6年後、スラム
ゲンゾー達の住む国、バルミア連邦。
他国や魔族達との戦争が絶えず、しかしその豊かな国力と優秀な戦士達の存在が常に国を守っていた。
そんなバルミアにも激動の時代が始まろうとしていた。
山間部のガルガダス地方の集落を突如として襲った大量の魔族。
後にガルガダス事変と呼ばれたこの虐殺行為は多くの混乱を呼んだ。
まずこの地方は国境付近でもなく、戦争を行う橋頭堡にはなり得ない地形から襲撃の理由が不明であり、如何なる場所でも安全ではないぞと言う脅しではないかとの噂が流れた。
加え、生き残った幾人かの人間達に加え、その付近より逃げ出した難民、更にはその噂より傭兵業や冒険家を引退した所謂荒くれ者がガルガダス近辺の最大都市『聖都トラジオン』に溢れてしまった。
スラムの形成である。
そしてガルガダス事変より6年後、そんなスラムの中に怒鳴り声が響いていた。
「てめぇ…いつもいつも邪魔しやがって!」
「今日という今日はブチ殺してやる!」
七、八人の男が一人の青年を取り囲んでいる。
青年は夜闇の様な黒い短髪に切れ長の鋭い瞳、体は細くとも確かに筋肉質な、所謂無駄の無い体型をしていた。
取り囲む男たちは手に凶器やらを持っているが、青年はつまらなさそうに応える。
「やれやれ、物盗りに失敗した腹癒せに儂をこうして取り囲んでお祭り騒ぎかね?そんな暇があれば真っ当に働いて社会復帰でもするのはどうだな、小僧共よ」
年の頃はまだ二十歳前後かというのにその雰囲気は老練としており、全く物怖じしていない様子だ。
その態度がより気にくわないのか、男の一人が青筋を立てて怒鳴る。
「うるせぇ!てめぇが俺たちのヤマ邪魔すっからだろうが!後少しであの商人ブチ殺して大儲け出来たのによ!」
「確かにそう言った無法、このスラムでは罷り通ろう。しかし儂がそれを邪魔していかんという法も無かろうに」
不敵な笑みを浮かべる青年。
その態度に更に男たちは更に激昂し、
「じゃあてめぇはここで死ねやぁ!」
一斉に手の武器と共に襲い掛かった。
まず一人、青年の後ろに居た男が剣を背中に向けて振り下ろした。
が、
「!?」
すぐさま振り向いた青年は迫る白刃の内側を捌く様に、捻り拳で刃を滑らせ、男の鼻面に正拳を食らわせる。
「ブッ………がっ」
鼻が潰れ、呼吸出来ない男はその場に崩れ落ち、反対側からはまた別の男が槍を構えて青年に迫る。
が、この槍の穂先を青年は手の甲で軽く弾いて上に逸らし、
「ぜっ!」
「あぎっ!?」
掛け声と共にその手の甲を返して裏拳を人中に放った。
反作用で派手に男は吹っ飛び、代わりに迫る短剣の男を見向きもせず足刀で吹き飛ばす。
「野郎ぉ!」
一人ずつでは不利と踏み、三人の男が一斉に剣を振り上げて青年に迫る。
しかしそれでも青年は動じず、
「!?」
「なっ…!」
振り下ろされた剣を少し逸らし、互いが互いを支える様な形で受け止めさせ、しゃがんだ状態から目にも止まらぬ速さの貫手を三人に放った。
血は吐かずとも泡を噴き気絶する三人。
がたがた震える残された一人を青年は一瞥して言う。
「ほれ、そこの、もう良いから捕り物置いてさっさと失せよ。特別許してやる」
「ひっ…ひぃぃぃ!」
袋をドサリと投げ捨てると逃げ去っていった。
そして袋を拾い上げる青年、ゲンゾー18歳。
弛まぬ武練と不屈の精神が、既に彼を一級の戦士にしていた。
ステータス更新
NAME・ゲンゾー
レベル・1
クラス・不明
筋力・D(EX〜H)
耐久・E
敏捷・B
魔力・H
対魔力・H
属性・不明
保有スキル
陣地作成・F
徒手空拳・A
見切り・D
固有スキル
異界の魂・A
不屈の精神・A