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花と氷  作者: わたあめ
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食事会

「明日、忘れないでね。」

前から決まっていた食事会だったが、深山の母親の友人家族も来ることになったようだった。


「分かってる」

「怜と百合子さんも来るのよ。みんな揃うのは久しぶりね」

怜は十二歳上の兄で百合子は兄嫁だ。

深山はあまり乗り気ではないが断るほうがめんどくさくて結局いつも参加している。


場所は家族でよくいく料亭で、今日はいつもの部屋と違い離れにある広い部屋だった。父、母、兄、兄嫁、深山で1列に並ぶように母に促される。母親は着物で気合が入っている。めんどくさいことが起きないといいが、と深山は思っていた。


「お連れ様が到着されました」

と案内されて入ってきたのは瞳子と家族だった。知らされていなかった深山と瞳子はお互いの存在に気づいて驚いた。

「ふふふ、今日は西園寺さんをお誘いしたのよ」

深山の母親が嬉しそうに言う。

「柊君、久しぶりね。こんなにかっこよくなって」

瞳子の母親も嬉しそうだ。

「瞳子ちゃんも、もうすっかり大人っぽくなって。本当に美人さんね」

あぁしまった、と深山と瞳子は思う。

全員が席に着き食事会が始まる。母親たちの計らいで瞳子と深山は向かい合いの席だった。


「怜君は脳神経外科だったかな」

医者であり大学教授の瞳子の父親が言う。

「はい、今は大学院で研究しながら帝都病院で外勤をしています」

「ほう、大学院に進んだのか。それは素晴らしい。いずれはお父さんの病院を継ぐのかな」

「いやいや、それはまだ先の話ですよ。今はとにかくいろんなところで経験を積ませているところです」

深山の父親も医者で総合病院を経営している。

「柊君も医学部に行くんでしょう?」

瞳子の母親が言う。

「もちろんよ。」

深山の母親が答える。

「じゃぁ、将来はうちに婿養子なんてどうだ」

瞳子の父親が言う。やっぱり、と瞳子と深山は思った。

「まぁ素敵!」

「そうなったら両家安泰ね」

両親たちは勝手に盛り上がっている。

「柊君、君の成績ならば問題なく国立医学部に入れると聞いている。ぜひうちの大学に来るといい」

瞳子の父親はいわゆる旧帝大医学部外科の教授だ。


「深山君にも私にも選ぶ権利はあるわ。深山君には彼女もいる。」

はしゃいだ雰囲気に容赦なく瞳子が水を差す。

「瞳子、何も今から一人に絞りなさいとはいっていない。今はいろんな相手と付き合ったりしたらいい。どんどん遊んだらいい。将来家のために結婚相手として、という話をしているんだ」

「遊びで人と付き合うようなことは不謹慎だわ」

瞳子の声には怒りがこもっている

「黙りなさい、瞳子」

瞳子の父親の一言で一瞬静かになる。

「すまないね、柊君。瞳子はまだ考え方が子供なんだ」


瞳子が花菜を思って言っていることは深山には痛いほどよくわかった。この部屋に瞳子が入ってきて両親たちの思惑に気づいたとき、最初に浮かんだのは深山も花菜の顔だった。


「僕は」

と深山が話し始める。

「西園寺さんの言う通り、今付き合っている人がいます。真剣に付き合っています。だから、こういう話に参加する気はありません」

「柊!何言ってるの!」

柊の母親が慌てる。瞳子は驚いた顔をしている。

「まぁまぁ、まだ二人は若いから。恋愛を楽しみたい年頃なんだ。大人になったらわかるさ。さ、今日はとりあえず両家の交流ということで食事を楽しもう」

柊の父親が言う。

「そうですな。私にもまぁ、そんな時期はありましたよ」

父親同士笑いながら言う。子ども扱いされたようで、深山も瞳子も腹が立ったが、これ以上何を言っても無駄だということは痛いほどわかっていた。


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