12.大炎上
一時の探偵助手ごっこが終わり、次の目的地はショウの家。
車を走らせてからしばらくするまで二人の間に会話はなかった。リードから何か気を遣って話そうという意思はまずないように見え、ショウもショウで今日一日の出来事が目まぐるし過ぎて、あちらこちらの一転二転。何から話せばいいだろうか。言いたいことがまとめられずにいた。
やがて、長く横たわった沈黙を先に破ったのはショウのほうだった。
「……どうして辞めちゃったんですか?」
「なに?」
「警察官ですよ。何年も前に辞めちゃったってさっきも言ってた」
「規律ばっかでうざいしちっとも儲からないから。上司もあんなのだし、やってらんないの見ればわかるでしょ」
「うそだ」
ショウのことを自死から救ってくれたライトはそんないい加減な人じゃなかった。
態度はへらへらとはしていたかもしれないが、適当そうに見えて芯のある人間であるところに惹かれていたのだ。
体を同じくしているリードだってそうだ。やろうと思えば途中でショウを見捨てて現場に向かえたはずなのにそれをしなかったし、犯人からも守ってくれたのだから、そんな適当な理由ではない。と思う。
隣から送られてくる強い視線がさすがに鬱陶しくなったのか、根負けしたリードがため息と共に口を開いた。
「ライトは『俺が存在してるせいでまともに仕事できない』ってことで、数年前に辞めたんだよ。つい最近はボスの判断で、さっきみたく呼ばれて捜査に加えてもらえるようになった。私立探偵だったか? いや、コンサルタントとかいうの? として」
「その肩書き、自分でわかってないんですか?」
「どっちでもいいでしょ。俺は金が貰えればそれで気にしないし」
「は、はあ……」
トゲのある言い方。興味がないのか教えたくないのか、話を濁すように返答するリードはあたかもライトを他人のように扱っている。
これもまだ全然本心ではないと思いたい。何かを隠していて、こちらに情報を与えてこようとしない。
少し考える隙を見せたのが悪手であったことに、ショウが気が付くのは数秒遅かった。
「他に聞きたいことがないなら今度はこっちの質問」
「なんですか?」
「住所言って。送るから」
ショウは彼から何も引き出せなかった。ぎゅっと身を固くした彼女の様子を横目で観察していたリードは視線を前方に戻し、カーナビアプリを開く。
音声入力に従って住所を言い切ると車がぐんと前進したような気がした。
それからまた沈黙の時間がよぎる。ショウの家に着くのはあっという間であった。
到着までがあっという間なだけあって、火災現場を見ても衝撃が薄れている。否、今日この時間までにいろいろなことがありすぎて感覚が麻痺してしまっているのかもしれない。
数駅先、駐車場のない小さな賃貸を囲むように停まる消防車が二台。
ショウの帰るべき場所が炎上して真っ赤に染まってしまっていた。
すでに消火作業が始まってはいるものの、思い出を置いてきた部屋も例の彼女が住んでいた隣もベランダが焼け落ちて大惨事だ。
駆け寄りたい気持ちと、炎と灰に胃が焼かれるような苦しさが一気にこみあげてきてどうすることもできず立ち尽くす。




