4.初めての魔法実技試験 後(クレハ視点)
シャルちゃんは大丈夫かな…。あの子、魔法のセンスは良いから、心配するだけ杞憂?
とりあえずは、目の前の、私のテストに集中しよっと。
試験官「ではテストを開始しましょう。
光属性と言うことで、薄暗い所まで誘導してきました。
このどこかにランタンを吊るしてありますので、それを魔法で灯してください。」
そう、ここは薄暗い講堂。
窓のカーテンを閉め切って、電気もつけていない。カーテンの隙間から溢れるわずかな光が、かろうじて空間を暗闇から薄闇に変えている。
試験官の先生は去年担任を勤めてくれたガイ先生、カッコいい男の先生なんだよ?
にしても、ランタンを灯すのか、しかもどこにあるかわからないし。なんだか難しい様な…。
あ、確か…こういう光るものってある程度の範囲内に有る魔力に反応するんだっけ。
なら、いっそのことこの空間を魔力で満たしちゃえば良いんじゃない?
よし、この作戦でいこう!他には思いつかないし…シャルちゃんならもっとこう…上手くやれるんだろうけどなぁ…。
後で聞いてみよっと。
ガイ「では、クレハ=フレグルさん。どうぞ。」
クレハ「どうぞって言われても…、ヤっちゃって良いんですよね?『光よ!弾けて!』」
私の呼び声に従う様に、光り輝く粒子が集まり、四方八方に爆散する。
一瞬、講堂内が眩しいくらいの明るさになり、目がチカチカする。
けれども、しばらくすると光は5箇所ほど淡く灯るランタンのみを残した。
…ランタン5個もあったんだ。
すぐ後ろに控えていた試験官の先生の足元にも1つあるとか、なんだかくたびれ損?
ガイ「ここまでゴリ押しで全てを灯した人は初めて見ました。魔力量もそうですが、あなたらしいと言えばそうですね…」
クレハ「そうですか?…でもテストはコレで大丈夫ですよね!」
私はニッコリと笑ってみせた。ガイ先生は「やれやれ」と言う表情をしつつ、実技テストの続きを始めた。
正直退屈だったので、お昼ご飯のことを考えながらテストが終わるのを待っていると、不意に綺麗に光る蝶々が鼻をかすめた。
クレハ「うわぁ…きれい…」
暗闇を飛び回る蝶々達の中心には、ストロベリーブロンドの髪を一つ結びにした、妖精族の女の子がいた。
滅多に街では見かけない、長寿な種族だって認識だけれど、光の蝶々に囲まれた少女はとても幻想的で、思わず見惚れてしまう美しさだ。
やがて、光の蝶々達がランタンへと吸い込まれていき、テストが終了する。
どこからともなくパチパチと拍手が始まり、この場にいる生徒全員で喝采を送ることとなった。
少女「あ、ありがとう、ございまふ」
あ、噛んだ。上がり癖でも有るのかな?
ガイ「ここまで見事な造形はなかなか見られないですね。実に眼福でした、フィーリア=ルーファスさん。」
彼女は耳まで真っ赤になりつつも会釈をする。
ガイ「では、これで光属性の実技テストは終わりです。お疲れ様でした。」
やっと終わった!シャルちゃんとご飯食べにいこう!…と講堂から出ようとした時、ふとフィーリアと目が合った。
クレハ「ねぇ!ご飯一緒に食べよ!」
私は思わず、彼女の手を掴んでしまっていた。
フィーリア「は、はひっ」
彼女は驚きつつも、抵抗はしなかった。
私は彼女の手を引いて、シャルちゃんのところに歩いていくことにした。