79話「試験一週間前」
就職試験まであと1週間。
朝起きると少しだるくて熱を測った。
「熱あるんか?」
「微熱ー」
「来週試験ねんし気をつけーよ?」
「うん」
熱を測ると37.3だったが、微熱だったので学校に行った。
だけど、2時間目辺りからぼーっとすることが増えた。梓に話しかけられても上の空で、何回か呼ばれてから気付くという状態だった。
「怜奈大丈夫?ぼーっとしてる事多いけど」
「ごめん、ごめん。大丈夫!何か来週って考えると緊張しちゃって笑」
心配をかけたくなかったので、そう言った。
次の授業は隣の教室なのでギリギリまで教室にいることにした。もう動きたくなかった。
この席は優大が座るが、いつも立って喋っているので、いいやと思った。
「神崎、顔赤いけど大丈夫か?」
「え?はい。ちょっと暑くて」
話しかけてきたのは数学担当の江波先生だ。
「神崎肌白いから顔色変わったらすぐ分かるな」
「そうなんですよね〜ちょっと嫌です笑」
先生にも気づかれ、優大にも気付かれる前に教室を出ていこうとした時、机の上にメモ用紙が置かれた。
『体調良くないなら、無理するなよ。』
顔を上げると、優大だった。もう気づかれていたみたいだ。
私はメモ用紙を持ち、教室を出た。
その時、南や中野の声が聞こえた。
「今何渡したん?」
「ん?あー、紙落ちとったしそれ渡しただけや」
「そーなんや」
照れ隠しか何かは分からなかったが、メモ用紙を渡したことを知られたくなかったみたいだ。
私はクスッと笑って教室に入った。
学校が終わり、玄関に行くと優大がいた。
「送ってく。途中で倒れられたら困るから」
「そんな病弱じゃありませんーでもありがと」
「体調悪いなら学校休めよな」
「家にいたら試験のこと考えてしまうから嫌なんだもん。今日はご心配おかけしました」
「本当やわ」
「メモ用紙渡してくるなんて可愛いことしちゃって」
「だって、あの状況で急に話しかけるって何か
変やん。」
「変じゃないよ。でもありがと。嬉しかった」
「いえいえ、ちゃんと治せよ」
話しているうちにもう家に着いた
「うん、じゃあね。送ってくれてありがと」
「おう、お大事に」
次の日から私はまた勉強、面接練習を再開した。




