ゴミ処理場の
「ゴミ処理場の」
誰にも話したことが無いあの場所。
「ゴミ処理場の?」
小動物のように目を丸くして俺の返事を待っている。
「ゴミ処理場の裏の空き地だよ。よく空を見に行ってるんだ」
自分の中にあった一枚の壁を叩き壊した音が聞こえた。立花になら、立花だから話したくなった。
「ええ、そんな場所があるの? ズルい」
「一緒に行くか?」
立花はきょとんとしていた。
「いいの?」
「もちろん」
「うん、行く」
にっこり笑う立花の頭に手を乗せようとしている自分に気付いて慌てて手を引っ込めた。立花は気付いていないようだったがどっと背中に汗が噴き出した。
「じゃあまた後で」
「うん」
立花と離れて俺は自分の席に着く。話している最中に何人かの視線を感じていた。俺と立花、普段見ない取り合わせというだけで誰かが様々な感情を俺たちに投げかけてくる。
「高橋! お前立花と何かあったのかよ? 腕掴まれてたじゃんか」
早速三井が興奮した様子で詰め寄ってきた。
「UFO見たんだよ、昨日。そのことでちょっと」
「は? 何だよそれ? さてはお前俺と工藤さんのことで影響されちゃった感じか?」
三井はそう言いながら恍惚とした表情で工藤さんのほうを眺めていた。工藤さんは朝から勉強をしているようだったがちらっと視線を動かして、三井に見られていることに気付くと参考書を閉じて両手で顔を擦っていた。
「お前工藤さんが可哀想だろ、あんまり見んなよ」
「憂鬱な朝ぐらい目の保養だよ、でもちょっと反省するわ……」
勉強の邪魔をしてしまったことに三井もショックを受けたようだった。
窓の外でスズメが鳴いている、風が少ないせいで雲はなかなか動かない。大きい雲と小さい雲、その両方が水色の空のキャンパスに白い絵の具を引き伸ばしていた。今日も日常が始まっていく。
俺は一限目の古典の授業に備え、古語辞典を取り出す。細かい辞典の文字が日の光に包まれてとても読みづらい。でもなんだか良い感じ、俺はカーテンを閉めずに眉間に皺を寄せてそのまま辞典を読んだ。ページに鼻を寄せると、辞典の薄い紙の匂いと日光の暖かい匂いがした。




