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18.朝飯まえ

なんだかんだあったけれど、憧れて会いに来たライトさんと一つ屋根の下。一緒に掃除することになるなんて思いもよらなかったなあ。

二人で黙々と手を動かす。ショウはチラリと片付けをする彼の横顔を盗み見てほほ笑んだ。

つもりだったのだが、気付かれていたらしくライトからほほ笑み返される。


「ショウちゃん、楽しそうでよかった」

「へっ?」

「昨日、僕のところに来たときは泣いてたでしょ。どうしたのかなあってずっと心配だったんだ」

「ライトさん……」


心配されていたことへの喜びに、じわっとショウの頬が赤く色づいた。

リードという知らない人間に振り回され薄れてしまっていた気持ちが、また段々取り戻せるような気がして恥ずかしくなってくる不思議な心地。

自分の隣にいるのはいつか助けてくれた大切な恩人で誰よりも優しい人。ショウの初恋の人。今その人の隣でこうしていられるのは奇跡とでも言える幸運なのではないだろうか。

ぼんやりと見ていて手が動かなくなったのを知ってか知らないでか、きりのいいところまで書類整理を進めたライトが提案する。


「ここ拭いたらおやつ買いにいかない? 少し休憩しよう。近所にお菓子屋さんがあるからご馳走させて」

「はい。ありがとうございます」


時計の時刻は十五時三十分。おやつにはちょうどいい時間だった。


ライトに案内されてやってきたのは近所の洋菓子店。道中でご近所の奥さんたちに教えてもらった評判のいい店らしいと彼はショウに語った。


「どれにしようか」

「いちごがいっぱいのタルトがいいです! あっ、でもこのティラミスもふわふわでおいしそう~」


こじんまりとしたショーケースの中できらめくケーキの間、視線を行き来させるショウの真剣な表情にライトはくすりと笑う。


「じゃあ両方買おう」

「いいんですか?」

「もちろん。あと僕はこっちのプリンをもらおうかな」


注文を始めたライトの後ろ姿に「あの」とショウは遠慮がちに声をかけた。

一人分、それでは数が足りない。なぜかそう思ってしまい注文に割り込むようなかたちで。


「ライトさん、その、リードさんの分は……」

「リードの? リードも僕なのに?」


不思議そうな顔で振り向いたライトは考えるように空中へと視線をやった。


「考えて選んだことなかったなあ。彼、自分で好きに食べてるみたいだし……」

「そうですよね。変なこと言っちゃいました」

「そんなことないよ」


ひとりっ子のショウにはわからないが、男兄弟って存外こんなものなのかもしれない。そもそもどうしてリードのことまで考えようという提案なんて自分はしてしまったのか。

余計なことを言ってしまったとしょげる彼女の姿に、思うところのあったライトは声をかけ逆に問う。


「ショウちゃん、リードはどれが好きそうだかわかる?」

「わかんないですけど……」

「そう。僕もなんだ。自分のことなのにわかってない。録音だけで実際に話したこともないからね」


少し寂しそうなその横顔にショウは改めて何かしてあげたいと強く感じ、ケーキを箱詰めしていた店員に追加注文を伝える。


「やっぱり、そのいちごのタルトとティラミスを二つずつにしてもらえませんか?」

「え?」

「あ、プリンも食べます?」


二つ、と手でも示す。驚きに満ちたライトの瞳には得意げな顔のショウが映り込んでいる。


「リードさんには私が聞いておいてあげますよ。あんたどっちが好きなの? って」

「そっか。ありがとう」


ショウの提案に困惑しつつもライトは嬉しそうに笑った。

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