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ACTorDIE!〜声優業界下層階級哀話〜  作者: 野乃々田のの
第1章 雛沢ももえの誕生
7/71

1ー7「さらば。愛しく、碌でもない日々よ。」

 そうこうしている内に「魔法少女キューティ☆フレイル」TVシリーズは全13話の放映を終えた。

 評判は上々で「本年度の最高傑作!」という賞賛がアニメ雑誌やアニラジ番組(アニメ情報を取り扱うラジオ番組)で飛び交い、雛沢ももえの元にもフレイル役の熱演を見たゲーム会社や音響制作会社から続々とオファーが舞い込んだ。

 最終回放映後に催された打ち上げの席では第二期製作決定の報がサプライズで発表され、予め知らされていなかったとし子と浅川奈央は感涙に咽び、肩を抱き合って喜んだ。

「私、ももえさんに一生ついて行きます!」

 喜色満面で喜びと感謝を口にする浅川の表情には一片の嘘も偽りもない、ととし子は確信した。この少女の瞳の輝きが嘘だったなら、自分はこの世の何を信じたらよいのだろうか。

 つい一年ほど前まで家族からも学友からも劇団の団員達からも疎まれていた自分に、今はアニメ業界中から惜しみない喝采と称賛が注がれている。もしかしてこれ迄の、世の中の全ての不幸が自分にのしかかって来ていたかの様な境遇は、今のこの幸せを呼び込む為の「フリ」だったのかもしれない。どさくさ紛れに近寄って来た達川が他の人間から見えない様にパンツの中に手を入れて来たが、今は人生最良の時間なのだ、そのくらいの狼藉は許してやろう。

 打ち上げの司会を務めるお調子者のベテラン声優が「じゃ、次は主演の雛沢さんからコメントをいただきまっす!一言みなさまにコメントをお願いしまーす!」と言い、とし子にマイクを渡した。今やこのキューティ☆フレイル一座の座長となったとし子の脳裏に、これまで歩んで来た21年の人生のダイジェストが走馬灯の様に浮かんでは消えて行く。



小学生の時にいじめて不登校に追い込んだミチコちゃんの事。

中学生の時に階段から突き落として障害が残るケガを負わせたナオミちゃんの事。

高校生の時にいじめて休職どころか自殺未遂にまで追い込んだ田中先生の事。


16才の時にウリでヤラせたら付き纏われてしまい、友達のタケシに車で轢かせて二度と歩けないカラダにしてやった坂東のおっさんの事。

17才の時に初めて買ったマリファナで悪酔いしながら乱行したら、ハッパの質が悪かったのかその後社会復帰が困難なレベルまで知能が低下してしまったアキラとヨシオとミオの事。


18才の時に家族に内緒で手を出した株で家の全財産を溶かして闇金から金を借りた挙句それも返せず、連絡がつかなくなった半年後に小指らしきものが郵送されて来た父親の事。

19才の時に近所の主婦から勧められたのがきっかけで遅めのシャブデビューを果たし、「ねぇん抱いてヤってハメてぇぇぇぇ」と錯乱状態で喚き散らしながら近所の交番に突入して警官を誘惑し、「気持ち悪いんだよババア!」と警棒で後頭部をぶん殴られて脳死状態になり、今もどこぞの病院の一床を汚している母親の事………



さらば。愛しく、碌でもない日々よ。

私は今、泥沼の中で朽ち果てるのみだった運命に打ち勝ったのだ。


 忌まわしき記憶に二度と思い出す事のない様に心の中で厳重な封印を施し、とし子は…………いや、ももえは、万感の思いを込めて叫んだ。



「みんな!本当に、本当にありがとう!!!

 第二期でお会いしましょう!!!」







 しかし、その約束が果たされる事はなかった。



 達川が児童買春と強姦致傷の疑いで逮捕されたのだ。

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