後継の妻2
「何故です!?
貴方が犠牲になることはないのです」
セレンゲにリューランとの事を話しに言った後
今度は、リューランの許へと話をしにゲルへと向かっていた
ケルレンは辛そうな顔のウルトに呼び止められた。
「・・・・そんな顔しないで・・・
犠牲と言うほどリューラン様が嫌いで無いよ私は・・」
「・・・・チョルン様もレンヤン様も悲しまれます。」
ケルレンの前で膝を付きケルレンの服の裾を持つ
ウルトに微笑みを浮かべる。
「・・・・・チョイルン様に引き続き・・・」
漏れた言葉をウルトが飲み込む
(その時もウルトはとても辛かったんだろうね)
「・・・・・・皆にも言って・・・逆らっちゃ駄目だよ
これからもよりいっそう力を合わせなければならないんだから
親同士の決めたお見合いで決まったようなものだと思ったら
まだましだよ・・・・本人の武力は・・・弱いけど、大部族の後継だし、
気弱だけど悪い人じゃない・・・優しい素直な可愛い人だ」
そう言葉を残して、
立ちすくむウルトを残してケルレンは、その場を後にした。
リューランはびっくりしていた。
突然、父である長に呼び出されておっかなびっくり
ビクビクしながらゲルに訪れてみると
『お前には、しばらく他国で修行させることにした。
が、その前に、オタル族の総領の妹をお前の側妃にしろ』
入るや否やそんなことを言われて
父から、戦から離れられるのは嬉しいけど修行って何?
怖いな・・・・
その前にオタル族の総領の妹を側妃にって
私のティルへの気持ちはどうなるの?
第一、オタル族の総領の妹って誰?
オタル族の総領って、えっと、確か、チョイルン様だから
チョイルン様の妹って事で、妹っていらっしゃったかな?
チョイルン様は宴のときにオタルの直系でハンガイの長の弟の血を・・・
確かそれと同じ血を引いている人が・・・って・・ケルレン様??
っと驚いた。
でも、父相手に嫌だなんていえなくて
(いや!ケルレン様が嫌とかではなくて!勝手に決められる事や
ティルへの想いは?って事で・・・)
・・・っと黙ってたら睨まれて思わず
「・・・・・・はい・・・。」
と言ってしまった。
どうしたら良いんだ
一体私はどうしたら
と悩んでたら
「リューラン様」
と声がした。
「・・・ひゃい」
「・・・?・・・・入りますよ」
入ってきた人はやはりケルレンだった。
無言で近づいて来たケルレンは
怒っているのだろうかとビクビクしているリューランの顎下まで
近づいてくると少し背伸びして
「やはり泣いてたのですね
・・・・リューラン様はティルが好きですからね」
え?と思うまもなく手の甲で濡れていた涙を拭ってくれた。
「・・・・・済みません、了承したということは
私も貴方を追い込んだことになってしまうのでしょうね」
伏せたケルレンの瞳の周りを縁取る黒よりは明るく
茶色と言うには黒い睫毛と真上から見ているために見える
旋毛をリューランはぼーっと見た。
「・・・・怒って・・・無いんですか?・・・勝手なことって?
ケルレン様はハンガイ族の後継が好きなんじゃないんですか?」
恐る恐る問いかけるリューランに驚いた顔で
勢い良くケルレンは顔を上げる。
「!!?・・・何で好きって確定なんですか?・・・・宴の時知れたのは、
共に育ったというのだけだったと思ったのですが
・・・・まあ・・・・・大切で大好きですけど・・・」
しぶしぶ語尾が小さくなりながら認めると
それなのに何で?という表情でリューランはケルレンを
見つめる。
言っては何だがリューランだってティルを好きだけれど
ケルレンを側妃にしても数人の妻を迎えることが許されている身なので、
ティルの事も妻にすることは出来る。
けれどケルレンは一人の妻になってしまったら
誰かに奪われるか相手が死ぬかしないかぎり一生そのままになってしまう。
「・・・セレンゲを斬り殺してしまいたいって
思うくらい・・・・・セレンゲもハンガイ族のしがらみも全てなくなって
二人だけになったら良いのにって思うくらい。
誰かを妻に迎えるなんて許さないと思うくらい大好きですよ」
ケルレンから漂ってくる殺気みたいなものにビクつきながら
もしかして私も斬られるのではと
リューランは、徐々に後ずさりする。
「でも、しょうがない、私は、チョイルンやレンヤンやチーフォンや
ウルトや・・・一族のものが大切だなって、セレンゲも殺したい程憎い
いなくなったら良いのにと思う反面、憎み切れないかわいい女の子だな
この子に罪は無いな・・って思ったりするのだから」
どこか自分にイライラして吐き出すようにして言葉を重ねる
ケルレンにビクビクしながらリューランはその言葉を聞いていた。
「・・・・実は、族長と約束したんですよ、私が、リューラン様の側妃になって
息子を産むと約束するのならばセレンゲは返しても良いって・・。」




