美味しいおかわり(大山さんと青山君)
ぼろっちいが清潔な大山ラーメン店で、青山はラーメンの汁をすすりながら思った。
今まで隣に座っていた生徒会長、全体育部を束ねている、超、超、超人的な徳川さんが、
なぜいきなりまずいラーメンを好きだと言ったのはわからない。いや、本当は丸分かり。
生徒会副会長、人間離れした美しさも物腰の柔らかさも手伝って影で天使と言われている因幡さんへの思いが高じてついに告ったのだ。
ただ、場所もシチュエーションも最悪で、どうみても力いっぱいまずいラーメンが好きだと 絶叫したようにしか見えなかった。
あの場所で、好きだと言いたいのは自分のほうだ。
まずいと言ったラーメンは、正確にはまずくない。
大山ラーメンの近所には幼稚園と中学、高校がある。
ちょっと伸びた麺も、薄めの味も、幼稚園の子供に合わせてある。
ぶきっちょな竹生は人手が足りないのも手伝って、全年齢に合わせた麺を作ることができない。
ここのラーメンを食べにくるのは、幼稚園で覚えた味をおふくろの味のように感じる連中か、 欠食児童ばかりだ。
もっと一般向けの味も作れるのに、いつまでも子供の目線から離れない、やさしい竹生。
幼稚園の頃から、あの味に、やさしい笑顔に手名づけられてしまったのだから仕方ない。
傾きかけた、ボロな大山ラーメンと、ぶきっちょな竹生を、サポートして、
生き生きさせるために僕はがんばってる。
大学は経済学部に進む予定で、味覚を発達させるべく、食べ歩きにいそしんでる。
いつか、いつか、竹生の隣で、一緒にラーメンを作るのが夢だなんて、おかしくて、小さな夢。
成績も美貌にも自信のある、生徒会書記青山は、大山さんに僕ってもったいないよね、と思いながら勘定を置いた。




