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よく考えたら婚約者に執着する必要ないですね?  作者: 高萩


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3/8

幼馴染との再会

数日経ってからアイリスはハリーとの婚約が解消されたことを教えてもらった。

何年間も辛い日々を重ねていたのに、解放は一瞬だったからか、今でも信じられない気持ちでいっぱいだ。しかし王城に通わなくなり王太子妃教育も公務もなくなったことが間違いなく婚約解消を意味していた。


「本当に解消したのね」


学園から真っ直ぐ家に帰ってきたアイリスは自室でぼんやりしていた。

今までだったらこの時間帯は王城にて教育を受けているか公務をしているかだったから妙に落ち着かない。しかしこれからはこれが当たり前になっていくのだ。好きなことを出来る時間を持てることが嬉しくて頬が緩んでしまう。淑女としては失格だが誰も見ていないのだから少しくらい許されるだろうと考えていると部屋の扉を叩く音が響いた。


「アイリス様」

「どうしたの?」


レクシーの声が聞こえて返事をする。なにかあったのだろうかと首を傾げていると聞き慣れた声が聞こえてきた。


「アイリス、カイだ」


カイ・ハーバート。

アイリスの幼馴染であり母方の従兄弟でもある三歳上の侯爵子息。グレーブラックの短髪とヘーゼルナッツを彷彿とさせる瞳を持つ高身長の青年だ。優しい性格の持ち主で昔からエルビーと一緒になってアイリスを甘やかしていたのは彼だった。

扉を開くと「久しぶり」と片手を上げて快活に笑うカイにつられたようにアイリスも頬を緩める。


「カイ、久しぶりね」


二人が最後に会ったのはもう一年も前だ。

それまでは週に一度のペースで会っていたが昨年からは王城で文官の職に就いたカイと王太子の婚約者として忙しい毎日を送るアイリスでは会える時間など皆無に等しかった。


「急にどうしたの?お仕事は?」

「アイリスの顔が見たくなってね。仕事は片付けてきたから心配しなくて良いよ」


長い銀髪を梳かすように撫でられたアイリスは懐かしさと擽ったさで頬を熱くさせた。つい最近父親に同じことをされたのに不思議と全然違って感じる。

小さい頃はこんなことなかったのに。

カイがアイリスの髪に触れなくなったのは彼女が婚約者を持つ身であったからだ。幼ければ従兄妹同士の無邪気な戯れだと許されるがお互いの年齢が十歳を過ぎると周りから止められてしまった。

二人とも理由をよく分かっていたからか自然と距離を置くようになったのだ。しかし今はアイリスもカイも婚約者のいない身だ。少しくらいは許されるだろう。


「忙しかった?」

「いいえ。退屈してたところなの」

「それならお茶にしよう。アイリスの好きなローズティーを持ってきたんだ」

「嬉しいわ」


良い天気だからと外でお茶をすることになった。アイリスから準備の指示を受けたレクシーが一足先にその場から立ち去ると二人きりの空間が出来上がる。ふとアイリスがカイを見上げるといつもよりずっと優しい、蕩けるような笑顔を向けられていた。見慣れないそれに胸の奥がどきりと弾んだアイリスは思わず目を逸らしてしまう。


「アイリス、手をどうぞ」

「え、えぇ…。ありがとう」


差し出された手を受け取るも何故かカイの顔を見られないままアイリスはエスコートを受けた。


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