93話「大雪の日に」
今日は、今年1番の大雪。
授業が終わり、外を見ると真っ白だった。
私は、この後バイトだったので、歩いてバイト先へ向かった。
風が吹いてとても寒い。
私は、ポケットの中に手を突っ込んで、下を向きながら歩いた。
店内に入ると暖房が効いていてとても暖かかった。
「お疲れ様です」
「おー、お疲れ。外寒かったやろ?」
「めちゃくちゃ寒かったです。今日ごみ捨てしたくないですね」
「確かに、めっちゃ分かる。でも神崎さんの時、新人さんと2人やしその子ごみ捨てまだ教えてないからごめんやけど、ごみ捨てやってね」
「はい、分かりました」
19時頃、お客さんの足がばったり途絶え、暇していたので、私は新人さんに前陳など任せ、ごみ捨てに向かった。
ごみ捨ては外での作業で、風を遮るものが何も無いのでとても寒い。
ゴミを集めて口を縛るのだが、手が悴んで全然縛れず、奮闘していた。やっと縛れ、ごみ捨てを終え中に入ると、とても暖かかった。
「ごみ捨て大変ですか?」
「んー、全然大変じゃないんだけど、今は寒いからごみ捨てに行きたくないって感じかな?今日は、寒すぎて手が悴んで全然ゴミ袋の口縛れなくて大変だった」
「どうりで。手先赤いなって思いました」
私は、新人の子と話しながら前陳したり、賞味期限の確認をしたりなどしていた。
私と交代の人が来たので、後のことはお願いして帰り支度を始めた。
母に迎えに来てもらうため、電話をして外に出た。
近くに用事があり、もうすぐ着くということだった。
外に出ると、後ろからお客さんが出てきたのが分かり、端に寄った。
すると突然温かいペットボトルが頬に当てられた。
ビックリして後ろを振り返ると優大がニコニコしながら渡してきた。
「え、どうしたん?」
「お前全然気づかんな。ずっとおったんに見向きもせんし」
「全然分からんかった」
「まぁ、寒いやろ。これあげる」
優大がくれたのは、ミルクティーだった。
温かく、疲れた体に甘さが染み渡る。
「ありがとう、糖分と温もりが身体に染み渡ってく」
「こんな大雪の日までバイトって大変やな。でも会えてよかった」
「そうだね、今日1回も顔合わせてなかったもんね」
そうこう話しているとお母さんが来た。
「ミルクティーありがと。気をつけて帰ってね」
「おぅ、ありがとな。じゃーな」
私は帰り道、ずっと優大から貰ったミルクティーを握りしめていた。




