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太陽のカケラ  作者: のえる
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後継の妻1

「どういうことだ?」

ゆっくりとケルレンはウルトの方を振り向いた。


眠っているレンヤンをひとまずティルに預けてウルトの

話を聞いていた。


「先ほど言ったとおりです。

ケルレン様、レンヤン様を連れてイェニセイ族後継

リューラン様と共に他国へと赴いていただきたいのです。」


俯いたままのウルトの言葉にケルレンは怪訝な顔をする。

睡眠薬で強制的にウルトに眠りを与えられた為に

少し頭がボオッとしているが

何だかおかしいとケルレンは思う。


「・・・総領のチョイルンがこんな時に

主であるレンヤンや私が此処を離れては結束が乱れることに

なるのではないのか?・・・・イェニセイ族も

後継が一族を離れて良いのか?」


「・・・・レンヤン様の体調が優れないので、しばらく

戦場から離れ養生した方が良いかと・・。」


そう言うウルトの表情を読もうとするが俯いたまままったく顔を

見せないままで、声音も読み取らせてくれない。

ケルレンは、ウルトから目を離さないまま


「・・・・では、リューラン様はどうして?」

と聞いてみたけれどウルトは、


イェニセイ族長の考えることこちらでは察しかねる所では

あるけれど、少し気弱なところがある後継様ゆえ

一族から離れて修行をさせられるのかもしれません


と、感情の波を見せない声で答える。


「・・・今、・・・こんなときに?

・・・本当の事を言ってくれ

・・総領チョイルンに何か有ったのではないのか?

戦の状況に何か変化が有ったりしたのではないのか?」

尋ねるケルレンにウルトは黙って首を振った。


「隠さないでくれ・・・お願いだから

頼む・・・・私達を想って隠されるというのが一番辛い

本当の事を話されて辛い想いをするよりも・・・・」


ケルレンの声にウルトは思わず顔を上げ

揺れるセピアの瞳を真正面から見てしまった。


「・・・・ほ・・・・本当に・・何も」


この方々を守りたいのだ傷つけたくないのだ

そう想いウルトは、言葉を搾り出す。


「・・・幼い頃、フールンと共に可愛がってくれていた

乳母や護衛のジイが私達の知らない間に

・・・死んでいた・・私達を守って、乳母やもジイも周りも

私達を想って隠して・・・狙われてたこと、

守って死んだのだと随分たって知ったとき・・・・

哀しかったそれに、とても悔しかった。

・・・ウルト、貴方は知っているでしょう?」


ウルトの揺らめぐ瞳を、強い意志を宿したセピアの瞳で

じっと見ながらケルレンは、


「・・・・・私にこれ以上真実を隠すことは許さない

チョイルンとレンヤンの家族である貴方が、

同じく二人の家族である私に!」


もしそうするのなら貴方を斬るとでも言いたげに真っ直ぐに

ウルトの心をその瞳で射すくめる。


「・・・・・私は、ただのチョイルン様の乳兄弟で部下で・・・

主達に従う者です。」

「・・・・けれど、ケルレン様、貴方はチョイルン様とレンヤン様と

お二人をケルレン様の家族と言って下さるのですね

・・・・・チョイルン様がどんなに喜ばれるでしょう」

あまり表情を見せないウルトのいかにも嬉しげな顔に

こんな表情をする者が二人の家族じゃないなんて言うものか

と思った。




「・・・・・お話しましょう・・・・未確認で

私自身も信じかねるお話なのですが・・・・」

ウルトの言葉にケルレンは緊張に唾を飲み込んだ。









朝、床から起きたセレンゲはふと髪を梳いていた

手を止めて溜息をついた。


チョイルンが居なくなったと聞いたけれど

これから自分の身はどうなっていくのかと

不安で胸が痛かった。

ずっと幼い時から想い続けていたハンガイ族のフールンとの

婚儀だと心を弾ませて赴いたはずが

戦が始まり、攫われて捕虜にされたかと思うと

急にイェニセイ族の後継の側妃にすると言われて

そんな中でもそれとなくケルレンが気に掛けては

くれていたのに、チョイルンの事があってか

最近、ケルレンとも会わなくなって

セレンゲには、先行きがまったく検討がつかなかった。


「・・・・お父様・・・お母様・・会いたい。」

グスンと涙で瞳が潤んでくる。


「・・・・・フールンお兄様ぁ」

フールン以外の人の妻になんてなりたくないと思った。

例え族長の娘に生まれた運命なのだと言われても

絶対、許婚以外は嫌だと思った。

その想いがそんなにいけない事であるはずが無いと

セレンゲは自分で自分を慰めた。


「・・・・セレンゲ様・・・・」

ふと、部屋の外から声がした。


「ケルレン様?・・・・どうぞ、お入りください」

許婚のフールンの想い人だとしても

セレンゲはケルレンを嫌いになれなかった。

それどころかそんな時では無いと思うのに、久しぶりに

聞いたケルレンの声に少し嬉しくて入室を進めた。

けれどもケルレンは部屋を区切っている厚い布を捲って

やってくることもなくそのままの位置でこう言った。


「・・・いえ、そのまま聞いてください。

まずは、長く放っておいて済みません・・・・・・

・・・・私・・・・イェニセイ族後継のリューラン様の

側妃になる事になりました・・・・・。


驚きで入り口の方にやっていた手をセレンゲは下ろした。


(なんておっしゃったの?)


先ほどイェニセイ族の長にそう返事して来ました。


そう、ケルレンの声は続く、

セレンゲとケルレンとイェニセイ族後継のリューランの

側妃の候補にされているのは知っていたが

返事ってイェニセイ族長にそれとは何か別に

側妃になることについて何か言われていたのだろうか?


と突然のことで何だか鈍くなっている頭の中で考えた。


「・・・・・でも、セレンゲ様はリューラン様の側妃ではなく

きっと、何とかフールンの

・・・ハンガイ族後継の許に戻れるようにしますから・・。」


ケルレンの声が訳の分からぬままセレンゲの耳に届いた。


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