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閑章三 孤島へ 02


「行き先はハガネ領国。ハガネ将国の属領にして、東の果ての小さな島です」

『東の果てって……』

「これを」


 レンギルが大きな地図を出して、テーブルの上に広げる。


「ほほー?」

「オフー?」


 フランとウルシが地図を覗きこんで何やら頷いているが、2人とも絶対によく分かってないだろ。


『中心にあるのがゴルディシア大陸だな』

「はい。こちらが今我らがいるジルバード大陸です」


 ゴルディシア大陸の西側にジルバード大陸が記され、反対の東側にはカプル大陸という陸地が描かれている。確か、魔族が多く住んでいる大陸だったかな?


 そして、レンギルはそのカプル大陸からさらに東側、一見すると何もない海域を指さした。いや、豆粒みたいな島が描かれているな。


「ここが?」

「はい。正式名称はハガネ将国所属自治領。略してハガネ領国です」

『デカい国なら属領があってもおかしくないが、随分と遠いな』


 神剣ベルセルクを所有するハガネ将国は、聖国シラードと北の大陸を二分する大国だ。ただ、ハガネ領国とは相当離れている。


 距離もあるし、間には航路を遮るようにカプル大陸も存在するのだ。本国からハガネ領国に行くには、カプル大陸を大回りする必要があった。こんな場所、よく見つけたな。


 昔の地球の西洋諸国みたいに、植民地を探すための探検家でも送り出したのだろうか?


「私も詳しい歴史までは分かりませんが、かなり昔に属領として組み込まれたようですよ? 税金もほぼなく、島の人たちは所属国がどうとかはほとんど気にしていないようですが」

『税金がない?』

「ええ。どういう取り決めかは分かりませんが、本当に名ばかりの属領といった様子ですね。我らのような外部の商人に対しても、税はかなり安いです」

 

 それは不思議だな。わざわざ自国の領土にしておいて、その旨みを放棄している? どんな理由があるのだろうか? ルシール商会が取引しているってことは、金になる特産品があるのだろうし。


「政情に関しては問題ないと思いますよ。そもそも人の数もそう多くはないので、自治組織自体もゆるい感じですしね。問題は強力な魔獣が大量に生息しているという点ですが……」

「魔獣強いの? 楽しみ」

「オンオン!」

「フランさんならそう言われると思いましたよ」


 目を輝かせるフランたちを見て、レンギルが苦笑しながら頷く。まあ、この人もフランの性格を結構分かってるからね。むしろ、依頼を受けて欲しくてこの情報を出したのかもしれない。


「ハガネ領国は全体的に魔力の濃い島でして。魔獣の格がかなり高いのですよ。島自体が魔境のようなものだと思っていただければ。我らはその強力かつ高品質な魔獣の素材を仕入れに行っているわけですな」

「なるほど」


 フランはもう依頼を受ける気だろう。ただ、幾つか問題というか、確認しておかないといけないことがある。


『フラン、依頼を受けると暫く船の上での生活だぞ?』

「ん」


 フランは船が嫌いじゃないし、長くても構わないのだろう。


『レンギル。依頼は相手と模擬戦をするってだけか?』

「はい。そうとだけ承っております」

『俺――神剣の力は気軽に使っていいもんじゃない。相手が神剣の力を見たいと思っているなら、申し訳ないが期待には添えない』

「それに関しても依頼の内には入っておりませんので、何か言われても依頼外だと断ってくださって結構です。我らとしましても、フランさんの信頼を失ってまで彼らの肩を持つことはしませんので。まあ、それも事前に鳥で知らせますので、問題は起こらないかと」


 神剣開放しなくてもいいのなら、依頼を受けてもいいかな。神剣を直に観察してみたい程度ならともかく、使って見せろと言うなら拒否するしかないし。


「師匠、いい?」

「オン」


 フランもウルシも完全にやる気だ。ウルシは珍しい高位魔獣が食えると思ってるだけかもしれんが。


『まあ、ルシール商会の仲介だし、受けてもいいだろ』

「やた!」

「オンオン!」

「ありがとうございます」


 その後、俺たちはハガネ領国のさらに詳しい情報を聞かせてもらい、ルシール商会を後にした。


 宿への帰り道、フランはルンルンでスキップしている。


(模擬戦と魔獣、楽しみ!)

『出航は3日後だから、その前に色々準備しておこうぜ。食料を準備しておきたいし』


 フランは船に乗ると高確率で問題が起きる。今でも船旅が好きなのが不思議なくらい、トラブル続きなのだ。


 最悪、長期間漂流したり、謎の島に漂着したりするかもしれない。その時のことも考えて、食料を大量に仕入れておこうかな。


 久しぶりに魔境にでも行って、肉を仕入れてこようか。以前料理コンテストで使った極上肉もあそこでゲットしたのだ。


「師匠。水晶の檻いく」


 フランも俺と同じ考えだったらしい。まあ、フランの場合は海の上だとお肉が貴重だから、たくさん持っていこうってくらいの考えだろうが。


『じゃ、仕入れに行くか』

「ん!」


 それから3日間、俺たちは水晶の檻での狩りにいそしみ、一部をギルドに卸せるくらいには各種肉を充実させたのだった。


『これで準備は万端だな』

「ん。お肉いっぱい」

「オンオン!」



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― 新着の感想 ―
人前で色々と自重する必要が無くなった師匠が船上でどう振舞うのか? 気が付けば持ち込みと海産物で航海シェフやってそうなイメージが
航海時の食事の何が大変かって、 食材の保存と補充の困難さ、なんですよね…… 「無限収納」「いつでも新鮮」「出来たて保存」 ……船の苦労の一部が消し飛んでる。
長い船旅は壊血病が怖いから、柑橘類もいっぱい用意しよう。
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