66話「花火大会」
花火大会
『風邪は大丈夫?』
『治ったよ』
『じゃあ17時くらいに迎えに行くね』
『はーい』
今日は花火大会。昨日風邪を引いてしまって優大には物凄く心配をかけた。
でも、もうすっかり良くなった。
「お母さん!浴衣出して!」
優大にはどんな格好で行くか言っていない。
家から会場までは歩いて行ける距離なので浴衣で行こうと考えている。
午後になりまず髪のセットから始める。
「どうしたい?」
「可愛ければなんでもいい!笑」
お母さんにセットを頼み、私は浴衣にあったメイクを始めた。
「はい、完成!じゃあ次着付けするよ」
「メイクまだー」
「それはあとでやりまっしや、とりあえず着付けからするよ」
私は和室に行き、お母さんに着付けをしてもらった。
「いい感じやね」
ソファーに座り残りのメイクを仕上げる。
『そろそろ迎えに行くぞー?』
『はーい』
LINEが届いた時ようやく準備が終わった。
『着いたよ』
私はドキドキしながら扉をあけた。
優大は最初驚いていたが、
「似合っとる。何かこう見ると別人みたいやな」
「そう?変わらんくない?」
「いや、普段浴衣も着んし、化粧もあんませんから全然違うぞ?」
「そう?ありがと」
私達は会場へと歩き出した。
向かっている途中、中学の先生や、優大の友達などたくさんの人にあった。
「優大、彼女出来たんかいや。可愛いやん」
「ほーや、お前こいつ誰か分かっとるか?」
「こんな子俺の知り合いにおらんぞいね?」
「神崎怜奈」
「は?嘘やん。こんな可愛かったっけ?」
中学の頃は髪は一つ結びで化粧なんて一切してなかった。
その頃に比べたら普通変わるか、と思っていた。
「今会場におるヤツらにメール送ったわw」
「どんな?」
そういい、優大がLINEを覗き込むとすぐこっちを見て、
「よし、逃げよう」
そう言って私の手を取り歩き出した。
どうしたん?と聞いても後で。と言ってはぐらかす。
穴場、とは言えないが人が少なく、でも見える場所に連れてきてくれた。
「そんで、どうしたん?急に逃げるぞだなんて」
ほら、と言って優大がLINEを見せてきた。
「これ、中学の男子のグループねんけど、ここにお前が可愛い、見てみろってあいつが送ってんて」
「そしたら、探そっていうやつらが増えまして」
「それで、逃げるぞねw」
私はそう言われて嬉しかったが、優大は私のことを他の人に見せたくないようだった。
「何か去年も似たようなことあったよね」
「あー、バド部のなw花火大会危険やな〜w」
しばらくしても誰もここの場所が分からず人が集まってくることなく、花火の打ち上げが始まった。
「綺麗…」
花火を見ていると優大がそっと手を握ってきた。
私は優大の方を見ると気のせいかもしれないが、少し照れたような顔をしていた。
私はそのまま空を見上げ花火を見続けた。
「今年も綺麗やったね」
「そーやな」
まだ、手を繋いだまま私達は歩きだした。
すると、さっきの男子がこっちに向かってきた。
「やっと見つけた」
「よぉ、もう帰るぞw」
「皆からクレーム来てんけど、見つからんって」
「逃げたしな、じゃあ俺らはここで」
「おい、待て」
もう2人の会話が面白くて思わず吹き出してしまった。
「何やー」
「何か面白くて」
「何やそれ笑まぁ、とにかくこいつは見せん」
「何でや」
「俺のモノや」
「何言うとれんて、まぁいいわ。今回は見逃してやろう」
「へい、どうも」
少し話してからまた歩き出した。
「何か今日の優大いつもと違うね」
「そうか?」
「うん、俺のモノやとか」
「それは忘れて」
「だって…」
その先言おうとしたら建物の影に連れていかれキスをされた。
「もぅ…ばか」
「怜奈が悪い」
突然で驚いた。でも嬉しかった。
とてもいい日になった。ありがと。




