から紳士! 気に入りました!


『いいぞ! ここからは俺が説明しよう!』

「うん? なんだ? どこに――」

『ここだ! 俺は師匠! フランの神剣だ!』


 俺が少し浮きながら自己紹介したら、全員が驚愕の表情で固まってしまう。いやー、いい反応だ! その数秒後、隊長が跪いた。部下たちも少し遅れて、慌てて片膝をつく。


 うーん、驚かれないのも寂しいけど、ここまで驚かせるのも心苦しいんだよなぁ。でも、これくらい反応してくれる方が色々とスムーズではあるのだ。


「新たなランクS冒険者様と神剣様とは知らず、ご無礼を――」

『あー、そこまでかしこまらなくていい。偉ぶるつもりもないからさ』


 顔を青くする兵士たちをなんとか宥め、俺はオウナのことは秘匿しつつこの場であったことを彼らに説明した。とりあえず、邪滅協会が全部悪いってことにしておいたぜ!


 以前なら、口下手のフランを通して俺が何とか説明をしていたが、今は俺が喋ってもいいので楽だよね。


「ご協力ありがとうございました」

「ん」

「冒険者ギルドには、できるだけ早く国に報告を上げるようにとお伝えください」


 最初から最後まで丁重だった隊長たちと別れ、俺たちは帰路に就く。彼らとしても押収した資料などが欲しいんだろうが、こっちはランクS冒険者だからね。無理は言われなかったのだ。


 ギルドに戻ると、普通に依頼完了にしてくれた。資料があったりしたのもあるが、そもそもランクS冒険者が解決したと明言したのに、それを疑うなんてありえないらしい。


 今後、依頼解決の報告にも気を遣うな……。立場が上がれば責任も増えるってことなんだろう。


 地下空間へと調査隊の冒険者たちを案内し、依頼を完了した帰り道。駆けるウルシの背で、フランが何やら神妙な顔だ。どうしたんだ?


「師匠」

『なんだ?』

「邪神の眷属、他にもいっぱいいるかな?」

『うーん? どうなんだろうな?』


 邪神の童心もよく分からんようだ。ただ、邪神の眷属は強者でなくては滅ぼすのが難しいし、封印措置でその場を凌ぐというのはあり得るだろう。


『多分、封印されている場所はあると思うぞ? それがどうした?』

「私たちなら、なんとかできる」

『それはそうだが……。もしかして、積極的に探していこうってことか?』

「ん」


 フランがコクリと頷く。ただ、まだ迷いというか、自分の思い付きを形にできていないような雰囲気がある。俺はフランの次の言葉を静かに待った。


「……アマンダは孤児院。イザリオは抗魔と戦ってた」


 フランにとってランクA以上の冒険者は、強いだけの存在ではない。それぞれが社会貢献のようなものをして、世に存在感を示している。


 そうせよという規則があるわけではない。義務もない。ただ、フランの高位冒険者の理想像が、そうなのだ。


 自由に冒険をしながら、時に悪をくじき、時に人々を救う。そんな冒険者像がフランの理想なのである。


 俺が神剣になったことで自動的にランクSになってしまったフランは、何もできていないことを気にしていたんだろう。そして、自分にできることを探していたのだ。


「デミトリスだって、人助けしてる」

『お、おう』


 今、あの傍若無人なデミトリスすらってニュアンスだったよね? フランにすらそう言われるデミトリスよ。


「だから……いろんなところに行って、邪神の眷属見つける」


 俺たちが邪神の眷属相手に有利に戦えるとは言っても、危険がないわけじゃないだろう。邪神の欠片相手にはまだ単独で勝てる自信もないし。


 だが、俺はフランの意思を尊重したい。黒猫族の呪いを解くという目的以外で、初めて見つけた冒険者としての大きな目的なのだ。


『そうだな。それもいいかもな』

「ん! ウルシ。邪神の眷属探しにごー」

「オンオン!」

『いやいや! 今はレンギルたちの所に戻るのが先決だから!』

「うぉー」

「オンオンオーン!」

『話聞いてぇぇぇ!』


閑章三、これにて終了です。また閑章四でお会いしましょう。

来月にはサイン会が予定されていますし、10月からはアニメが放送予定です。

転剣はまだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
アレ? 何処かの島に行く目的(主軸)は何処に行ったの?
強いことは大前提、その上で何を為すか。英雄の道だねぇ!
閑章は続くよ、まだまだ続く~♪ 理想『象』の像……フランちゃんの夢はデカい、と。 「師匠、象って美味しい?」 『食えるらしいし、アフリカ土産でジャーキーが売ってたけど、焼いても煮ても筋っぽくて硬…
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