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第七話

 勉強という強敵と戦い終えた俺は、荷物をまとめ、図書館を出る。

 暗記科目1時間、計算科目1時間、流石に疲労感が拭いきれず、眠気が襲ってくる。学校に通ってきた時は一日中勉強付けだったことを思うと、なんとも忍耐弱くなったものだ。

 これから恵理のところに弁当を運ぶ事を忘れてはならない。特にこの後の予定は決めていないので、一緒に食べさせてもらいその時に考えよう。

 重くなった頭をほぐす様に揺らし、広場に出る。

 広場のすり鉢の周上を歩いている時、ふと噴水の周りを見ると小さな子供たちが集団になっているのが見えた。恐らく幼稚園の集団だろう。弁当を広げて昼食を取っている。

「あれ?麻斗?」

 不意に名前を呼ばれた。聞こえた方向から言って幼稚園の集団からだ。耳を澄ませる。

「違う?」「えー絶対そうだよ」「でも何か変っていうか」「何でこんなところにいるの?」「仕事は?」「なんていうか暇人?」「ニート?」「派遣切り?」

 最近の幼稚園児は語彙が達者だな!イラッとした俺は進行方向を噴水へと向ける。

「わーい麻斗お兄ちゃんだー!!」

 一人の少女が俺に近寄って……もといぶつかって来た。ラグビーのタックルのように腰の部分に飛び込んでくる。体重があるわけでもない俺は倒されないように必死に踏ん張った。

「ちょっと待ってくれ、夢。危ないぞ」

「えへへ」

 飛び込んできた少女、藤堂夢は屈託の無い笑顔を見せる。

 夢も俺と同じ宿舎に住んでいる人間の一人で、幼稚園に通っている。性格は天真爛漫、元気があり溢れるほどで、年相応といえば聞こえは良いが、言ってしまえば落ち着きが無い。よく宿舎のものを壊すので桜に怒られる事が多い。

「待ってよ夢ちゃん」

 遅れてパタパタと夢のあとをくっついてきたのは、見た目から大人しめの少女―丹下鈴だ。夢をやんちゃと表現するなら、鈴は引っ込み思案な性格と言える。

 鈴も一緒の宿舎であり、部屋は夢と一緒だ。常に夢と一緒に行動しているのだが、鈴はいつも活発な夢のあとを二,三歩遅れて歩いている印象がある。

「こら二人とも!!」

 そしてその鈴のあとに遅れて来たのは夢たちより年上の一人の少女だった。微かに茶色がかった長い髪を靡かせ、小走りに近寄ってきた。身長は俺より低いが、女性の中では普通の部類に入る。

 服装は下にジーンズとパーカーの上にエプロンというかなりラフな格好だった。だがその容姿が、少女のそんな格好ですら映える様に見せている。端整な顔に前髪の下に見えるのはくりっとした丸い目と長い睫毛。はっきり言って美人である。

 彼女こそ、ネフェティア一の有名人であり、夢たちと同様俺たちの同居人である榊伊織だ。

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