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太陽のカケラ  作者: のえる
40/105

戻れない場所2

ハアハアハア・・・・


剣からは赤い血が滴っていた。


「セレンゲを・・・・バイカルの娘を・・・」

勢いを時間を無駄にするわけにはいかないと

新たに命じた。







「リューラン様・・・・もう持ちません!撤退を・・・・」

「連合の右を守っているバイカルを崩しましょうリューラン様

そこに退路を作り、一時撤退いたしましょう・・・!」

チョイルン達の他に大将リューランを守っていた

イェニセイの戦士が撤退を進めたのに対し、

オタル総領チョイルンは、右翼バイカルより退路を作ろうと

提案する。


リューランは、自らについてきてくれたイェニセイ族の白い髭を

持つ歴戦の戦士らしいたくましい身体の男と

イェニセイ族の長である父親の、側妃にあたるチョイルンの

優しくも強い意志を持った顔を見つめた。



「・・・・・・別働隊は・・・・・間に合わなかったのですか・・・?」


「意外に結束が固かったと言うところでしょうな・・・・

ハンガイは後継者争いで長子と末子とでもめていると聞いたが・・

予想外の展開・・・・!」

リューランの弱気な言葉も聞えないほどに

それぞれが勝手に言葉を発しだす。


「ハンガイはもともと数が少ないとはいえ

戦士の質の高さゆえでイェニセイとオタルと並べられるほどの名門・・」


戦士の1人が言い出したその言葉に思わず他の者も

聞こえよがしな声で呟く。


「リューラン様の指揮では無理だったのだ!」


1人が呟きだすと耐えていたものが噴出したように

ところどころで声が発せられる。


「作戦自体が」

「そうだ!まるで甘い!!」

「女が戦士であること自体が・・」


「黙れ!!」

白い髭の老戦士の声に自らの大将達に対しての

不満にざわめいていたその場が静まる。


「今だまだ、戦の最中だぞ!敵がここまでに達してないとはいえ

前陣では戦士達が命を掛けているのだ!」


瞳を向けると本陣を守るために厚くされた

前陣は戦士達が血飛沫をあげジリジリ後退していっている。


「撤退いたしましょう・・・・リューラン様、チョイルン様」

二人を見つめ老戦士が言った。


「・・・・・良いですね?リューラン様?

・・・・・・全軍、バイカル族に突撃!そこから撤退する!」

味方である戦士達の声が聞こえてなかったはずは無いのに

小さく笑ってリューランが頷いたのを確認して

チョイルンは全軍に命を下した。






ヒヒ~ン

メーェ

小さな森の中で

馬の鳴き声、羊や山羊、牛の声

家畜達の鳴き声に宥めるイェニセイ族の男達の声と

すすり泣く女子供の声が木霊する。


ハンガイ族の戦士として与えられた自らの大事な剣

それには今、ベットリとハンガイ族戦士の血が付いている

突然、焦燥感に駈られて服で何度も拭いた。

なんとか落ち着かなければならないと、一つゆっくりと息を吐き

瞳の前に掲げた。


「・・・・・・・命が・・・間違いなく女神の身元へと向かいますように」

瞳を閉じて自分達の手に掛かった者、

その為に散っていった味方達の冥福を願った。




「この馬は俺の物だ!羊も!」

「じゃあこっちのは俺が!」

目の色を変えて家畜を奪い合うイェニセイ族の男達の瞳が

女達に向いたのを見てケルレンは、叫ぶ


「女子供には手を出すな!

敵対している部族の者達だとしてもだ!」

不満そうな声があちらこちらで上がるのを

ほとんど押さえつけるようにして黙らせる。


「私達は、草原の誇り高き勇者・・・・戦士・・・

ならば、剣を交え合った者、他の部族の女子供

互いの誇りをも尊重できる筈だ!」


しかし、先祖代々互いの部族で争いあい

家畜も女も奪い合って来たモルドルの男達が

下手すると屈強な男達に紛れこんでしまいそうな

成人前の(実際は女の)ほっそりと一見弱弱しそうな

ケルレンの言うことなど聞くはずが無い。


「何を!!新参者の女男が!」

イェニセイ族の長の妾であるチョイルンの命で

しぶしぶケルレンにしたがって来たのだろう男の一人が戦いで

高ぶっていた気持ちそのまま

ついに我慢がきかなくなったのか

血錆がついたままの剣で襲い掛って来た。

一合二合と男の血で重くなった剣をかわし

ケルレンは自らの剣を横なぎにはらった。





キイーンンン!!






皆の瞳に映ったのは跳ね返されて飛ぶ男の剣だった・・・・・・


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