後継の妻6(ゆるゆるとフフヤガーンの術中に落ちてしまった)
あ~あ~頑張ったのに
結局残る事になっちゃったね」
気分を害して倒れ込んでしまったケルレンの枕元でフフがニンマリと笑う。
倒れ込んでしまってからどれだけこうしていたのだろうか
ぼんやりした意識の中でケルレンは、
何故かそれを悪魔の微笑みたいだなと思っていた。
お陰で川船で一度海に出てから海岸沿いの港を経由して
ゆっくりと船旅を楽しみながら留学先に向かうという計画がケルレンだけ
流れてしまった。
戦の最中にそんなのんきなとは思っていたけれど
置いてかれるのは置いてかれるので何だか少し寂しい気がしなくもなかった。
「・・・・・お父さんの<イェニセイ族長>方はともかく
子どものリーダー<リューラン>の方は
心優しい子だからね、ケルレンにも好意を持ってるし
青い顔してフラフラしてたら『後から来て良いよ』って言うよね」
ニコニコと無邪気にフフは、続ける。
「おかげで会わせて上げられるよ良かった」
君と部屋に二人になれてよかった
寝かされてからずっとこんな調子で枕元に貼り付いている
フフにケルレンはいっそのことしばらく意識を失っていたいと思ってしまう。
「ちょっと寝てても良いよ楽しい夢を見ていたら良いよ
例えば『フールンに抱きしめられてる夢』とかさ」
ケルレンの意識は不思議なほど簡単に闇に吸い込まれていった。
フールン・・・フールン・・
大好きなフールン本当は傍に居たいよ
誰にも邪魔されずに
誰かを隣に立たせないで
どこかで共に分け合った太陽の欠片石のピアスが
キーンと鳴ったような気がした。
疲れたよ
気を張るのは本当に疲れた
フールンの傍に居れない寂しさに耐えるのにも疲れた
手を伸ばすとフールンが笑って手を差し伸べてくれた。
ケルレンは首を傾げてアレ?と思ったけれど
すぐに違和感を忘れてフールンに飛びついた。
ケルレンの身体はすごく軽くなっていて
どこも痛くも無くて、抱きとめてくれたフールンの腕は
いつものように安心できて涙が出るほど嬉しかった。
ゆっくりとフールンがケルレンの髪の毛を梳いてくれるのが
気持ちよくて、冷たいその指がゆっくりと首筋に傷をつけるのにも
まるで痛みを感じることなくうっとりとしていた。
『ねえ・・・ケルレン、私の事が好きかい?』
と言う質問にも
「大好きだよフールン」
と答えていた。
ガタンッという音によって少しだけはっきりした意識でケルレンは
自分の腕の中を見てみた。
思いっきり抱きついている相手はフフで
青ざめた顔で部屋の入り口からこっちを向いているのはフールンだった。
「・・・・・フールン!?」




