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太陽のカケラ  作者: のえる
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98/105

影武者4

草原が人の血によって赤く染まる


戦士の国の大地をそれに相応しく


いや、それ以上に真紅が染め上げていく。




後継を奪われた


総領を奪われた


長を傷つけられた


長姫が


家族が、友が


誇りが名誉が誰が誰を攻めているのか


誰が誰と敵対しているのか


集団の狂気とも呼べるものが


その場を支配していた。




突然オリーブグリーンの光が


草原を照らした。




戦いと血の匂いに狂っていた戦士達も


思わず目を奪われた。






何かの魔法か神話のように


その光の後には


まだ成人もしていないような


小さな人影が立っていた。




戦場から少し離れた、しかし戦場からも


よく見える小高い丘の上その人影は立っていた。


眼下に広がる光景に少し瞳を眇め


しばらく何か考える素振りをした後、




ハンガイ族を率いているチーフォンを見つけ


少し微笑むと


おもむろに口元に指をやると高く低く指笛を吹いて


呼んだ




「ドクシィ!シィホ!」


嘶きと共に2頭の駿馬が乱戦の中をもろともせずに


その元へと駆けつけた。




自分の一族ハンガイ族を、


そして援軍という名目で駆けつけてきた母の一族チュルク族を


何とか押さえつけつつ迎撃していたチーフォンが、


2頭の様子と人影の様子に帰ってきてくれたのか、


無事だったのか、と思わず顔を綻ばせて


居るうちに




「後継が!ハンガイ族後継フールン様が帰ってこられたぞ」


と言う声がハンガイ族から上がった。




「ハンガイの後継様が、オタルの姫、ルテル様のお子


若長の異父弟様が帰ってきたぞ」


とオタル族からも声が上がった。




「・・・・総領と長姫を奪ったハンガイ族の後継か!」


「イェニセイの妃と後継リューラン様を奪った者か!」


オタル族旧勢力と


イェニセイ族から、そんな声が上がった。




「返せ!・・・・どこにやった卑怯者めが!」


オタル旧勢力とイェニセイ族の興奮は留まらない




「・・・・・我が盟主ハンガイ族はそんなことはしない!


だが・・・・疑いを掛けられるような情けない後継など


イェニセイ族に引き渡せ!」


チュルク族は言いオタル族はそれに反発する




誰も冷静に話をしようとするものが無い中


イェニセイから一本の矢が


『フールン』へと射掛けられた


ドクシィへと騎乗した『フールン』は咄嗟に避けたが、


栓を切ったように次々と矢の雨が降る。




「・・・・・イェニセイ族の方達よ


そして、今は無きベクテル叔父を慕うオタル族の


旧勢力の方達、


そして、我がハンガイの者達、


同盟を結ぶオタル族、チュルク族、


それから後継フールンの許婚の一族バイカル族の方達


皆々、剣を握る手を止めて我が言葉を聞いて欲しい」


狂気の渦となった戦場で『フールン』の声が響く


誰一人として聞いていない状況でしかし必死で言葉を繋ぐ




「私は私の一族の誇りに掛けて我が一族ハンガイは、


オタル族旧勢力総領、チョイルンも長姫ケルレンも奪ってはいない


イェニセイ族後継リューランもその共の者達も


すぐに返すようにする。」




『フールン』の肩と頬に矢が掠れてゆく


叩き損ねた矢で傷ついた頬から血が滲んで、


でも拭わずに次々射られる矢を振るう剣と


剣の周りに出した炎の結界で無効化してゆく




「そして、ハンガイ族長ウリャスタイと後継フールンの


身体は、イェニセイ族のもたらした毒で身を損ねたわけではない事


ハンガイ族後継フールンの身を連れ去ったのが


イェニセイ族でもオタル族旧勢力でも無いと信じる。」




徐々に周りと取り巻く炎が強まってそれと共に


それを包むようにオリーブグリーンの光も強まって




「目を覚ませ・・・目を覚ましてください


誰かの手の平で踊っていると気付いて」


一気に炎と光が炸裂して


草原の空へと何かを映し出した。




それは、巨大な魔法陣だった。




ウワアアアアアアア




激しい力の放出に少しよろめきながら


『フールン』は魔法陣に向かって二本の対の剣を


振り下ろした。




「オタル、イェニセイ、ハンガイを3本の柱に


戦士の血と魂を取り込み


無限の檻を造る魔法陣、今、我は、その崩壊を望む」


『フールン』が叫んだのとほぼ同時に


炎の結界をすり抜けた一本の強矢と


魔法陣より飛んできた黒い刃のような何かの力の塊に


『フールン』は貫かれた。

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