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彼岸よ、ララバイ!  作者: 湯ノ村
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秘密の遊び②

「お邪魔します」


 やや取ってつけたような礼儀に倣い、脱いだ靴を整然と並べつつ、頭を下げながら他人の家に上がる。嗅ぎ慣れない家の香りにおずおずと四方八方に視線を飛ばす中、廊下をやおら進んでいく。居間らしき扉を少し先に捉え、遊びを提供する発起人の先導に従って部屋へ入った。間取りを見誤った家具の軽重は、居間を手狭に演出し、身体がまだ小さいとはいえ四人の子ども達が羽を伸ばすとなると、なかなかに圧迫感を与える。三人掛けのソファーは取り合いとなり、新参者である生徒は床に敷かれたカーペットに腰を下ろす。


 他愛もない世間話に花は咲くが、なんとかその場の空気に馴染もうと生徒は機械的な相槌を繰り返し、声の起伏に帳尻を合わせた。


「そろそろ、行きますか」


「誰からいくよ?」


 奥手を盾に黙秘し続ける事なかれ主義者の口の堅さは尋常ではない。しかし、この場面に於いて珍しく前向きになれた。主義を押し通すことで進んでいく見目なき事態へ、怪しからず“なにか”に参加するはめになる。それはあまりに受け身が過ぎ、生徒も訊かずにはいられなかった。


「ごめん、説明してくれるかな。なにして遊ぶのか」


 耳目の中心となることは滅多にない。生徒は三人から視線を浴びせられ、そぞろに手の痣を隠した。


「先走るから」


 その苦言は、三人が顔を見合わせることで起きる責任の押し付け合いを意味し、生徒に向けられた直接の苦言ではなかった。それでも、負い目に感じた生徒は、目の前の鍔迫り合いによって生じる火花から目を守るように、しずしずと俯いて息を殺した。発起人はそれにいち早く気付き、柏手を打つかのように両の手を強く叩き合わせた。


「明るくいこう。公宏君、おれは君と遊びたいから誘ったんだ。絶対に楽しいと思って!」


 生徒が醸成する後ろ髪引かれる思いを断ち切る発起人の力強い語気は、これから先に待つ遊びが後悔や悔恨を生むことは決してないと断言し、ひたすら生徒の背中を押す。


「ありがとう」


 訊けば、親の前はおろか、公然と口にするのも憚られ、耳を貸した者から軽蔑されても文句は言えないものであり、潜在する背徳感を背景に生まれたピンポンダッシュが深化した結果、期せずして防犯意識の低さを追及へと繋がった。内容はこうである。右手の奥から数えて二部屋目の石館氏の戸口を少しづつ開けていくという、あまりに浅薄な子どもらしいチキンレースであった。


「きみが最初にいけば?」


 名をろくに覚えていない生徒からすると、顎を使って指示を出す発起人の不躾さに助けられた。親しげにあだ名でも使われてみろ。交差する視線の行方に右往左往とし、その体裁は盛った猫と変わらない。

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