寝起きに強めの光はしんどい
差し伸べられた手を取り、立ち上がる。リンドウは立ちくらみで転びそうになったぼくを支えてから、歩き出す。
リンドウの背中を追って歩きながら体中についた砂を払い落としていると、塩で身体がべたべたになっていることに気づく。うぇ、お風呂入りたい…。
はぁ、とため息を吐いていると、リンドウが振り返って声をかけてくる。
「何ボサッとしてんだ、もっと速く歩け。」
まったくせっかちな龍人だ。起きたばっかりなんだぞ、と頭の中で不平を言いつつ歩く速度を上げる。
改めてきょろきょろ辺りを見渡してみる。
空より深い青色の海面に、日の光が反射してきらきら光っている。
続いて感じたのは匂い。風に乗って身をくすぐるのは海の匂い…ではなくさっきも感じた、どこかで嗅いだことのあるような香ばしい匂いと、それよりも強い、いい匂い。焼けたお肉のような匂いが、あまりの非日常で忘れてしまっていた感覚を呼び覚ます。
「おなかすいた。」
「がはは、そりゃそうだろうな。なんせお前は丸1日寝てたねぼすけなんだからな。」
ちょっと待って結構衝撃なんだけどそれ。
丸1日寝てたっていう事実を知ってしまったことで、思い出したかのように空っぽのおなかが大きな音を出して早く何か胃に入れろと文句を言う。
「がはははは、ずいぶんとでけぇ音だな。ガキだもんなぁ?」
とリンドウが笑う。いや笑うな。ガキとか関係ないでしょ、と言おうと口を開いた直後、また空腹を告げる音が鳴った。けど今回はぼくのおなかが文句を言ったわけじゃないようだ。
..ということは?と思い視線を自分のおなかからリンドウの顔に移すと、真っ黒な顔が少し赤くなっている。
「ちょうど今は昼飯時なんだよ..謝るからそんな顔で見ないでくれ。」
怖そうに見えたリンドウが、少し身近なように感じた。
ぼくは勝ち誇った気持ちになりながら匂いの元を探す。
そこで上へと続く階段を見つける。
「この上が俺達が生活してる場所だ。今は多分あいつらがバーベキュ一でもしてるみてーだな。」
バーベキュー。いい響きだ、と思うと同時におなかがきゅっとなる。同じ感覚になったのか、またリンドウが急かしてくる。まぁ今回はぼくもそうしたい、と思ってしまったけど。
「ほら、早く行こうぜ。早くしねぇと俺らの分が無くなっちまう。」
匂いと空腹感に突き動かされ、階段をかけ上る。
そして目の前に広がった光景は、森だった。
桜のようなピンクの花、というかよくみたらほんとに桜だった。
奥には、鮮やかな緑の葉をつけた木。ああいうふわふわした感じの木ってなんて言うんだっけ。まぁいいか。そんな感じの木々が生えている森。
そしてその森の周りを囲うように川が流れている。
ぼーっとその景色を見ていると、奥の方から何かがこちらに近づいてくる音。勢いよく飛び付いてくるそれをかわすことができず、そのまま抱きつかれる形になる、だけでは収まらず勢いのまま後ろに倒される。
「はじめまして!ぼくはガウラ!君はだれ!?」
唐突な衝撃に困惑しながら、飛びついてきたものを見る。
男の子だろうか。それもぼくと同じくらいの歳の。ただしぼくと決定的に違うところを挙げるなら....。
耳がある。いや耳があるのは当たり前だけど。猫の耳。それに、顔も猫みたい。ということはしっぽもあるのだろう。きれいな水色の目だ。
ぼくはゆっくり身体を起こしながら答える。
「いてて..ぼくはカルミア。はじめまして。」
それを聞いたガウラはにぱー、と笑顔を浮かべ、
「新しいおともだちだ!よろしくね!!」
と思いきり抱きついてくる。
香ばしい香りがする。そうか、これ猫とか犬とかの匂いだったのか。




