目覚め
潮風の匂いと、波の音で目を覚ます。目を開けると、雲一つないきれいな青空が映った。
辺りを見渡すと、そこは見知らぬどこかの海岸だった。
寝ぼけながらも、自分がよく分からない場所に来てしまったという事実を認識し、がばり、と身体を起こす。砂が服や髪に纏わりついて気持ち悪い。
ふと、潮風に混ざって鼻にふわりと甘い花の香りと、何やら香ばしい香りが入ってくる。花はともかく香ばしいのは何の匂いだろうか、とぼーっとしていると、後ろからさくさくと砂を踏んで歩く音が聞こえた。
直後、ぬっと巨大な黒い影がぼくを覆い、辺りが暗くなる。不意打ちだったのと、人とは思えないシルエットに驚いてビクッと身体を震わせながら、慌てて振り返る。
「よぉ、目が覚めたか?全身痣だらけだったしダメかと思ってたぜ。」
そこに居たのは、やっぱり人じゃなかった。人の形をした龍、いや龍の形をした人?バッキバキという言葉が似合う筋肉と真っ黒な鱗を持った身体に立派な角、ごつい尻尾。顔の形もドラゴンっぽい。そして背中には紫の稲妻が走ったような模様の翼が生えている。
困惑しながらその真っ黒い男を見上げていると、再び口が開かれた。
「あぁ?何ガン見してんだ?そんな得体のしれないモノを見るような目ェしやがって」
少し威圧的な口調に怯えながら、こちらも言葉を返す。
「だ、だって、気がついたら知らない場所にいたし貴方みたいなのもみたことないから..」
それを聞いた彼は首を傾げたが、やがて得心がいったようにあぁ、と溢す。
「そうか、お前にとっちゃここは知らねぇ場所だもんな。俺ぁリンドウってんだ。見ての通り龍人さ。お前は?」
龍人なんて本やアニメとかでしか聞いたことないぞ。
そうかこれは夢なのか、と頬をつねってみた。
そう思ったのも束の間、じんわりとした痛みを感じる。どうやら現実みたいだ。
そうこうしてるうちに呆れたような声。
「何やってんだ?いいからさっさと名乗れよ。まさか忘れちまったのか?」
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