43話「幸せな日」
長いテストがようやく終わった。
私は帰るために自転車小屋に向かった。
梓達はもう1限テストがあるため私は1人で帰らなくてはならない。そう思っていた。
「お疲れ」
自転車小屋に行くと優大と中野がいた。
今から2人で帰るようだ。
「お疲れ。今日は2限で終わり?」
「そうや」
珍しいな〜と思っていると
「お前ら今日一緒に帰れば?」
そう中野が言った。
「なんで?」
「2人とも2限で終わったなら一緒に帰ればいいやん。テスト期間中会ってないんやろ?」
「まぁ、そうやけど」
「中野は?いいの?」
「俺のことなんぞ気にせずに帰れ」
中野が天使に見えた
「じゃあ…帰るか?」
「うん」
私は帰り際小さい声で
「ありがとう」
と、中野にお礼を言った。
「ちょっと俺んち寄ってく?」
「うん」
一緒に帰れるだけではなく、家にも行けるとは。
今日はとてもいい日だ。
家に着き、部屋に上がらせてもらった。
「そうそう、これ。昨日部屋掃除してたらベッドの下から出てきたんやけど優大のやよね?」
私がそう言って差し出したのはシャーペンだった。
「あ!俺のー!あったんや。よかった」
「無くしたって思った時に言ってくれたら良かったのに」
「いや、言おうか迷ったんやけど、1本だけならまぁいいかなと思いまして」
「そうなの?でもあってよかったね」
「そうやな」
どーでも良さそうにペンを受け取っていたけど、とても嬉しそうな顔をしていた。
「しかし、疲れたな」
「2週間ずっと勉強尽くしだったもんね」
「もう勉強したくないな」
「しばらくはしなくて大丈夫でしょ」
その後何か優大は言いたそうな顔をしていた。
そして口を開いた瞬間
~♪
着信だ。優大の携帯だった。
「誰やって…あ、海斗や」
海斗というのは優大の従兄弟だ。
『もしもし?え?うん、おるよ。は?今から?明日でもいいやん。あーちょっと待って』
「どうしたん?」
「海斗が今から家来ていいか?って」
「それならうち帰ろうか?」
「いや、それが。お前と話したいんやってさ」
なんで!?私はそう思った。私じゃなくても誰もが思うことだろう。
「うちは別にいいけど、またなんで?」
「さぁー?」
『もしもし?いいってさ。おう。鍵開いとるし勝手に入ってきて。そう俺の部屋』
そう言って電話を切った。
「何か帰りに俺ら帰るの見かけて今一緒におるんじゃないかって思って電話していたんやとさ」
「海斗くん鋭いね」
「あいつ昔から変に鋭いんやってな」
そう話していると海斗くんが部屋に入ってきた。
「よお」
「よおじゃねーわw」
「2人とも仲いいんやね」
「そうか?」
2人は兄弟のような感じだった。
「でも海斗何でこいつと話したかったん?」
確かに…
「部活一緒やけどどんな人なんか知らんし優大の彼女やからちょっと気になって」
「そーなんや。何か聞きたいことでもあるん?」
「答えられる範囲のものならいくらでもどうぞ?」
質問コーナーみたいで面白そうだと思ったけど、質問されることはなかなかなかったので緊張した。
「えーっと、じゃあ。いつから付き合っとるん?」
「いきなりタメかよw」
「いいよ、いいよ。えっとね一昨年の12月から」
「ということは今もう1年経っとるってこと?」
「そうや」
「じゃあ花火大会の時はもう7ヶ月ほど?」
「そうやな」
「それまでよく隠せとったな」
「うちらそんな一緒に帰ったりしてなかったからね」
「そうやな。やし、知られてないんやろうな」
「じゃあ次に、先輩はこいつのどこ好きなんすか?」
そんなこと今まで聞かれたことがなかったし、言ったこともなかった。それに優大の前で…
「そうだな〜優しいとことか、どーでも良さそうにしとるけど、気にかけてくれてるとことか?あとやっぱり笑顔が好きかな?」
「良かったな、優大w」
優大は少し赤くなっていた。
「顔あけーぞ」
「こんなん聞いたことねーもん」
「じゃあ、もう一つ体験させてやろう。優大は先輩のどこ好きなん?」
私も結構それは気になっていた。私のどこが好きなんだろうとずっと思っていた。
こんな形で聞けるとは思っていなかったため、とても緊張した。
「こいつの好きなとこは…」
そういうと私に言うのではなく、海斗君の耳元で囁いた。
「聞かせてくれんの?」
「恥ずかしいです」
「そーですか。うちは言ったのにな〜」
そういうと優大は逃げるように、
「ちょっと下行ってくるわ」
そう言って部屋を飛び出していった。
「ねぇ?何て言ってた?」
「そんなに気になるんすか?」
「まぁね。聞いたことないもん」
「優しくて、思いやりがあるとこ。あと色んな表情をするとこだって」
「そんなこと思ってたんや」
私は嬉しかった。
「何か優大の言ってること分かる気がする」
「どうして?」
「だって、今めっちゃ幸せそうないい顔しとるし。部活では見せない表情」
そんな顔してるんだ。
「いつも人に見せない顔を見れるって結構いいもんすよ。こんな人彼女っていいなー」
「取るなよ?」
そう言っていきなり優大が部屋に入ってきた。
「取らんて」
「優大いつからそこおったん?」
「部活では見せん表情しとる〜辺りから?」
「あ、じゃああこは…」
「先輩、それは内緒で」
「海斗、後で話聞かせてもらうな」
「じゃあうちはそろそろ。今日はどうもありがと。海斗くん、頑張って」
「俺も帰りたい…」
ちょっぴり悲しそうな顔をしていた海斗くんの顔を見て私は家に帰った。
『あ、ねぇ?電話かかってくる前何か言いかけてたけど、あれなんやった?』
『あー、あれ?んー何やったかな?覚えてないw』
『覚えてないんかw』
『うん、あ。海斗に何言われたん?あの後口開こうとせんくてさ』
あの後どれだけ言われても何も言わなかったみたいだ。家に着いた時LI〇Eを開くと、海斗くんから
『優大に何聞かれても答えないでくださいね?』
そう来ていた。
『海斗くんがそう言うならうちも言えんな〜大丈夫、悪い話じゃないから』
『えー、まぁいいけど。今度うっかり口滑らせてもいいからな?笑』
『言いませんー』
この話は私の心に刻み、誰にも言わないでおこうと決めた。




