助けてくれた彼は
「ゆうた!」
朝、学校に向かう道で声をかけられた。桜子だ。桜子がこんな朝早い時間の電車に乗るのは、珍しいことだ。いつもギリギリのなのに。
「おはよ、珍しいね」
「いやー課題を学校に忘れたからさ」
「なんだ。そういうことか」
さすがトンチンカン。ま、朝早く起きて学校来れただけマシなのかもな。
「ゆうたは早いねー。いつもこの時間?」
「あぁ、うん。あんまり人がいないから」
「確かに!」
前はもう少し遅い時間のに乗ってたけど、ここ最近は早めの電車に乗ってる。理由は…特にない。ただ、冬は朝の空気が好きなだけ。
「あのさ、ゆうた」
「?」
「ずっと聞きたかったんだけど、いい?」
「何が?内容によっては答えるよ」
「…なんで夏、断っちゃったの?」
「先輩?」
「そう」
同じ部活の先輩からこの夏、人生で初めて告白された。そして、断った。まあ、部内恋愛は雰囲気、気まずくなるし。
「…ごめん、わからない」
「いいの!私も変なこと聞いてごめんね!」
「課題あるんだよね、急ごっか」
嘘。本当は理由なんて分かってるの。私、男子に対してすごいトラウマがある。中学3年、とある男子から猛アピールをされたことがある。でもその男子はすごく嫌な噂が多かった。それが恐くなってしまい今に至る。あの時、助けてくれたのは谷山だった。
だから、男子からアピールされると恐くて恐くてたまらない。実際、手紙をもらって読んだ瞬間、私は泣いてしまった。そして、断ってしまった。
「ありがとう、ゆうた!」
「いいえ。科目は?」
「数学!苦手なんだよ〜」
「範囲次第で教えられるから」
「やった!」