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歪んだ太陽  作者: 鷹司
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宴や祭の時、父はいつもアヴギを侍らせて来るようになった

お互いに食物や飲物を楽しげに勧めあったり囁きあい笑いあう様を見るたび無性に苛立った

最高神であるのに一人の天使にうつつを抜かす父もそれを良しとするアヴギにも苛立ちを覚えた



睨み付ける様に見ていると妹が話かけてきた

「気になってるの?気になるんでしょ?」

「…なにがだ」

素っ気なく返すと解ってるくせにとわらわれた

「たぶん兄さんが気になるからあたしも気になるんだわ」

「父上に次いでお前までたぶらかされたか…後俺を引き合いに出すな」

からかって楽しいのかケラケラと一頻り笑ったら急に残念そうに口を尖らせ文句を言い始めた

「兄さんってばいけないって思い込むとすぐ排除しようとして…好きならあたしみたいに積極性をもって父上の恋人だろうと手を出せばいいのにぃ」

「出したのか!?」

「父上が来ちゃったから押し倒した位で未遂よ?でも凄い怒られて1日謹慎させられちゃったー下界はパニックになったりして大変だったのよー」

酔ってきたのか凄いことをさらっと言い出した

…妹には悪いがその積極性は持つ気になれない

「とにかくー兄さんと私は鏡のような兄妹なんだからーきっと兄さんも好きなのよー」

へらへら笑いながら妹は適当な事を言う…勘違いもはなはだしい妹だ






ある日を境に下界は水に溢れた


幾日も止まない雨で空を駆けれないのでどうかしたのかと妹に問いかけてみた

「アヴギが下界で子供作って怒った父上が相手の女殺しちゃってアヴギが悲しんで泣くのに耐えきれなくて父上も泣いてるんだって」

生々しい上に我が父ながらとても情けない事情を聞いてしまったと後悔した





数日後、唐突に雨は止んだ事情はもう聞きたくもないから単純に空を駆けれると嬉しくて散歩をしていたらこの騒動の張本人の彼を見つけた





「あ…イリヨス様」

声をかけられずにいると彼が気付いたのか振り返り歩みよってきた


白磁のようになめらかな背に生えた翼は2対に減り、一番見事だった翼は根本から引き抜いたように赤黒い肉が覗いていた


「…過ぎた美貌は罪だった、な」

自分で言った事ながら本当に起きるとは思ってなかった


「そうですね」

泣き腫らした顔で自嘲するよう笑う彼を見てなぜだか悲しくなった

「私は罪です」

全身に今にも消えそうな雰囲気を纏い傷つききった彼は儚くそれでも美しかった

「…なのに皆私を責めてくれません」

泣きそうな顔をしながら彼は俺の袖を強く掴んだ

「だから、貴方にしか頼めないのです」

「何を望む」

気付くと強く握りしめ過ぎて震える手に手を添え尋ねていた


少し嬉しそうに微笑むと彼は長椅子まで俺を引っ張っていき座らせた

「イリヨス様は聞いているだけでけっこうです」

目の前に立ったまま彼は自分の罪を懺悔し始めた

  どの神を惚れさせたから夫と上手くいかなくした

  あの人と寝たからその人は壊れてしまった

そんな話を彼は泣きながら吐き出し続けた

 人や神、夫婦や兄弟がいかに自分に惑わされ引き裂かれたか

  何百年もの罪の告白は続いた

「…そして私は彼女に恋しました、私の全てで創造主であるアエラス様を傷付けると知らずに愛してしまいました」

涙も声も枯れ果てながら最後の罪を懺悔する

自分で口にした罪に苛まれるように苦し気に虚空を見つめて話続けていく

「私の恋が彼女を殺し、私の愛がアエラス様を切り取った!」

叫ぶ様は痛ましく手を伸ばしそうになる

「私が自分自身の悲しみに溺れているうちにアエラス様の一部とはいえ不死をすてさせてしまった」

視線がさ迷い俺を捉えると彼はすがるように抱き付いた

「ごめんなさい…ごめんなさい死なすつもりはなかった!殺すつもりじゃなかったんだ」

俺の胸で泣く彼に嫌悪が湧かないと唐突に気付いた

罪は断罪すべきと声高に叫ぶ俺が罪の塊のようなこの天使に触られても一切嫌悪を感じない

…気付いてしまった

 …気付きたくなかった

俺が苛立ったのは彼でなく相手で

俺以外と話しそれを惑わすことに悲しみ理不尽な怒りに換え誤魔化していた

これが恋じゃなければ何なのだ?

彼の全てを許し 彼の周りに牙を向く感情は既に愛だろう


(気付きたく…なかった)

彼が必要なのは断罪し許さない者

  愛してくれる者など有り余っている


泣きじゃくる彼に腕を回しその香を胸に吸い込む


「お前の罪は許されない」

待ち望んでいた言葉でも傷付いたのか彼の身体がビクリと跳ね泣き声が止まる

「…だが死者を悼む涙に罪は無い、思う存分泣け」

彼が今の俺の顔を見てなくて良かった

叶わぬ恋慕に涙する姿なんて見せてはいけない

 気付かせてもいけない


(なにが許されないだ)

本当は全て許してるくせによく言える

(なにが泣けだ)

彼を少しでも長くこの腕に抱けるようにと邪な想いで偽善者ぶる


彼の近くにいるために例え全て許そうと断罪しよう


罪が忘れられるのが嫌なら人前で罪を罵ってやろう


彼に必要とされる為に彼を傷付ける、それが気付いてしまった愛の形






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