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太陽のカケラ  作者: のえる
41/105

戻れない場所3

ハアハア・・・

剣を振り切った体勢のまま、まだ整いきらない

息を収めようとする。



「女子供に・・・手荒なことはするな・・・・」

息は収まらないし、相手は冷静に見て互角か

それ以上の力を持つ者達

これ以上怒って向かって来たら

ケルレンの力では到底敵わない。



「・・・・この・・・!!」

「・・・・・・・・(来るか!?)」

姿勢を戻しケルレンが剣を飛ばした男が

真っ赤になって怒りを堪えているのを見上げ

どこから来ても対応出来るよう再び体勢を整える。


「新参者の女男がぁ!!」

飛び掛ってきた、

剣こそ持っていないが棍棒のようなその腕を

素早く避けて手短に言葉を紡ぐ


「我が剣よ、汝の主の名において命ずる

・・・その力、我が前に示せ!」


(ハンガイ後継フールンを守る為に

揃いで与えられた最高級の魔法剣、

素手に卑怯な気もするけれど・・)


ケルレンの剣「ペラディノ(守護者)」の刃に

薄く炎の気が取り巻いた。


「私に逆らい、戦士の誇りを穢すと言うのならば、

裁きの炎によって焼かれるだろう!」




「・・・・・・・フールン・・・・・・・!?」





その瞬間、一歩も引かぬ思いで男達を見回す

ケルレンの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。












「・・・・・・・・!?」

突然後ろを振り向いたフールンを

チーフォンが訝しげに見つめる。


「・・・・ん?・・・・・どうした?フールン?」

呼びかけられて一瞬チーフォンに視線を戻すものの

再び後ろの、女や子供や食料等を運ばせた方向を食い入るように

見つめている。


「・・・・・・何故か・・・」

「ん?」

「・・・・・嫌な予感がするのです。」

しばらく考えるように頭を掻いていたが

チーフォンは、強張った顔になっているフールンに馬を寄せ

頬を突っついたかと思うとにんまりと笑う。


「俺達が押している・・このままで行くと多分

もうすぐでこの戦は終わるぜ!

俺達の勝ちでな!・・・・・ま、・・まだ増員があるかもだし

油断は出来ないけどな・・!・・・俺は無いんじゃ?って思うけど。」

「・・・・・・けれど兄上・・・」

「簡単にばれる様な所には行かせてない・・・

セレンゲと一緒にあいつ等も居るしな!・・・・と!」

言うだけ言って馬を進めるチーフォンに慌てて声を掛ける。


「長兄!!?」

「ボーとしてるのにも飽きた!さっさと終わらせてくるぜ!」

ニカッと笑って戦乱の中に突っ込んでゆくチーフォンの後ろ姿に

苦笑いを浮かべつつ・・・何とか心に納得させようとした。


「そうですね・・・戦士である次兄も、それから三兄も・・

セレンゲと共に居るのですから・・・」


フールンはそしてもうすぐ終わろうとしている

その戦に捧げられた命のために祈った。

「敵も・・味方も・・・・

その命が・・・間違いなく女神の身元へ届くよう・・・」




「燃えている!・・・・森が燃えているぞ!!」

戦場に響いた誰かの叫び声に敵も味方も

騒然とした。

(・・・・・セレンゲ!!)

祈りの為に胸に当てていた左手で手綱を持ち直し

燃えている方向に一瞬すぐに向かおうとしたフールンは

その手を強く握り締めることで堪え命を下した。


「付いてこれるものは一緒に

後はこの場に残り、指揮は父上・・・ハンガイ族長ウリャスタイ

・・・・私は東の森へと向かう!」


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