まだ見ぬ人へ
/////プロローグ/////
「君は、1人ぼっち。」
と、彼女は言う。
「君を分かってくれる人は、
君を必要とする人は、
誰も、誰もいないの。
とっくに、分かってるんでしょう?」
その声は、何度も何度も僕の心で、冷たく響きわたる。
僕は、と彼女に問う。
僕は、なぜ1人なの。
「皆が、あなたを見ようとしないから。あなたを、理解しようとしないから。」
どうして、誰も、理解してくれないの。
「それは、あなたが、繊細だから。
繊細で、敏感で、
皆が見えてないものや、
見ないふりして、放ってしまうものに、
あなたは、いつも、気がつくから。」
それって、僕が悪いの?
「いいえ。君は、ちっとも悪くない。
悪いのは、
鈍感で、君をおいてけぼりにする、
君の、周りの世界だよ。」
僕は、変わりもの?
「この世界に同化するよりはマシよ。」
「私は…」と、彼女が言う。
「…私も、1人ぼっち。」
君も?
「ええ、そうよ。
あなたと、同じ。」
僕と…同じ…。
「もう、1人は嫌でしょう?
だから、私が一緒にいてあげる。」
そう言って、彼女が笑う。
笑って、僕の顔をのぞきこんでは、また笑うのだ。
僕のすべてを、見透かしたような顔で。
「…信じても、いいんだね?」
僕がそう問いても、彼女は何も言わない。
でも僕には分かる。彼女の返答が。
ニッコリと笑みを浮かべ、ただ黙っている彼女に、僕は一言、こう言った。
「 僕には、君がいるんだ。」